127柱目の人柱

ど三一

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学舎編

禁食の頃

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現代史の講義が終わって神様候補達は飯処に移動する。本格的に講義が始まってからは毎日手荷物を持って飯処に向かうこととなり、食事の汁が跳ねたりして汚れないか心配だと話していると、飯処の前の廊下には甘辛い匂いが漂っていた。スンスンと匂いを嗅いだ桃栗は、「肉っぽい匂いがするね」と言って何の料理か予想を口に出す。

「うーん…これは煮込んだ肉料理だね。使ってるのは…"もみじ"かな?"山鯨"かな?あまり臭みは混じっていない気がするけど」
「紅葉?飯に飾るのか?」

もみじと聞いてナジュが思い浮かべるのは、秋になると赤く変色する手に似た形の葉を持つ木である。食事に草花を飾り付ける方法があると知ったのはつい最近で、主様の屋敷で催された宴の席で出された食事や御手付き様の宴で見かけたくらいだ。丹雀は随分風流な考え方をするな、と思いながら桃栗の言うもみじと山鯨の意味を説明する。

「もみじとは鹿肉の事だ。ちなみに山鯨は猪肉」
「へ?そんな呼び方するのか?鹿肉、猪肉じゃなくて?」
「ナジュの旦那は肉食が許されてた時期に生まれたのかねェ」
「許されるも何も無かったぞ?獣は貴重な食料だったし、毛皮はよく売れる」
「あっしの頃は、殺生に繋がるってんで肉食が禁じられていた頃があってねェ。どういう理屈かわからねェが、足の多い生き物ほど罪深いってェさ。お上の考える事はあっしら庶民には考えも及ばないねェ。でも、罪だったとしても病人に精のつくもん食べさせてやりたかったり、どうしても食いてェって事があるだろう?でも決まりじゃ食っちゃいけねェ。ならァ少しばかり名前を変えてやりゃ、それじゃねェってんでお咎め無し!大っぴらに鹿肉だ猪肉だって言ったら捕まっちまうけどよォ、食ってんのがもみじ、さくらってェなら風流なもんだ」
「それ屁理屈って言うんじゃないか?」
「とんちをきかせて上手ァくやんのよォ!それが余裕ある粋な男前さ」
「実際は食べていたんだよね~!僕もお肉大好き!さて、今日の昼餉は何かなっ」

飯処に入ってすぐ近くの机に座っている神様候補を見ると、片手に大きな器を持って煮込んだ肉を下の白飯と共に掬って味わっていた。ナジュ達は長机に横一列に座って昼餉の提供を待っていると、昨日の待ち時間よりも早く給仕達が食事を運んできた。

「牛すき風でございます。お好みで山椒、生姜と共にお召し上がりください」

蓋のされた丼とお吸い物、小皿を置いて給仕達は慌ただしく次の神様候補へ食事を運ぶ。皆で一斉に丼の蓋を取ると、ほわっと湯気が立ち昇り食欲を唆る甘めの香りが鼻をくすぐる。

「牛すきだって!卵でとじてあるから柳川に似た料理?」
「冷めないうちに食してみよう」
「んっ!あまじょっぱいのを卵で包んで…美味しい!」
「あつ……はふ、はふ……」
「丹雀のあにさんは熱ィの苦手なようで。ナジュの旦那と桃栗の兄貴は口一杯に頬張って美味そうに食べるなァ。どれ、あっしも」
「この菜っ葉、香りは変わってるが悪くないな。山椒もきりっとして爽やかだ」

ナジュ達が昼餉に舌鼓を打っている今より半刻程前、茂籠茶老と号左との話が終わった所だった。茂籠茶老の部屋から出た号左の表情は優れない。納得のできる話し合いでは無かったからだ。号左は飯処への道すがら今一度記憶を整理してみようと想起した。
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