127柱目の人柱

ど三一

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学舎編

視線の先

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出海と号左が話し合っている横で、茶と菓子を楽しみながら会話していたナジュの肩に誰かの手が触れた。

「ん?……他夏」
「誰……?何で一緒に……?」

自分から触れてきたというのに、他夏は何故ナジュや他の人々がここに居るのか疑問に思っている様子だ。ナジュがどうしようか考えていると、皆に茶を勧めていた師の一人が近くから椅子を一脚持ってきてナジュの隣に置いた。

「貴方も神様候補よね。ここに座って!もう一つ茶碗持って来るから」
「?」
「……茶ァ出してくれるから座れってよ。ここだ、ここ」

言葉が通じているのかいないのか、ぼんやりとしている他夏の腕を引いて強引に椅子に座らせた。輪の中に一人新顔が加わった事で、師達の興味は他夏に移る。茶碗と饅頭を持たされ、ぼーっとしている姿は師達に受けが良かったらしい。

「こっちの子も綺麗な顔してるわぁ」
「ほら、食べていいんだよ。饅頭は嫌いかい?」
「塩辛いのが好きだったらアラレもあるからね」

儚く美しい青年を師達はちやほやしたくて堪らない。不思議そうに饅頭を見る他夏に、こうして食べるんだよと隣に座る師が教えてやると、他夏は小さな口で饅頭を唇で食む。甘い、と他夏がぽつりと呟くと、今度は茶を飲めと他の師が世話を焼こうとする。その光景を見ていたナジュは、机に肘をつきながら食べかけの饅頭を口に放って悪態をつく。

「へっ、さっきまで何も答えなかった癖して」
「何?こっちの子に嫉妬してる?皆に可愛がられて羨ましい?」
「そんなんじゃねえよっ!」
「はは、もっと饅頭あるから食べて機嫌直しなさいよ」

ナジュの茶碗に茶を注いでいた師が、空いた手に饅頭を乗せた。

「あんた、食べ終わった途端菓子を渡してくるな!?もう饅頭四個目だぞ!?」
「若い人たちに食べさせたくなっちゃうのよ!それにどちらも色男だからね。食べる姿も様になって眼福眼福」
「そうそう!宿舎でご飯は沢山食べているかい?足りなかったら学舎の方に来ると良い。私が町の飯処に連れて行って山程飯を食べさせてあげよう」

号左と話していた出海が、飯の話を聞きつけてナジュの肩を抱く。

「あんたもまたか!教えて貰ったぞ、俺をこれ以上無い位太らせるつもりだってな。飯は有り難いが俺が成りたいのは相撲取りじゃなく神様の方だ!神様に捧げる方じゃなく、捧げられる方!」
「え~?でも相撲取りってすっごく強いんだよ?回しを巻いて己の身体一つで猛者と戦うその姿は、まさしく雄姿!大俵を片手で担いで、体当たりで複数の男を吹っ飛ばしてしまう程なのに」
「強い…?そ、それは興味をそそられるが…」
「揺れない、揺れない。神様候補として来たんだからね」

明るい笑い声が上がった輪の外、後から来てのんびりとしていた二人組も世間話に興じていた。

「はあ~羨ましいもんだね。華やかなお顔をされて、神様にまで成って」
「ああ、違いない。……しかし、本当に綺麗な子だな……見ていると、妙な気分になりそうだ」
「おおっ好みだったか!どちらだ?俺は元気な方だな」
「私は…」

師の視線の先には、目の間に山盛りにされた菓子を嫋やかな指先で突いている他夏の姿があった。
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