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学舎編
学舎散歩
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ナジュ達は号左の後ろに着き、学舎の中を歩き回る。所々空いている部屋があっても通り過ぎる事から、どうやら号左は目星を付けている場所があるらしい。道中軽い道案も交えながらそこを目指している。
「学舎の敷地は広いだろう?大まかに分けると、我々師達が滞在する部屋がある西側、大広間を中心にした君達神様候補が講義を受ける時に使用する部屋が集まった中央及び東側となる。君達に関わりがあるのは主に中央と東の決まった部屋だけど、時間が出来た時は学舎の中を見廻ると良い。外観は統一されている場所が殆どだけれど、内部には嘗て時代の主流だった様々な様式の部屋が所々に設けられていて、そこに生活や文化の変化が表れている。古い時代でも新しい時代でも、順々に訪れてみると何か発見があるかもね」
「好きに入っていいのか?」
「鍵が掛かっていなくて、君達が開けられる部屋なら入ってもいいよ。西側の師達の部屋に繋がる扉は、師から許可を得た者しか入る事が出来ない。だから基本的に神様候補が師の部屋に居るって事はないね」
ナジュの脳裏には、先日雁尾の部屋を桃栗、丹雀と共に掃除させられた記憶が蘇っている。その時嗅いだ悪臭も思い出して嘔気の気配を感じたため、直ぐに記憶を浚うのを止めて現実に戻ってくる。
「出来れば神様候補が師の部屋に入る事は絶対禁止にしてくれ……」
「部屋に用なんてまず無いから私は別に良いけれど、君が絶対という言葉まで使って進言する事かい?」
号左は激励会で集められた比良坂師のお気に入りの席を思い出す。その面々はしっかり把握していて、ナジュもその中に入っていた。もしや学舎に来た早々比良坂から何らかの行動を起こされているのか?と思い探りを入れる。言葉の裏に張り付いた緊張に気付かず、ナジュはあっけらかんと先日の件について話す。
「あいつ!ガンビサマの汚い部屋を掃除させられたんだよ!俺だけじゃなく桃栗と丹雀っていう神様候補も!本当に汚くて臭くて…!」
「あ、雁尾殿の事なの?」
一転して拍子抜けした号左に、ナジュは切々と被害を訴える。今回初めて師となった雁尾について、以前から師をしていた号左も知る所だったが、神様候補であった時代には講義でしか関わりが無く、現在は挨拶を交わす程度であったためにその生活については疎かった。
(比良坂殿についての話が聞ければ良かったけど、流石にまだ接触していないか。あの席に居たのはナジュ、他夏、桃栗…あと一人の顔は見られなかったな。空いた席には何時の間にか雁尾殿が座っていたし…今度ひっそりと確認しよう)
「君達が酷い環境で労働を強いられていたのはわかった。私は学舎の規則を変える権限を持たないので今すぐどうこうは出来ないが、それとなく他の師にも規則の改定についての意見を聞こう。いくらか賛同を得られたならば茂籠茶老様に話しをしても差し支えないだろう。意見が通るかはわからないが、まずは検討して頂く事からだね」
「頼むよ~号左様!」
「私は神様ではないから、師を付けて呼んでくれたら構わないよ」
喜ぶナジュの声を聞きながら、部屋の戸を開ける。
「今日はここで講義をしよう。もし他夏が眠っても横になれるように」
部屋の中は、綺麗な畳が敷き詰められた和室だった。
「学舎の敷地は広いだろう?大まかに分けると、我々師達が滞在する部屋がある西側、大広間を中心にした君達神様候補が講義を受ける時に使用する部屋が集まった中央及び東側となる。君達に関わりがあるのは主に中央と東の決まった部屋だけど、時間が出来た時は学舎の中を見廻ると良い。外観は統一されている場所が殆どだけれど、内部には嘗て時代の主流だった様々な様式の部屋が所々に設けられていて、そこに生活や文化の変化が表れている。古い時代でも新しい時代でも、順々に訪れてみると何か発見があるかもね」
「好きに入っていいのか?」
「鍵が掛かっていなくて、君達が開けられる部屋なら入ってもいいよ。西側の師達の部屋に繋がる扉は、師から許可を得た者しか入る事が出来ない。だから基本的に神様候補が師の部屋に居るって事はないね」
ナジュの脳裏には、先日雁尾の部屋を桃栗、丹雀と共に掃除させられた記憶が蘇っている。その時嗅いだ悪臭も思い出して嘔気の気配を感じたため、直ぐに記憶を浚うのを止めて現実に戻ってくる。
「出来れば神様候補が師の部屋に入る事は絶対禁止にしてくれ……」
「部屋に用なんてまず無いから私は別に良いけれど、君が絶対という言葉まで使って進言する事かい?」
号左は激励会で集められた比良坂師のお気に入りの席を思い出す。その面々はしっかり把握していて、ナジュもその中に入っていた。もしや学舎に来た早々比良坂から何らかの行動を起こされているのか?と思い探りを入れる。言葉の裏に張り付いた緊張に気付かず、ナジュはあっけらかんと先日の件について話す。
「あいつ!ガンビサマの汚い部屋を掃除させられたんだよ!俺だけじゃなく桃栗と丹雀っていう神様候補も!本当に汚くて臭くて…!」
「あ、雁尾殿の事なの?」
一転して拍子抜けした号左に、ナジュは切々と被害を訴える。今回初めて師となった雁尾について、以前から師をしていた号左も知る所だったが、神様候補であった時代には講義でしか関わりが無く、現在は挨拶を交わす程度であったためにその生活については疎かった。
(比良坂殿についての話が聞ければ良かったけど、流石にまだ接触していないか。あの席に居たのはナジュ、他夏、桃栗…あと一人の顔は見られなかったな。空いた席には何時の間にか雁尾殿が座っていたし…今度ひっそりと確認しよう)
「君達が酷い環境で労働を強いられていたのはわかった。私は学舎の規則を変える権限を持たないので今すぐどうこうは出来ないが、それとなく他の師にも規則の改定についての意見を聞こう。いくらか賛同を得られたならば茂籠茶老様に話しをしても差し支えないだろう。意見が通るかはわからないが、まずは検討して頂く事からだね」
「頼むよ~号左様!」
「私は神様ではないから、師を付けて呼んでくれたら構わないよ」
喜ぶナジュの声を聞きながら、部屋の戸を開ける。
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