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学舎編
繋がる知人たち
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休憩時間はそれ程長くない。席から立ち上がる神様候補は一部で、大凡はそのまま着席して冊子を読み込んでいたり、周囲の者と話していたり、再開の時間が来るのを静かに待機していた。ナジュは大広間に残った内の一人で、紙片を手にしながら冊子を読んでいた。するとそこに見知った2人が近づいて来た。
「ナジュくーん!」
「他夏」
桃栗と雷蔵だった。桃栗はナジュを、雷蔵は他夏を目指して席を離れてやってきたのだった。どちらとも知り合いであるナジュは、桃栗を中心に雷蔵の方も気にしながら「おう」と言って手を挙げた。
「……ん?…ああ」
それを自分への挨拶だと思った雷蔵は、怪訝な顔をしながら僅かに手を挙げて見せた。ナジュと口喧嘩をした次の日であり、日付が変わってもまだその時の緊張の余韻が残っている為、普通に挨拶されるとどこか居心地の悪さがある。
「いや、お前に手を振ったんじゃない。桃栗にだ」
「っ!」
「あれ、この人とナジュくん知り合い?確か激励会で金竜様と話してた雷座の人だよね」
桃栗は隣にいる雷蔵を大きな瞳で見上げた。その瞳の奥では金竜との関係についてや何故ナジュと知り合いなのか考えていたが、それ以上に意識が向いていたのは雷蔵の容姿や性格、他夏と呼んだナジュの隣に座っている者との関係、想い人の有無である。
(背が高くて胸板が厚い、眉毛にきっと力が入って素敵かも。男男してないけど、しっかり男前な顔で…少しだけ翳がありそうな…。ナジュくんの隣の子に用があるみたいだけど、恋人に会いに来た様子には見えない…むむ、僕の色恋相手候補に入れておこう…)
「そうだが……やけに、じっと見てくるな…」
桃栗の熱視線にたじろぐ雷蔵の様子を見て、桃栗は咄嗟ににっこりと笑みを浮かべて品定めと下心を上手く隠した。
「うん!初めましての人だからね!僕は桃栗、ナジュくんの友人です!よろしくね!」
「あ、ああ……俺は雷蔵という。その髪色…雷座の区画に居なかったから、競合ではないよな?」
「違うよ~!僕はナジュくんとも雷蔵くんとも競合じゃないから安心して!敵対関係に無いから皆で助け合って行こう!仲良くしてね」
雷蔵が桃栗に促されて握手をしていると、今までぼんやりしていた他夏がふと手元にある見慣れぬ冊子を気にし始めた。先程部下達が配布していた際、何度声を掛けても夢見心地で他夏が受け取ろうとしない為、困った部下の様子を見かねたナジュが仕方なく他夏の膝の上に置いてやったのだ。ナジュは漸く目覚めたかと複雑そうに溜め息を吐いた。
「これ………何だろう………?」
「やっぱり聞いてなかったな。貸してみろ」
桃栗との挨拶を終えた雷蔵が他夏の持っている冊子から紙片を抜き取り他夏に持たせた。
「他夏の面倒を看に態々来たのか?甲斐甲斐しいな」
「うるせえ。ここじゃ世話係もいねえから、事情を知ってる俺が他夏を手伝ってんだ。……ほら、三回息を吹きかけろ。こう…ふう…って」
「ふうー……ふうー……ふうーー……」
紙片はじわじわと変化し始め、雷蔵だけでなくナジュと桃栗もその結果に興味があり静かに見届けていた。
「ナジュくーん!」
「他夏」
桃栗と雷蔵だった。桃栗はナジュを、雷蔵は他夏を目指して席を離れてやってきたのだった。どちらとも知り合いであるナジュは、桃栗を中心に雷蔵の方も気にしながら「おう」と言って手を挙げた。
「……ん?…ああ」
それを自分への挨拶だと思った雷蔵は、怪訝な顔をしながら僅かに手を挙げて見せた。ナジュと口喧嘩をした次の日であり、日付が変わってもまだその時の緊張の余韻が残っている為、普通に挨拶されるとどこか居心地の悪さがある。
「いや、お前に手を振ったんじゃない。桃栗にだ」
「っ!」
「あれ、この人とナジュくん知り合い?確か激励会で金竜様と話してた雷座の人だよね」
桃栗は隣にいる雷蔵を大きな瞳で見上げた。その瞳の奥では金竜との関係についてや何故ナジュと知り合いなのか考えていたが、それ以上に意識が向いていたのは雷蔵の容姿や性格、他夏と呼んだナジュの隣に座っている者との関係、想い人の有無である。
(背が高くて胸板が厚い、眉毛にきっと力が入って素敵かも。男男してないけど、しっかり男前な顔で…少しだけ翳がありそうな…。ナジュくんの隣の子に用があるみたいだけど、恋人に会いに来た様子には見えない…むむ、僕の色恋相手候補に入れておこう…)
「そうだが……やけに、じっと見てくるな…」
桃栗の熱視線にたじろぐ雷蔵の様子を見て、桃栗は咄嗟ににっこりと笑みを浮かべて品定めと下心を上手く隠した。
「うん!初めましての人だからね!僕は桃栗、ナジュくんの友人です!よろしくね!」
「あ、ああ……俺は雷蔵という。その髪色…雷座の区画に居なかったから、競合ではないよな?」
「違うよ~!僕はナジュくんとも雷蔵くんとも競合じゃないから安心して!敵対関係に無いから皆で助け合って行こう!仲良くしてね」
雷蔵が桃栗に促されて握手をしていると、今までぼんやりしていた他夏がふと手元にある見慣れぬ冊子を気にし始めた。先程部下達が配布していた際、何度声を掛けても夢見心地で他夏が受け取ろうとしない為、困った部下の様子を見かねたナジュが仕方なく他夏の膝の上に置いてやったのだ。ナジュは漸く目覚めたかと複雑そうに溜め息を吐いた。
「これ………何だろう………?」
「やっぱり聞いてなかったな。貸してみろ」
桃栗との挨拶を終えた雷蔵が他夏の持っている冊子から紙片を抜き取り他夏に持たせた。
「他夏の面倒を看に態々来たのか?甲斐甲斐しいな」
「うるせえ。ここじゃ世話係もいねえから、事情を知ってる俺が他夏を手伝ってんだ。……ほら、三回息を吹きかけろ。こう…ふう…って」
「ふうー……ふうー……ふうーー……」
紙片はじわじわと変化し始め、雷蔵だけでなくナジュと桃栗もその結果に興味があり静かに見届けていた。
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