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「なんなのサイテーな男ね、サヨナラ」

 武井隆の恋人の最後の捨て台詞だ。この犯行の結果が招いたものは勤め先からの実質的な解雇通知、昔付き合った女にチョッカイを出した男、恋人に嘘をついていた報いを受けた。

「ざまあ…」。好江の中の真っ黒な何かが小さく呟いた。

◾️◾️ 癒し

「好江、大変だったんだな。生活安全課から大体の話は聞いたよ。水臭いじゃないか、なんでも相談してくれよ」

 警察内部の交通課と生活安全課は、緊密な関係があるので情報の交流が多い。顔見知りが多くなれば、賢一に関係する者の情報が守秘義務を越えて漏れてくるのは必然であった。

「賢一さん、ごめんなさい。あなたに迷惑をかけたくなくて黙っていたの、昔の事も詮索されたくないって気持ちもあったんだけど、許してください。弁護士の佐々木さんが力になってくれたし、何とかなると思って…」

「お互いにもう過去のことを話すのは止めような、2人のこれからを考えて生きていこう」

 昔のことと言っても十数年も前のことではない、城東賢一がいう、昔という表現が適当かは疑問ではある。或いは昔と言い切ることで過去にしてしまいたい心理が働いているのかもしれない。言うまでもなくこの夜、ふたりは激しく求め合い交わった。

「な、好江。ここに一緒に住まないか?」

「そうしたいのは山々だけれど、やっぱりまだダメよ」

「もう昔は忘れようって言っただろ」

「アタシと賢一さんはそれでも良いかもしれないけれど、世間はそうは思ってくれないわよ」

 好江は建前の考えを言った。彼女の真意は他に存在していることを賢一に知られたくない。この夜も朝まで過ごすことなく、自宅へと帰るのであった。

◾️◾️ 二番目の復讐


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