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学舎編
謎の一端
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号左は、巻物から得られた歴代の神々の名前と謎の×証の事は二人に話さなかった。その情報の真偽もつかない現在、"講義"として内容を伝えるのは適切ではない、そう判断した。ナジュはほんの少し巻物の中身が気になっていたが、講義を受ける中で内容を話すだろうと思い静かに号左の言葉に耳を傾けていた。
「このように空座についての詳細な情報が少なく、最後に座した依木の君も含めて座の力や何を役割としているのか、それらを書物に残していない。神の配下や近親者、次代への口伝も確認されておらず、"座してみなければわからない"上、先代が"壊れてしまった"いわくつき。その印象が強いのか、座した歴代の神々は"淫祀"と呼ばれている」
号左は先代の空座の神、依木の君と面識はない。神々の間で囁かれた噂程度の情報を説明しなければいけないのを少々心苦しく思う。
「ふ~ん…じゃあ何はともあれ座を得なきゃ何も始まらないって事か」
空白だらけの説明を聞いて、ナジュは寧ろ安心していた。御蔭や主様から聞いた空座の嫌な逸話。それがまだ確定事項ではないと望みを持てる。もし必ず狂ってしまうと号左の口から聞いたならば、ナジュの座を得ようという目的にヒビが入っていただろう。号左は既存の書物にはもう教えられる事はないと、空座の書を閉じ、巻物を元に戻す。
「そう。一体何を司っているのか謎の神様。私としてはとても興味が湧いてくるね。もし君達のどちらかが無事に神に成れたなら、少しの情報でもいい、わかった事を教えてくれると嬉しいよ」
これは号左が学舎に招聘された理由とは関わりない、好奇心を擽られた故の発言である。雁尾から巻物を受け取り、その中身を検めねばこの発言に辿り着かなかったであろう。本命の仕事以外に面白そうな謎の一端を与えた雁尾と余計な進言をした麒麟に、「仕事を増やすな」と「感謝」の念がせめぎ合う。
「他夏はどうか知らないが……俺が神様になったら号左師にこっそり教えてやるよ。あ、でも言っちゃいけない事ばっかりだったら、少ししか話せないぞ?こう…手掛かりみたいなやつとか…」
「それでもいいよ。私はあれこれと繋がりを考える過程が好きなんだ。もし座が司るものの正体を知れたら、この寂しい書の内容にもう少し情報を追加できる」
号左が空座の書を指先で二、三度突く。
「…そういえば、俺の……主様?とその側近が話してたんだが…」
淫祀の話で二人から聞いた話を思い出す。
「もっと詳しく…って言ったら違うが、色々話してたぞ?役割に支配される…とか、淫気が溜まりすぎて…とか、あと何だっけ…ああ、座によって求められる基準が違う…と、それと…」
「その話を、君の主様が…?」
「おう、難しい言葉でいまいち理解できなかったんだが、あー…300年前だっけに消滅して……淫の座?が、えー…」
「頑張って思い出して…!君に関わりのある方達が、現在に伝わっていない重要な事柄を知っている可能性があるよ!」
早く終わりそうな気配をしていた講義の時間は、号左がナジュから情報を引き出す為の時間となった。
「このように空座についての詳細な情報が少なく、最後に座した依木の君も含めて座の力や何を役割としているのか、それらを書物に残していない。神の配下や近親者、次代への口伝も確認されておらず、"座してみなければわからない"上、先代が"壊れてしまった"いわくつき。その印象が強いのか、座した歴代の神々は"淫祀"と呼ばれている」
号左は先代の空座の神、依木の君と面識はない。神々の間で囁かれた噂程度の情報を説明しなければいけないのを少々心苦しく思う。
「ふ~ん…じゃあ何はともあれ座を得なきゃ何も始まらないって事か」
空白だらけの説明を聞いて、ナジュは寧ろ安心していた。御蔭や主様から聞いた空座の嫌な逸話。それがまだ確定事項ではないと望みを持てる。もし必ず狂ってしまうと号左の口から聞いたならば、ナジュの座を得ようという目的にヒビが入っていただろう。号左は既存の書物にはもう教えられる事はないと、空座の書を閉じ、巻物を元に戻す。
「そう。一体何を司っているのか謎の神様。私としてはとても興味が湧いてくるね。もし君達のどちらかが無事に神に成れたなら、少しの情報でもいい、わかった事を教えてくれると嬉しいよ」
これは号左が学舎に招聘された理由とは関わりない、好奇心を擽られた故の発言である。雁尾から巻物を受け取り、その中身を検めねばこの発言に辿り着かなかったであろう。本命の仕事以外に面白そうな謎の一端を与えた雁尾と余計な進言をした麒麟に、「仕事を増やすな」と「感謝」の念がせめぎ合う。
「他夏はどうか知らないが……俺が神様になったら号左師にこっそり教えてやるよ。あ、でも言っちゃいけない事ばっかりだったら、少ししか話せないぞ?こう…手掛かりみたいなやつとか…」
「それでもいいよ。私はあれこれと繋がりを考える過程が好きなんだ。もし座が司るものの正体を知れたら、この寂しい書の内容にもう少し情報を追加できる」
号左が空座の書を指先で二、三度突く。
「…そういえば、俺の……主様?とその側近が話してたんだが…」
淫祀の話で二人から聞いた話を思い出す。
「もっと詳しく…って言ったら違うが、色々話してたぞ?役割に支配される…とか、淫気が溜まりすぎて…とか、あと何だっけ…ああ、座によって求められる基準が違う…と、それと…」
「その話を、君の主様が…?」
「おう、難しい言葉でいまいち理解できなかったんだが、あー…300年前だっけに消滅して……淫の座?が、えー…」
「頑張って思い出して…!君に関わりのある方達が、現在に伝わっていない重要な事柄を知っている可能性があるよ!」
早く終わりそうな気配をしていた講義の時間は、号左がナジュから情報を引き出す為の時間となった。
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