127柱目の人柱

ど三一

文字の大きさ
上 下
181 / 353
学舎編

怒りの麒麟

しおりを挟む
三人は麒麟の前に正座させられ、長々と説教を受けていた。せめて何かしら身体を隠す物が欲しいとナジュが言うと、麒麟は「我も全裸である、気にするな」と答えて取り合ってくれなかった。ナジュは両手で胸を隠し、雷蔵は前を隠す。他夏はぼんやりと麒麟を見上げ、喧しく人語を操る馬の幻影を見ていた。

「よいか、神様候補同士の性行為について学舎は基本的に関与しないが、宿舎でも公共の場、共有部分での性行為は推奨しない。我が管理する神聖な湯殿で、それも三人で乳繰り合う等言語道断!衝動的行動に誘うその陰茎を我が踏みつぶしてやろうか…!」

麒麟は前足で素早く蹴りぬくような仕草を見せて、態度次第ではそれも選択肢の一つであると三人に分からせると、ナジュと雷蔵は顔を青くして身を縮こませる。

「偶々こいつ、他夏が俺のを握ってきただけで別に変なことする心算無かったんだって!」
「そうだ、他夏はいつも錯乱ぎみで…幻覚が俺達の…アレを…そう、埋まってる大根とでも思ったんじゃないかと…」
「何だいつも錯乱気味とは!それでよくこの学舎の神様候補となれたな…!この者の推薦者は誰か!」
「…金竜様です。他夏と、俺の主様でもあります」
「金……竜…殿…」

その名を聞いた麒麟は、二角に雷を纏わせて毛皮を逆立てた。他の獣と同じように敵意や警戒を表すその姿に、ナジュは「麒麟、怒ってないか…?」と雷蔵にひっそりと聞いた。雷蔵は金竜の素行を思い出し、(麒麟に何かしたのか…主様…)と普段のあれやこれを雷蔵の知らぬ麒麟と金竜の関わりの空白に当てはめてみた。どれもこれもしっくりときて、湯殿での冤罪の他に、主様の行いの咎めを受ける事になるかもしれないと、小さくため息を吐いた。

「金竜殿については、我の耳にも届いている。昨夜の激励会に乱入したばかりか、一人の神様候補に御業を用いて攻撃、神様候補辞退に追い込むという凶行。連行された後も術で脱出して雁尾殿の催しを天井から見ていたり、我が宝…時の為政者より捧げられし究極にして至高の寝具の上で転がり回るという愚行!許すべからず!」
「寝床…?」
「主等の背後を振り返って見よ!」

麒麟の怒りがこちらに向かないように大人しく従うナジュと雷蔵。背後にあるのは高級そうな座布団。これの事だろう。

(主様…麒麟の寝床で転がり回ったのか……)
「我が蹄の餌食にせん!と踏みつけたが、金竜殿は瞬きの内に学舎から脱出した。口惜しいとはこの事…!我が蹄に宿った憤怒は未だ燻ったまま、放出する場を探している。因って主等への罰はこの蹄の…」
「待ってくれ!本当に悪かったよ、俺達湯殿で…イチモツを触り合っちゃ駄目なんて知らなくて!学舎案内に書いてあったなら絶対にしなかった!!今回は許してくれ、この通り」
「ぐうっ」
「あれ…視界が……暗く…」

ナジュは自身の頭を下げながら、雷蔵と他夏の後頭部を掴んで床に伏せた。雷蔵は額を冷たい床にぶつけてうめき声を出した。

「…一理ある。今度からは学舎案内に湯殿での規則を記しておこう。それはそれとして不埒な行為を行った者は必罰である。主等、尻を向けよ」
「え」

ナジュ達は、尻を麒麟に踏みつけられるという罰を受けた。それぞれの尻には麒麟の蹄の証が残り、それが消えぬうちにまた行為に及んだならば、憤怒の蹄が尻を穿つと約束させられた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

ある少年の体調不良について

雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。 BLもしくはブロマンス小説。 体調不良描写があります。

短編集

田原摩耶
BL
地雷ない人向け

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

男子寮のベットの軋む音

なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。 そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。 ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。 女子禁制の禁断の場所。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

処理中です...