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第14話 空を飛んだ怪物と女騎士
14ー②
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翔太は立ち上がると、石箱の蓋が吊ってある、宿舎側のクレーン車へ向かって走り出した。
碧は、そのまま林の中へ突っ込んだ。怪物は片足を取られ、両腕を振り回して暴れている。
碧は、木々を躱しながら、信じられない程のスピードで林の中を走り回っている。ダートもダンプカーの運転も始めだと云うのに、碧のハンドリングは見事であった。
碧が、大きなハンドルを力一杯に右へ切った。ダンプカーはスピードを落とさずにUターンをした。助手席の足元にある、燃料タンクがガタガタと揺れている。
遠心力で、怪物が大きく膨らんだ。そして、大木に背中をしたたかに打ちつけられた。怪物の口から緑色の血の泡が飛んだ。怪物の、こんな無様な姿は始めてであった。
碧は、林の中でUターンすると、再び石箱が置かれている中庭に戻って来た。
怪物は、後ろで葉や草や土に塗れている。
碧は、石箱に斜めに立てかけてある鉄板にダンプカーの正面を向けた。ダンプカーは真っ直ぐに、怪物を引きずったまま、立て掛けてある鉄板に向かって、スピードを上げた。
碧は左手を伸ばして、燃料タンクのキャップを開けた。そして鉄板の手前でハンドルとアクセルをスコップの柄を使って固定した。
鉄板の直前で、碧がドアを開けて飛び降りた。それは、強力な焙烙玉を山ほど詰んだ悍馬から、疾風の如く飛び降りる、女騎士そのものであった。
ダンプカーは運転手不在で、鉄板を勢いよく上って行く。
碧のすぐ脇を引きずられた怪物が通り過ぎる。碧目掛けて、右腕を振り回す。碧は、間一髪で爪を躱した。
「しつこいのよ」と、立ち上がった碧の背中で、ダンプカーがライトを空に向けて宙を舞った。怪物を引きずりながら、大きな石のプールにダンプカーがダイビングをした。続いて、後ろ向きで怪物も宙を舞って、腕を振り回しながら、ダンプカーの後部へ突っ込んで行く。
「生きてたら、始めて空を飛んだ感想を訊きに、インタビューに伺うわ」
と、碧は、左足を引きずりながら石箱から遠ざかって、林の中へ逃げ込んだ。
〈ガシャーン〉
もの凄い音がして、石箱の上に凄まじい火柱が上がった。
<ズカーン!>
と、二発目の爆発音がして、更に巨大な猛火に包まれた。一瞬にして辺りが明るくなった。
〈カチャ!〉
翔太が、石箱の上に垂直に立っている石蓋の後ろで、クレーンのウインチにロックしてあるワイヤーを外した。
空中で、林檎がスローモーションで落ちるように、ロックされていたワイヤーが、外れてゆっくりと落ちて来る。
石蓋の両端を、二台のクレーンのワイヤーでつり上げて固定していた。そのうちの一台が外されたいま、全重量が残された片側のクレーンに伸し掛かった。
少し間を置いて、軋むような音と共に、もう一台のクレーンの下を固定してある太いボルトが、勢いよく吹き飛んだ。
辺りの風を豪快にまき散らし、大きな石蓋はワイヤーを引っ張り、片側のクレーンごと、業火の上がる石箱の中へ斜めに倒れて行った。
〈ズシャーン〉ものすごい音を上げて、地面が揺れた。
碧は、林の大木の陰に身を隠していた。
翔太は、工事用具入れの後ろに飛び込んだ。
風が吹いて、土埃が舞い上がり、砕けた小石が辺りに飛び散った。石礫が当たって、宿舎の窓ガラスが砕けて飛び散った。
碧は、そのまま林の中へ突っ込んだ。怪物は片足を取られ、両腕を振り回して暴れている。
碧は、木々を躱しながら、信じられない程のスピードで林の中を走り回っている。ダートもダンプカーの運転も始めだと云うのに、碧のハンドリングは見事であった。
碧が、大きなハンドルを力一杯に右へ切った。ダンプカーはスピードを落とさずにUターンをした。助手席の足元にある、燃料タンクがガタガタと揺れている。
遠心力で、怪物が大きく膨らんだ。そして、大木に背中をしたたかに打ちつけられた。怪物の口から緑色の血の泡が飛んだ。怪物の、こんな無様な姿は始めてであった。
碧は、林の中でUターンすると、再び石箱が置かれている中庭に戻って来た。
怪物は、後ろで葉や草や土に塗れている。
碧は、石箱に斜めに立てかけてある鉄板にダンプカーの正面を向けた。ダンプカーは真っ直ぐに、怪物を引きずったまま、立て掛けてある鉄板に向かって、スピードを上げた。
碧は左手を伸ばして、燃料タンクのキャップを開けた。そして鉄板の手前でハンドルとアクセルをスコップの柄を使って固定した。
鉄板の直前で、碧がドアを開けて飛び降りた。それは、強力な焙烙玉を山ほど詰んだ悍馬から、疾風の如く飛び降りる、女騎士そのものであった。
ダンプカーは運転手不在で、鉄板を勢いよく上って行く。
碧のすぐ脇を引きずられた怪物が通り過ぎる。碧目掛けて、右腕を振り回す。碧は、間一髪で爪を躱した。
「しつこいのよ」と、立ち上がった碧の背中で、ダンプカーがライトを空に向けて宙を舞った。怪物を引きずりながら、大きな石のプールにダンプカーがダイビングをした。続いて、後ろ向きで怪物も宙を舞って、腕を振り回しながら、ダンプカーの後部へ突っ込んで行く。
「生きてたら、始めて空を飛んだ感想を訊きに、インタビューに伺うわ」
と、碧は、左足を引きずりながら石箱から遠ざかって、林の中へ逃げ込んだ。
〈ガシャーン〉
もの凄い音がして、石箱の上に凄まじい火柱が上がった。
<ズカーン!>
と、二発目の爆発音がして、更に巨大な猛火に包まれた。一瞬にして辺りが明るくなった。
〈カチャ!〉
翔太が、石箱の上に垂直に立っている石蓋の後ろで、クレーンのウインチにロックしてあるワイヤーを外した。
空中で、林檎がスローモーションで落ちるように、ロックされていたワイヤーが、外れてゆっくりと落ちて来る。
石蓋の両端を、二台のクレーンのワイヤーでつり上げて固定していた。そのうちの一台が外されたいま、全重量が残された片側のクレーンに伸し掛かった。
少し間を置いて、軋むような音と共に、もう一台のクレーンの下を固定してある太いボルトが、勢いよく吹き飛んだ。
辺りの風を豪快にまき散らし、大きな石蓋はワイヤーを引っ張り、片側のクレーンごと、業火の上がる石箱の中へ斜めに倒れて行った。
〈ズシャーン〉ものすごい音を上げて、地面が揺れた。
碧は、林の大木の陰に身を隠していた。
翔太は、工事用具入れの後ろに飛び込んだ。
風が吹いて、土埃が舞い上がり、砕けた小石が辺りに飛び散った。石礫が当たって、宿舎の窓ガラスが砕けて飛び散った。
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