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 フォダ砂漠の遺跡を目指すルートの選択肢は大まかに3つある。ジエロ島を発ってミーヨ浜辺を経由して過酷な環境のフォダ砂漠を縦断する最短コース。
 港町キターノからシヨーヌ領・東ヨーダ平原を南下する平坦コース、キターノで船を乗り換えてワカレィ河を遡上しヨーツ湖からフォレスの森を抜ける最長ルートだ。
 フォダ砂漠を目指すには、それぞれにメリットとデメリットがあるのだ。それについて彼らは検討をしていた。

「最短ルートは十分な水と食料が必要だし、ラクダも相頭数を揃えなければ越えられないから除外する。誰か異存はあるか?」指揮官ファイゴが反対のないことを確認する。

「次にシヨーヌ領を抜けるのは、今や敵領となっていて見晴らしのきく平原は見つかる可能性は大いにある。従って夜間行動となるが、あの距離を一晩で駆け抜けるには駿馬が人数分必要になる。駄馬ならともかくこの数を集めるのは無茶だろう。残るはかなりの迂回になるがワカレィ河を遡上して行くしかない。どうだろう」

 そこに手を挙げて提案を出したのはスリーンであった。

「ファイゴ、私に一計がある、キターノからヨーツ平原を進もう」スリーンが自信満々に手にした手紙を差し出した。

□□□  港町キターノ

 港を後にする行商キャラバン隊一行がシヨーヌ城をめざして動き出した。東ヨーツ平原にはサンジェルマンの大軍が陣営を張っている、シヨーヌはの物資補給ならばキャラバン隊への検閲は必至で、物資の没収は間違いなく最悪は捕縛されてしまうだろう。

◾️◾️◾️東ヨーツ・サンノロ陣営

「ふごふご…」袋の中身が呻めき動いている。

 まるで囚人のように手脚を縛られ、口は猿ぐつわで言葉を封じられ酷い有様で担ぎ込まれたのはフォンヌ・シヨーヌだ、フォーシスの姉である。継母・王妃ミツーヌにより物のように扱われ、婚約という名の人質に出されたのである。婚約を拒否したが故にこんな仕打ちをされて、サンジェルマン野営陣へと連れ込まれたのであった。

「何という仕打ちを…すぐに解き放してやれ」

 陣幕の近くへ放り出され捨て置かれた袋詰めの姫をサンノロが助け出した。

「どなたか存じませんが、助けて頂きありがとうございます。もう嫌なんです助けてください、城へ帰ることも出来ません。鬼畜なサンジェルマン王の人質にもなりたくはありません、どうかどうかお助けを」

「落ち着いて。危害は加えませんしお助けしますから。ただ、ここはサンノロ・サンジェルマンの陣営ですから、大声で悪口を言うのだけは我慢してくださいね」

 それを聞いたフォンヌはショックで気を失った。
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