127柱目の人柱

ど三一

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学舎編 一

疑惑

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「おい、飛んでる鳥に気を取られるな。こっちだ、こっち」
「……▲◆●」

他夏は事あるごとに立ち止まった。ナジュや号左が至近距離で反応を確かめた時は無反応であったが、手を引かれて廊下を歩く現在は、視界で動くものに意識が向く傾向がある。陽の光が当たって視界の中でちらちらと舞う埃、風に揺れる装飾、木々のざわめき。不思議とナジュや号左の話す声に対しては興味を持たないようだ。意味の解らない単語を口ずさむ、他夏の冷たい手を軽く引く。他夏を気にせずにナジュの歩く速さに合わせて手を引くと、一、二回転びそうになった為、雑に扱うことも出来ずに複雑な心持ちで先を歩く。号左は後ろを振り返りながら二人の様子を伺っており、何に対しても反応の薄い他夏に対して、ナジュの表情や反応が少々引っ掛かっていた。

(この二人、比良坂殿のお気に入りで…それぞれ違う神に仕えている。いや、片方…ナジュの方は御手付きか…。金竜殿と双面忌福殿。この二方が対立しているとは聞いたことが無い。他夏の状態を私に報告したのは本当に体調の心配か、それとも神と成るには脆弱な柱であり、不適格であると印象付ける為の計略の一つか…。勘違いの可能性もあるが、他夏に対するナジュの視線や対応は初対面とか顔見知りのそれじゃないような気がするんだよなあ…。かといって競合を蹴落としてやろうって雰囲気でもないし…)

号左がナジュから感じ取ったのは怒りや戸惑いだった。競合との敵対心に由来するものとは違う気がして、号左は二人の関係性の真実は何かと頭を悩ませる。

(確か、双面殿が初めて御手付きを会合に帯同させたと風の噂で聞いたな。浮いた話は殆ど入ってきたことは無いから…早々配下や使用人に手を付ける方ではない。寵愛は深いのか…?余計な事を聞いて下手に機嫌を損ねると、彼の上が出しゃばってくるか…?どの神様候補も神との関係があるが、情を交わしているとなると特別には変わりない)

号左は、空座の競合であるナジュが、他夏の状態に関与しているのではないかと疑っていた。神様候補から師に対して危害を加えるのは、学舎での神様候補としての資格を失う可能性のある行為だ。師から神様候補に対しての危害は、それが指導と関係なく度を超すものであった場合に師の方が罰せられる。ならば、神様候補同士の危害はどうか。

「君達は元々の知り合いなのかな?」
「………知り合いって程でもないが、こいつは俺を覚えてるのかわからない」
(含みのある言い方だねえ…。あからさまに怪しまれる話し方をしてる自覚あるのかな?)

学舎案内の規則にはこうある。
“ある神様候補が、他の神様候補に対し、死を最大とする重大な損傷を与えたと、一目瞭然の証拠がある場合に、神様候補としての資格を剥奪する。”
その文言の意味するところ。

(ばれなきゃ何してもいい…って聞こえるもんなあ。今回の雷座なんか目玉中の目玉。血生臭い気配がしてくるよ。自分の力量を理解していない、井の中の蛙の今この時期が一番平和だ……後々各々の実力が露わになって、結託する連中が出てくるのは毎回恒例みたいだし)

実際は、 “学舎の風紀を乱す行為の禁止”という規則に近似であるという理由で、麒麟による強い申し立てで“他神様候補への攻撃の禁止”を規則とする案が出ている。また、今回の選定では麒麟が目を光らせている為に、重大な損傷の幅が広くなっているだろう。麒麟は公明正大、正々堂々とした競い合いを望む。闇討ち、謀略を賞賛する性格ではない。

(怪我を負わせなくても正気を失わせるっていうのは、麒麟殿からしたら重大な損傷だろう。私もそう思う。神様候補同士の危害があれば報告して欲しいって頼まれたけど……少し見極めてからの方がよさそうだ。麒麟殿は資格剥奪を躊躇しないだろうから)
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