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□□□ 光と闇
「どうだ感じているか?ムツキ」
「ヨーツの平原が見えてます、そこに間違いなく」
ムツキと呼ばれたイーチバァーン族の女性が一族の力のひとつである遠隔透視での結果を口にした。同行している男性がそれを聞いて色めきだった。
「よし、ならば我等も向かおう。驚かせてやろうぞ」
□□□ お尋ね者
「サンノロ様、我が陣営にお尋ね者がノコノコと向かって来ておりますが引っ捕えますか?」
「ふむ、手を出すでない。陣営の内まで引き入れよ。
私が直接に会って捕らえる、場合によっては斬り捨てる」
「承知致しました、皆に触れを出しまする」
伝令により隊の隅々まで『向かってくる商隊の不審者は素通りさせ、陣内へ引き入れろ。総大将の獲物である、誰も手出し無用である』と伝えられた。それを聞いた兵士たちが囁きあった。
「あれは…もしや、放逐されたスリーン王子では?」
「確かにあの凛々しいお顔は変装されていても分かる」
「サンノロ指令は実の弟を斬り捨てるのか?」
「まさか、捕らえてサンジェルマンへ連行するだろ」
「斬るのは抵抗すればだろ」
「だよな、サラーン王も捕らえろと命令はしただけだ」
「その通り、実の子の王子を殺せとは言うまい」
商隊は何も怯むことなく、陣営内へと進んで兄サンノロと弟スリーンの両王子が対面をした。
「これはこれは、裏切者でお尋ね者が現れるとは」
「行動する勇気なき者に生きて出会えるとは」
「わははは、父上の婚約者を奪い去った男か」
国に残った兄サンノロと国を捨てた弟がお互いに悪態をついて対峙した。そしてツカツカと兄がお尋ね者に近づいた。取り巻きは丸腰の商人スリーンを切り捨てるのではないかと固唾を飲んだ。
「よくぞ無事に帰ったな、心配したぞ弟よ」
「兄さんも一回り大きくなったようにみえる」
がっしと抱き合う兄弟に感化されて周りの者たちも歓喜の声を上げた。戸惑いを見せたのはフォーシスであった。
「スリーン、どういうことなの?」
スリーンに代わってサンノロが彼女に答えた。
「ご無沙汰してます、私のことを憶えてますか?」
「ええ、もちろん。スリーンの兄君サンノロ…様」
「そう、スリーンの兄で永遠の仲間のサンノロです」
「永遠の仲間?どういうことなの説明をして」
「僕と君を助ける為にサンノロ兄さんはサンジェルマンに留まってくれたんだ、そして父上まで欺いてくれた」
「スリーン、前から2人で調べていた事なんだが、もう父上も母上も以前の父と母ではないようだ。特に母上は心を誰かに支配されているようだ」
「やはりそうか、邪悪魔法に縛られているのか」
「弟よ、先ずはこの部隊を率いてシヨーヌを陥す」
「待って、私の故郷シヨーヌを攻めるのは止めてください、そんな事をしたら平和な街が大変なことになります。そんなことは許しません」
サンジェルマン双子の計画を聞いていたフォーシスが堪らずに口を挟んで抗議をした。
「戦闘を起こさない為にフォーシスがいるんだよ、そしてもう一人の…」
幕影から現れたのはフォーシスの姉であった。
「フォンヌお姉様、なぜここに?」
「ごめんなさいフォーシス、私を許して。あなたをサンジェルマンへ行かせたのは私のわがままだったの、そしてあなたが居なくなったからと人質に差し出されるところをサンノロ様が救ってくれたのよ」
「もう何が何だかわからないわ」
「混乱するのも仕方ないけれど大丈夫だよフォーシス。私たちはみんな仲間なんだ、結束してこの世に平和をもたらすんだ」
スリーンがフォーシスを落ち着かせようと、そっと抱きしめた。
「私やお姉様を利用してサンジェルマンがシヨーヌを滅ぼそうとしているわけではないのね?信じていいのね」
「愛するフォーシス、決してそんなことはしない」
「ヨンガルお兄様が死んでしまってから、シヨーヌはおかしな国になってしまったの、それが元に戻してくれるのならばなんでもするわ、スリーン」
夜明けと共にサンノロ陣営は野営地を撤収し、隊はシヨーヌ城へ向けて進んでいくのであった。
