127柱目の人柱

ど三一

文字の大きさ
上 下
208 / 260
学舎編

学舎散歩

しおりを挟む
ナジュ達は号左の後ろに着き、学舎の中を歩き回る。所々空いている部屋があっても通り過ぎる事から、どうやら号左は目星を付けている場所があるらしい。道中軽い道案も交えながらそこを目指している。

「学舎の敷地は広いだろう?大まかに分けると、我々師達が滞在する部屋がある西側、大広間を中心にした君達神様候補が講義を受ける時に使用する部屋が集まった中央及び東側となる。君達に関わりがあるのは主に中央と東の決まった部屋だけど、時間が出来た時は学舎の中を見廻ると良い。外観は統一されている場所が殆どだけれど、内部には嘗て時代の主流だった様々な様式の部屋が所々に設けられていて、そこに生活や文化の変化が表れている。古い時代でも新しい時代でも、順々に訪れてみると何か発見があるかもね」
「好きに入っていいのか?」
「鍵が掛かっていなくて、君達が開けられる部屋なら入ってもいいよ。西側の師達の部屋に繋がる扉は、師から許可を得た者しか入る事が出来ない。だから基本的に神様候補が師の部屋に居るって事はないね」

ナジュの脳裏には、先日雁尾の部屋を桃栗、丹雀と共に掃除させられた記憶が蘇っている。その時嗅いだ悪臭も思い出して嘔気の気配を感じたため、直ぐに記憶を浚うのを止めて現実に戻ってくる。

「出来れば神様候補が師の部屋に入る事は絶対禁止にしてくれ……」
「部屋に用なんてまず無いから私は別に良いけれど、君が絶対という言葉まで使って進言する事かい?」

号左は激励会で集められた比良坂師のお気に入りの席を思い出す。その面々はしっかり把握していて、ナジュもその中に入っていた。もしや学舎に来た早々比良坂から何らかの行動を起こされているのか?と思い探りを入れる。言葉の裏に張り付いた緊張に気付かず、ナジュはあっけらかんと先日の件について話す。

「あいつ!ガンビサマの汚い部屋を掃除させられたんだよ!俺だけじゃなく桃栗と丹雀っていう神様候補も!本当に汚くて臭くて…!」
「あ、雁尾殿の事なの?」

一転して拍子抜けした号左に、ナジュは切々と被害を訴える。今回初めて師となった雁尾について、以前から師をしていた号左も知る所だったが、神様候補であった時代には講義でしか関わりが無く、現在は挨拶を交わす程度であったためにその生活については疎かった。

(比良坂殿についての話が聞ければ良かったけど、流石にまだ接触していないか。あの席に居たのはナジュ、他夏、桃栗…あと一人の顔は見られなかったな。空いた席には何時の間にか雁尾殿が座っていたし…今度ひっそりと確認しよう)
「君達が酷い環境で労働を強いられていたのはわかった。私は学舎の規則を変える権限を持たないので今すぐどうこうは出来ないが、それとなく他の師にも規則の改定についての意見を聞こう。いくらか賛同を得られたならば茂籠茶老様に話しをしても差し支えないだろう。意見が通るかはわからないが、まずは検討して頂く事からだね」
「頼むよ~号左様!」
「私は神様ではないから、師を付けて呼んでくれたら構わないよ」

喜ぶナジュの声を聞きながら、部屋の戸を開ける。

「今日はここで講義をしよう。もし他夏が眠っても横になれるように」

部屋の中は、綺麗な畳が敷き詰められた和室だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

ヤンデレだらけの短編集

BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。 全8話。1日1話更新(20時)。 □ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡 □ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生 □アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫 □ラベンダー:希死念慮不良とおバカ □デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。 かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。

お兄ちゃん大好きな弟の日常

ミクリ21
BL
僕の朝は早い。 お兄ちゃんを愛するために、早起きは絶対だ。 睡眠時間?ナニソレ美味しいの?

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

処理中です...