127柱目の人柱

ど三一

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学舎編

他夏の変貌

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麒麟からもう下がっていいと許しを得た三人だったが、着ていた服や手拭いは全て湯殿と全室の籠の中にある。麒麟の部屋には身を隠す布、衣類は無い為、このままだと全裸で宿舎まで帰る事になる。その為、後生だからとナジュと雷蔵が拝み倒し、麒麟の術によって元いた湯船に転移させてもらった。しかし、転移した後に三人が出現したのは湯船の真上で、すぐさま真下の薬湯に勢いよく落下して水しぶきを上げた。

「ごぼぼぼ……っぷはあ!」
「ふう…手荒い許しだが、怒りが収まって良かった…」
「あれ……暑い……?」

他夏を起こして湯船に座らせた雷蔵は、薬湯のぬめりで顔に張り付く髪を後ろにかきあげて、共に窮地を脱したナジュを見る。雷蔵はその顔に見覚えがあった。会合の日に、同じく金竜の配下である同僚に、神様が執心する姫達を見物しに行こうと誘われて着いていった先の宴会場。その隣の部屋で他夏と交わり、成り行きで雷蔵とも交わったあの美しい男であると。雷蔵自身その事実に気が付いてからは、少々の気恥ずかしさがありこの話題を口にするのは気が引ける。しかし、ナジュが口にしていた胸飾りの件が気になってもいた。

「先程、その飾りがどうこう他夏に詰め寄っていたが、それ…お前の趣味で着けてるんじゃないのか?」
「んなわけねえだろ!こいつに着けられたんだよ!誰がこんな悪趣味な…」
「…変わった嗜好の変態じゃなかったのか」
「お前もぶん殴られたいのか?」

ナジュが拳を振り上げた所で他夏が一人湯船から上がり、ふらふらと前室の方に歩いて行く。他夏に話のあるナジュは「待て!」と言って他夏の後を追いかける。雷蔵も、ナジュと他夏を2人にしておけないと急いで湯船から上がった。再び全裸で掴みかかると、他夏の錯乱によって言い逃れできない状況に陥る可能性があるので、取り敢えず三人着替えて湯殿から出る事にした。ナジュは着物を身に着けている最中、甲斐甲斐しく他夏の世話をする雷蔵とぼんやりとした他夏、二人の様子を横目で見ていた。雷蔵を呼ぶ名前はその都度違っており、雰囲気が変わると着替えを中断させて再び大人しくなるのを待っている。

(錯乱してるってのは本当みたいだな……あいつ…俺と会った時はずっと一貫して変態だった気がするが……何があったんだ?)

幾ら他夏に変化が生じていようと、この忌々しい胸飾りはこのままにしておけない。ナジュはそう雷蔵に伝えると、まずはこの場を移動して雷蔵の部屋で話し合うという流れになった。

「主様が同じだから俺と他夏は同部屋なんだ。お前の要望に他夏が応えられるかわからないが、他夏がこんなになっちまった事情も、話せる範囲で話す。……前はこんなぼんやりした奴じゃなかったし、会ったばっかの相手と懇ろになるような軽薄な事はしなかった。頭が良くて優しい、いい奴だった。」

雷蔵が最後に寂しそうに呟いた言葉を、ナジュは聞こえない振りをして「行くぞ」とぶっきらぼうに言った。
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