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◾️◾️□フタツヌク公国・城の地下室
「見つかったのか?まだだと!何をしておるのだ。また同じ目に会いたいのか?」。苛立ちを隠せずにフタツヌク外交大臣・ニドーが苦々しく怒鳴った。その相手の姿はよく見えず誰かはわからない。
□□□ ジエロ島・プロポーズ
「この私と結婚をしてもらえませんか」。スリーンはセオリー通りに跪きフォーシスにプロポーズをした。彼女はそれに向き合って表情を固くして答える。
「私はあなたの父上と無理やりではあるけれど、婚約をさせられていますが、それでもよろしいのですか?」。ためらいがちにフォーシスは言う。
「父とはもう縁を切ります、婚約も破棄したも同然でしょう。私はサンジェルマン王子ではなく、ひとりの男としてあなたに結婚の申し込みを致します」
「嬉しいわ、もちろんお受けします」。フォーシスの左手を取り、その指にスリーンは軽くキスをした。ことの成り行きを見守っていた周りの人が、割れんばかりの拍手で、2人の婚約の成就を祝っている。
□□□ 逢わせたい人・再会
「姫、こちらへ」
ファイゴが導いた先に人影が待っていた。
「私を憶えていますか?愛しい姫よ」
優しい語り口でフォーシスに向き合う、その人は紛れもない実母・二ノーラであった。
「おかあさま、お母様なの?あぁ、生きていらしたなんて、、、」
「10年ぶり…ね、どんなに会いたかったことでしょう、何度もここを飛び出してひと目でもあなたに会いに行こうとしたことか、、」。ハラハラと涙を流しながら娘を抱きしめる母。
「どうして、、どうして」。抱きしめられてさまざまな思いが込み上げて来て、声を詰まらせる娘。母娘の10年ぶりの対面に時が戻る。
「許して、フォーシス…」
「母上…生きていてくれて、ありがとう」
感動の対面の後、ファイゴが経緯の説明をする。
〈ニノーラ王妃は奸計に嵌められ、根も歯もない侍従長との不貞を捏造された挙げ句に国を追われました。この悪巧みの首謀者はフタツヌク公国。隣国のヨンダル王から王妃を奪い、精神的に疲弊させてから懐柔し、戦わずしてシヨーヌ領を乗っ取る計画なのです。
その噂の相手とされたのは侍従長だった私だ。もちろん、王妃様をお慕いしてました。だが、それは恋愛感情ではなく、直向きな忠誠心であったのだが悪用されてしまった。カミングアウトするならば、私が、、私は、、私にとって…女性は恋愛対象ではないのです。
王妃様をお守りするために、地下に潜伏して起死回生を計画して来ました。いま、奴らの野望があからさまになり、こうして、シヨーヌ王家一族の排除がなされて、これ以上は奴等の好きにさせてはなりません、時が来た今こそ立ち上がる時です。反撃の準備は整いました。
元侍従長ファイゴの今までの経緯の語りは終わった。
「例え、肉親を失うこととなっても後悔をしないか?
後悔の念を持つのならば、ここで離脱するが良い、止めはしない」。ファイゴ指揮官の呼び掛けに、誰として異を唱えるものはない。
□□□ 作戦会議
「見せかけの敵はサンジェルマンとシヨーヌであるが、真の敵はフタツヌク。先ずは、悪の根源フタツヌクを叩く」
作戦部隊長となったファイゴがいうと、部隊長ラチョスが質問をする。
「恐ろしい魔力を使うという噂のフタツヌク公国に対して勝てるのか?」
「その通りだ、あの国の外交大臣のニドーが繰り出す様々な魔法は脅威だ」
「では、どうやって?」。フォーシスが翳りがちに聞く。
「姫、準備は万端と申しました、フォダ砂漠の遺跡に住む魔族の末裔は私達の協力者です、ニドーの黒い魔力に対抗できる様々な魔力を使えます」
「そうなのか…噂に聞く砂漠の民の存在は本当なんだ」
スリーンは驚くやら感心するやら。
「但し砂漠の民は、フィジカルが弱い」と、ここまで闊達に話していたファイゴが、険しい表情で辺りの気配を窺った。
「だれだッ⁈」
彼が太ももに括られたシース(鞘)から、短剣を目にも留まらぬ速さのノーモーションで声と共に鋭く投げた。ゴリッ!剣は手応えの音を発する。そこに居たモノは剣を避けきれずに左腕の尺骨を犠牲にして受け止めた。だが、ソイツは痛みの呻きを上げることなく、ヒラリと身を翻して天窓から逃げる。
「アレは、ムーサイ7人衆の…」
スリーンは見覚えのある影を特定した。
「逃がさんッ」。スリーンはラチョスとサバスらを率いて飛び出し、その跡を追った。
「どうやら、ここを嗅ぎ付けたか…」新手が潜んでないか警戒しながらファイゴが呟いた。
「では、作戦行動に移りましょう」二ノーラ王妃が作戦決行を決断した。
◾️◾️◾️フタツヌク公国・城の地下室
ムーサイ7人衆を束ねるイリアスが、戻ったスウビの報告を聞いている。
「フタツヌク侵攻か…ふッ、、、それでオマエはファイゴに気が付かれたのか?」
「ファイゴはただの鍛冶職人ではありません、かなりの使い手と、、」ムーサイ7人衆のひとり・スウビが言い訳がましくする説明の言葉をイリアスは黙らせた。次の瞬間に床にスウビの頭がゴロンと転がった。
「言い訳する無能に用はない」
彼の冷めた言葉が辺りを凍らせた。