「どうだ感じているか?ムツキ」
「ヨーツの平原が見えてます、そこに間違いなく」
ムツキと呼ばれたイーチバァーン族の女性が一族の力のひとつである遠隔透視での結果を口にした。同行している男性がそれを聞いて色めきだった。
「よし、ならば我等も向かおう。驚かせてやろうぞ」
□□□ お尋ね者
「サンノロ様、我が陣営にお尋ね者がノコノコと向かって来ておりますが引っ捕えますか?」
「ふむ、手を出すでない。陣営の内まで引き入れよ。
私が直接に会って捕らえる、場合によっては斬り捨てる」
「承知致しました、皆に触れを出しまする」
伝令により隊の隅々まで『向かってくる商隊の不審者は素通りさせ、陣内へ引き入れろ。総大将の獲物である、誰も手出し無用である』と伝えられた。それを聞いた兵士たちが囁きあった。
「あれは…もしや、放逐されたスリーン王子では?」
「確かにあの凛々しいお顔は変装されていても分かる」
「サンノロ指令は実の弟を斬り捨てるのか?」
「まさか、捕らえてサンジェルマンへ連行するだろ」
「斬るのは抵抗すればだろ」
「だよな、サラーン王も捕らえろと命令はしただけだ」
「その通り、実の子の王子を殺せとは言うまい」
商隊は何も怯むことなく、陣営内へと進んで兄サンノロと弟スリーンの両王子が対面をした。
「これはこれは、裏切者でお尋ね者が現れるとは」
「行動する勇気なき者に生きて出会えるとは」
「わははは、父上の婚約者を奪い去った男か」
国に残った兄サンノロと国を捨てた弟がお互いに悪態をついて対峙した。そしてツカツカと兄がお尋ね者に近づいた。取り巻きは丸腰の商人スリーンを切り捨てるのではないかと固唾を飲んだ。
「よくぞ無事に帰ったな、心配したぞ弟よ」
「兄さんも一回り大きくなったようにみえる」
がっしと抱き合う兄弟に感化されて周りの者たちも歓喜の声を上げた。戸惑いを見せたのはフォーシスであった。
「スリーン、どういうことなの?」
スリーンに代わってサンノロが彼女に答えた。
「ご無沙汰してます、私のことを憶えてますか?」
「ええ、もちろん。スリーンの兄君サンノロ…様」
「そう、スリーンの兄で永遠の仲間のサンノロです」
「永遠の仲間?どういうことなの説明をして」
「僕と君を助ける為にサンノロ兄さんはサンジェルマンに留まってくれたんだ、そして父上まで欺いてくれた」
「スリーン、前から2人で調べていた事なんだが、もう父上も母上も以前の父と母ではないようだ。特に母上は心を誰かに支配されているようだ」
「やはりそうか、邪悪魔法に縛られているのか」
「弟よ、先ずはこの部隊を率いてシヨーヌを陥す」
「待って、私の故郷シヨーヌを攻めるのは止めてください、そんな事をしたら平和な街が大変なことになります。そんなことは許しません」
サンジェルマン双子の計画を聞いていたフォーシスが堪らずに口を挟んで抗議をした。
「戦闘を起こさない為にフォーシスがいるんだよ、そしてもう一人の…」
幕影から現れたのはフォーシスの姉であった。
「フォンヌお姉様、なぜここに?」
「ごめんなさいフォーシス、私を許して。あなたをサンジェルマンへ行かせたのは私のわがままだったの、そしてあなたが居なくなったからと人質に差し出されるところをサンノロ様が救ってくれたのよ」
「もう何が何だかわからないわ」
「混乱するのも仕方ないけれど大丈夫だよフォーシス。私たちはみんな仲間なんだ、結束してこの世に平和をもたらすんだ」
スリーンがフォーシスを落ち着かせようと、そっと抱きしめた。
「私やお姉様を利用してサンジェルマンがシヨーヌを滅ぼそうとしているわけではないのね?信じていいのね」
「愛するフォーシス、決してそんなことはしない」
「ヨンガルお兄様が死んでしまってから、シヨーヌはおかしな国になってしまったの、それが元に戻してくれるのならばなんでもするわ、スリーン」
夜明けと共にサンノロ陣営は野営地を撤収し、隊はシヨーヌ城へ向けて進んでいくのであった。
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