127柱目の人柱

ど三一

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学舎編

担当の師は…?

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「あの身体のどこにあんな大量のそばが入るんだよ。もう食い意地とかいう話じゃなくなってたぞ…まったく」

昼餉を食べ終えたらすぐに飯処から立ち去るつもりであったナジュだが、丁度最後のひと啜りという所で雁尾のそばが到着した。一人では運べぬほどの大どんぶりに、汁より上に出ている程の大盛りそば。付け合せの漬物は、ナジュがそばを食べた器に盛られている。飯処中の視線を独り占めにした雁尾は、「やっぱり冷たい方が食べやすいんだよなぁ」と言いながら、箸で掴めるだけのそばをすくって啜り始めた。食べきれる筈がないとナジュは思っていたが、あれだけ大盛りのそばがそれ程時間が経過しない内に雁尾の口の中に消えていく。休みもせずに、口の中が空いたらそばを啜るという動作を繰り返している。凄い勢いで食べる様子を見た後にむかむかと胸やけしてきたナジュは、腹ごなしに学舎の中庭を散策していた。

「丁度いい腹具合だったのに、妙に胸のあたりがいっぱいな感じがする。前は腹いっぱい食った事なんて数える位だったから、慣れねえもんだな…。さて、学舎の掲示板と宿舎の看板に、それぞれの座の集合場所が書かれてるらしいが…」

学舎の掲示板は二カ所にある。一カ所目は正面の門から真っ直ぐ進んで、学舎に入ってすぐの廊下の壁にある。二カ所目は、庭に繋がる四方の出入り口のうちの北。ナジュは一番近い庭の北にある掲示板を腹ごなしがてら見に来たのだ。庭から学舎に入る階段を昇って学舎に入ると、扉の横にある掲示板を見つけた。近くには他の神様候補も集まって足を止めている事から、もう午後の場所が張り出されているのかもしれない。ナジュは人の間から掲示板を覗いた。

「おっ!もう発表されてるぞ」

白い紙には、雷座を筆頭に各座が集合する場所と担当する師の名前が記されていた。ナジュはおそらく自分の目指す座である空座の項目を探して一番下まで目を通した。

「空座は……学舎の大広間に続く廊下?他はどこどこの部屋だとか、大広間とかなのに…?廊下で待ってろってのか?担当の師は……ん?」

空座の担当の師の場所には太い筆で記した×が付けられていた。その下にはそれまで決定事項であった師の名前、“雁尾”が記されていた。

「うえっ!?ガンビサマが担当の師になる所だったのかよ!きっと気に入らない事があったら俺と他夏の尻を凍らせるつもりだったに違いない。違う師になりそうで良かった…」

しかし空座の担当の師が雁尾ではなくなったという事は、違う師が用意されている筈である。×印は付いているが、その代わりの師の名前は記されていない。紙のどこかに書いていないかとよく目を凝らして見ると、もう一カ所×印がついている場所があった。それは一番人気の座を得ようと凌ぎを削る者達を導く者。

「お?雷座の担当の所も×がついているな……元々の師は……ごう、ひだり?さ?」

ナジュが首を傾げている頃、師達が集まる一室では飯処から移動した麒麟が茂籠茶老に直談判した内容を師である号左ごうさに伝えていた。

「麒麟殿…私は雷座の担当であった筈ですが」
「茂籠茶老様に空座の二人の素行をお伝えし、雁尾殿では神様候補を正しき方に導けぬと進言した。ならば代わりの者は?と問われた茂籠茶老様に、私は号左殿が適任と思われると…」
「私は雷座のつもりだったのだけど…」
「安心なされよ号左殿。この麒麟も号左殿に御助力しよう。空座を目指す神様候補の二人…他夏、ナジュ。学舎宿舎の風紀を乱さぬか…号左殿も共に目を光らせていただきたく!」
「はあ…よりによって比良坂殿のお気に入りの二人……麒麟殿、せめて一言相談していただければ……」

号左は何度もため息を吐く。それを自信の欠如とみた麒麟は、熱い正義を胸に抱く同士として頑張って行こう!と力漲る応援を送った。
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