127柱目の人柱

ど三一

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学舎編

第二陣

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ナジュは第二陣の神様候補全員の動きに注視しながらも、誰の目にも不利だと映る他夏を背負った雷蔵に注目する。術の素養を測った時は、本人の口から術が得意ではないと聞いた。見た所得物は所持していない。苦無等の小型の武器を使用する可能性はあるが、雷蔵は何となくそういう類のは好まない気がした。おんぶ紐のように己の身体に他夏を固定しているため両手は自由だが、飛んだり跳ねたりして油断したら二人纏めて転んでしまいそうだ。

「背中に人一人背負ってどう戦うんだ…?」
「え……本当ですね。二人で戦うのかな…?それにしては珍しい形ですけれど」

第二陣は、第一陣同様に腕に覚えがあるが相手の出方を見る冷静さを持っている。兎に角目にもの見せようと無策で飛び掛かったり、師の手加減を己が実力を軽んじられているとは考えて怒気を滲ませたりはしない。ただ、他より優ると自負する実力は示しておきたい気位の高さは持っている、第二陣に出てきた面々はそんな神様候補達だった。

「…命の危険は無いと安心してスイスイと出張ってきた雑魚か、少々頭の回る小魚か、それとも…なりは小さくともいずれ大魚の器に大成する出世魚か。いざ、新劇の第二幕だ…!」

五島師は、最初の一人と第一陣を餌食にした二本の触腕を構える。緊張感漂うその時間に、敵意もなにも無いなんとなしに放たれた火球が師の胴体に向かっていく。

「殺気なしに攻撃するとは見事…!しかし、空気の流れは誤魔化せん!」
「他夏!?」
「……あー」

人にしてみれば瞬きの一瞬、ごく僅かな師の動きの遅延。害意を全く感知せず術が己の身体に迫り、師は胴体を縦に伸ばして身体の横幅を短くして火球を回避した。しかし、張り詰められた意識が火球に多く向いているその時を立ち尽くしている者は第二陣にはいなかった。

「オウソウ…!」
「ええ、唐梳様。毎ご用意しております」

唐梳が腰に差していた刀を抜き、何も無い空中を駆け上がる。唐梳の身丈半分程ずつ上斜め前方に登っている。それを見たナジュは見間違いかと隣の南天に確認する。

「なあ、あいつが立ってるとこ階段なんてないよな!?縄も張ってるように見えないのに、何で空飛んでんだ!?」
「恐らく飛んでいるのではない、かと。飛翔する術を扱える方は、あんなにカクカクと飛び上がらないですから。きっと、姿の見えない透明な足場のような物を設置する術でしょう」
「透明な足場?」
「ええ、例えば…川に少し出ている石と石を飛び移って川の反対側に行きたい時。途中で石が途切れていればそれ以上飛び移れません。しかし、自分の意思で石を出現させ、その場所を設定できれば反対側に渡れる。さらにその石を透明にする事が出来れば、彼のように何も無い場所を駆け上がっているように見える、という絡繰を思いつきました」
「はあ~……あれ、術でやってんのか。でも、なんで透明にする必要があるんだ?」
「そ、それは……え~と……何ででしょう?」

申し訳なさそうに苦笑いする南天に、ナジュは緊張の糸が途切れそうになるのだった。


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