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学舎編
戦闘開始!
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集団の一番外側に居た桃栗と丹雀は早々に師と距離を取り、神様候補が一人太い触腕に押し潰される様を他より冷静を保って目撃していた。外側へ向かって一斉に駆けてくる必死の形相をした同胞達を見送りながら、二人は師の攻撃とその結果を観察している。
「死んだかな?」
「いや、仮にも神様の推薦を得た神様候補だ。講義の最中に師自ら消滅させる等という事はないだろう。戦闘不能か、何か罰でもあるのか……触手を持ち上げて見ればわかる」
五島は大方の神様候補が距離を取った事を確認して、床に張り付いた初撃の一本を上に持ち上げる。滑りを帯びた触腕の裏には無数の吸盤が備え付けられており、一つひとつがうようよと蠢いている。その中に囚われた神様候補は苦悶の表情を浮かべながら吸盤に貼り付けられて逆さまになっていた。修練着はぬめりにより元の明るい萌葱色が暗色に変色し、肌の部分から粘液が滴っている。押し潰されて行動不能にされただけで、怪我と呼ぶのは打撲位のものなのだろう。五島は、捕えているのとは別の触腕を神様候補の身体に巻きつけて吸盤から剥がし、ある程度離れた距離の場所に解放した。ぬめる身体で武道場の壁まで逃げる神様候補を、他の神様候補が笑う。
「情けない姿だな、腕が振り上げられた時点で気付くだろ?」
「おっ!まあた転げたぞ!はは、間抜けな奴だ」
師は武道場の中央に移動すると、警戒もせずヘラヘラと談笑している様子を見て、まだ気が抜けている神様候補達に向けて発破を掛ける。
「明日は我が身……。この腕に溺れず新しき着物のままで鐘の音を聞いた者には、知恵深き学舎の長に”比類なき者”として最高の評価を伝えよう。無論、大魚を前に安全な穴倉に籠り続ける挑まぬ者に照る栄冠はない。百度転げる心構えをせよ」
身体を支える為に使っていた四本の触腕に二本足して、残る二本の触腕を宙に掲げる。攻撃を行うのは二本という事だろう。神様候補の中にはその意図を汲み取り不満げな顔をする者もれば、単純に二本だけで良かったと喜ぶ者も居る。ナジュは一緒に壁際まで逃げてまだ荒く呼吸をしている南天の隣に立ち、触腕をゆるく動かしている師を指差す。
「全部の腕使う訳じゃなさそうだな…!二本だけなら何とか避けられそうだ」
「はあ……はあ……ナ、ナジュ君、きっと…し……五島師は…はあ…僕達全員相手でも……二本で十分だと……手加減して、く…れてるんですよ……はあ…っ」
「えっそうなのか?」
「一先ず…ここに居て……他の方の出方を…見ていましょう…。血気盛んな……腕に自信のある方が何名か走って行きましたから…」
「お、おう…!お前、大丈夫か?ずっと肩で息してるぞ…」
「ぼ、僕…体力………ほんと…無いんです…っ!普段は…術で補ってはいる、んですけど……。今は…自分の身一つで…師に挑んでみよう…って…」
「む、無理するなよ…南天。倒れそうな時は此処まで引き摺ってってやるからな…!」
「ありがとうございます……」
膝に手をついて顔を青くする南天を心配しながら、師の周りを取り囲む神様候補の第一陣の様子を伺う。手に武器を持つ者や、掌に火球を出現させている者もおり、皆何らかの攻撃手段を有しているようだ。ナジュは自身の持たざる手を握り、彼らがどう動くか、師がどう対処するか見届ける。
「死んだかな?」
「いや、仮にも神様の推薦を得た神様候補だ。講義の最中に師自ら消滅させる等という事はないだろう。戦闘不能か、何か罰でもあるのか……触手を持ち上げて見ればわかる」
五島は大方の神様候補が距離を取った事を確認して、床に張り付いた初撃の一本を上に持ち上げる。滑りを帯びた触腕の裏には無数の吸盤が備え付けられており、一つひとつがうようよと蠢いている。その中に囚われた神様候補は苦悶の表情を浮かべながら吸盤に貼り付けられて逆さまになっていた。修練着はぬめりにより元の明るい萌葱色が暗色に変色し、肌の部分から粘液が滴っている。押し潰されて行動不能にされただけで、怪我と呼ぶのは打撲位のものなのだろう。五島は、捕えているのとは別の触腕を神様候補の身体に巻きつけて吸盤から剥がし、ある程度離れた距離の場所に解放した。ぬめる身体で武道場の壁まで逃げる神様候補を、他の神様候補が笑う。
「情けない姿だな、腕が振り上げられた時点で気付くだろ?」
「おっ!まあた転げたぞ!はは、間抜けな奴だ」
師は武道場の中央に移動すると、警戒もせずヘラヘラと談笑している様子を見て、まだ気が抜けている神様候補達に向けて発破を掛ける。
「明日は我が身……。この腕に溺れず新しき着物のままで鐘の音を聞いた者には、知恵深き学舎の長に”比類なき者”として最高の評価を伝えよう。無論、大魚を前に安全な穴倉に籠り続ける挑まぬ者に照る栄冠はない。百度転げる心構えをせよ」
身体を支える為に使っていた四本の触腕に二本足して、残る二本の触腕を宙に掲げる。攻撃を行うのは二本という事だろう。神様候補の中にはその意図を汲み取り不満げな顔をする者もれば、単純に二本だけで良かったと喜ぶ者も居る。ナジュは一緒に壁際まで逃げてまだ荒く呼吸をしている南天の隣に立ち、触腕をゆるく動かしている師を指差す。
「全部の腕使う訳じゃなさそうだな…!二本だけなら何とか避けられそうだ」
「はあ……はあ……ナ、ナジュ君、きっと…し……五島師は…はあ…僕達全員相手でも……二本で十分だと……手加減して、く…れてるんですよ……はあ…っ」
「えっそうなのか?」
「一先ず…ここに居て……他の方の出方を…見ていましょう…。血気盛んな……腕に自信のある方が何名か走って行きましたから…」
「お、おう…!お前、大丈夫か?ずっと肩で息してるぞ…」
「ぼ、僕…体力………ほんと…無いんです…っ!普段は…術で補ってはいる、んですけど……。今は…自分の身一つで…師に挑んでみよう…って…」
「む、無理するなよ…南天。倒れそうな時は此処まで引き摺ってってやるからな…!」
「ありがとうございます……」
膝に手をついて顔を青くする南天を心配しながら、師の周りを取り囲む神様候補の第一陣の様子を伺う。手に武器を持つ者や、掌に火球を出現させている者もおり、皆何らかの攻撃手段を有しているようだ。ナジュは自身の持たざる手を握り、彼らがどう動くか、師がどう対処するか見届ける。
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