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第一章 刑事バディ登場

第1話

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「先輩、……先輩!」
覆面パトカーを運転している夏浬悠真なつかいりゆうまが横を見て言った。
悠真は今年本庁に配属されたばかりの、二十四歳の新米刑事。

「先輩!」
「……なんだよ」
助手席でシートを倒し、居眠りをしていた安由雷時明あゆらいときはるが眠そうな目を開けた。
安由雷はほんの少し先輩の二十八歳で、キャリア組の一応は警部補である。

「ちょっと聞いて下さいよ」
「な・に・を」  
安由雷はゆっくりとシートを戻し、起き上がりながら面倒くさそうに横を見た。

「その前に先輩、それ取って下さいよ」
悠真が、安由雷のかぶっている警察用の白いヘルメットを指差した。
安由雷は怪訝な顔で悠真を見ながら、ヘルメットのあご紐をゆっくりと外した。

「何でいつも、ヘルメットを着けて寝てるんですか?」
悠真の問いには答えずに、安由雷はヘルメットを取ると後部シートへ投げ捨てた。
安由雷は、彫りの深い顔立ちに、スリムだが筋肉質の引き締まった体をしていた。髪の毛は、軽くウエーブがかかっており、バックに指で流している。
凛々しい切れ長の目をしているのだが、美人を見るとそれがだらしないほど、ハの字に垂れた。そして、女のような長いまつ毛をしている。

「お前の運転を信用してないだけだよ」と、安由雷が胸ポケットのタバコを取り出しながら言った。
悠真は、チラッと横目で安由雷を見て、唇を尖らせた。
悠真は、百九十センチメートルと長身で少し痩せていた。童顔で目がクリっと大きくて、前髪をのばして真ん中から左右に分けている。

「……で?」
安由雷はタバコに火を点けると、大きく煙を吹き出した。

「あっ、そうでした。そうでした」
悠真が赤信号で止まって、窓を少し開けながら、
「今回の事件ですけど、昨日もらった資料を見ましたか」

「………」
「見ました?」
悠真が横を見た。安由雷はタバコをくわえたまま、小さく首を横に振る。

「見てないんですか~。先輩、お願いしますよ。今回は本庁からの助っ人という事で、僕なんか、昨夜は一時位まで権造知人の知恵を借りて……」

「で、なんだよ!」と、安由雷が話の途中で割り込む。
「あっ、そうそう、その件なんですけど、僕は……」と言いかけて、悠真の言葉が止まった。

「ん?」
「だって先輩、事件の事を全然知らないんでしょう」
悠真は事件についての推理を話したかったのだが、事件内容を知らない安由雷に、話をしても無駄だと思った。
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