【第一部・完了】
「見つかったのか?まだだと!何をしておるのだ。また同じ目に会いたいのか?」。苛立ちを隠せずにフタツヌク外交大臣・ニドーが苦々しく怒鳴った。その相手の姿はよく見えず誰かはわからない。
□□□ ジエロ島・プロポーズ
「この私と結婚をしてもらえませんか」。スリーンはセオリー通りに跪きフォーシスにプロポーズをした。彼女はそれに向き合って表情を固くして答える。
「私はあなたの父上と無理やりではあるけれど、婚約をさせられていますが、それでもよろしいのですか?」。ためらいがちにフォーシスは言う。
「父とはもう縁を切ります、婚約も破棄したも同然でしょう。私はサンジェルマン王子ではなく、ひとりの男としてあなたに結婚の申し込みを致します」
「嬉しいわ、もちろんお受けします」。フォーシスの左手を取り、その指にスリーンは軽くキスをした。ことの成り行きを見守っていた周りの人が、割れんばかりの拍手で、2人の婚約の成就を祝っている。
□□□ 逢わせたい人・再会
「姫、こちらへ」
ファイゴが導いた先に人影が待っていた。
「私を憶えていますか?愛しい姫よ」
優しい語り口でフォーシスに向き合う、その人は紛れもない実母・二ノーラであった。
「おかあさま、お母様なの?あぁ、生きていらしたなんて、、、」
「10年ぶり…ね、どんなに会いたかったことでしょう、何度もここを飛び出してひと目でもあなたに会いに行こうとしたことか、、」。ハラハラと涙を流しながら娘を抱きしめる母。
「どうして、、どうして」。抱きしめられてさまざまな思いが込み上げて来て、声を詰まらせる娘。母娘の10年ぶりの対面に時が戻る。
「許して、フォーシス…」
「母上…生きていてくれて、ありがとう」
感動の対面の後、ファイゴが経緯の説明をする。
〈ニノーラ王妃は奸計に嵌められ、根も歯もない侍従長との不貞を捏造された挙げ句に国を追われました。この悪巧みの首謀者はフタツヌク公国。隣国のヨンダル王から王妃を奪い、精神的に疲弊させてから懐柔し、戦わずしてシヨーヌ領を乗っ取る計画なのです。
その噂の相手とされたのは侍従長だった私だ。もちろん、王妃様をお慕いしてました。だが、それは恋愛感情ではなく、直向きな忠誠心であったのだが悪用されてしまった。カミングアウトするならば、私が、、私は、、私にとって…女性は恋愛対象ではないのです。
王妃様をお守りするために、地下に潜伏して起死回生を計画して来ました。いま、奴らの野望があからさまになり、こうして、シヨーヌ王家一族の排除がなされて、これ以上は奴等の好きにさせてはなりません、時が来た今こそ立ち上がる時です。反撃の準備は整いました。
元侍従長ファイゴの今までの経緯の語りは終わった。
「例え、肉親を失うこととなっても後悔をしないか?
後悔の念を持つのならば、ここで離脱するが良い、止めはしない」。ファイゴ指揮官の呼び掛けに、誰として異を唱えるものはない。
□□□ 作戦会議
「見せかけの敵はサンジェルマンとシヨーヌであるが、真の敵はフタツヌク。先ずは、悪の根源フタツヌクを叩く」
作戦部隊長となったファイゴがいうと、部隊長ラチョスが質問をする。
「恐ろしい魔力を使うという噂のフタツヌク公国に対して勝てるのか?」
「その通りだ、あの国の外交大臣のニドーが繰り出す様々な魔法は脅威だ」
「では、どうやって?」。フォーシスが翳りがちに聞く。
「姫、準備は万端と申しました、フォダ砂漠の遺跡に住む魔族の末裔は私達の協力者です、ニドーの黒い魔力に対抗できる様々な魔力を使えます」
「そうなのか…噂に聞く砂漠の民の存在は本当なんだ」
スリーンは驚くやら感心するやら。
「但し砂漠の民は、フィジカルが弱い」と、ここまで闊達に話していたファイゴが、険しい表情で辺りの気配を窺った。
「だれだッ⁈」
彼が太ももに括られたシース(鞘)から、短剣を目にも留まらぬ速さのノーモーションで声と共に鋭く投げた。ゴリッ!剣は手応えの音を発する。そこに居たモノは剣を避けきれずに左腕の尺骨を犠牲にして受け止めた。だが、ソイツは痛みの呻きを上げることなく、ヒラリと身を翻して天窓から逃げる。
「アレは、ムーサイ7人衆の…」
スリーンは見覚えのある影を特定した。
「逃がさんッ」。スリーンはラチョスとサバスらを率いて飛び出し、その跡を追った。
「どうやら、ここを嗅ぎ付けたか…」新手が潜んでないか警戒しながらファイゴが呟いた。
「では、作戦行動に移りましょう」二ノーラ王妃が作戦決行を決断した。
◾️◾️◾️フタツヌク公国・城の地下室
ムーサイ7人衆を束ねるイリアスが、戻ったスウビの報告を聞いている。
「フタツヌク侵攻か…ふッ、、、それでオマエはファイゴに気が付かれたのか?」
「ファイゴはただの鍛冶職人ではありません、かなりの使い手と、、」ムーサイ7人衆のひとり・スウビが言い訳がましくする説明の言葉をイリアスは黙らせた。次の瞬間に床にスウビの頭がゴロンと転がった。
「言い訳する無能に用はない」
彼の冷めた言葉が辺りを凍らせた。
【第一部・完了】
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