127柱目の人柱

ど三一

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学舎編

丹雀の金言

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陽翳横丁を出た三人は、軽く町を探索しながら気になった場所に立ち寄り、見聞きした店や物について話し合っていた。

「綺麗だったね、硝子細工!この町は欲しい物が多すぎて困っちゃうよ。屋敷で奉公していた時、此処に来ていたら金子がまったく貯まらなかっただろうね。財布の紐は固く縛っておかなきゃ…!」
「とは言いつつ桃栗、香屋で香炉二つと香を一つすぐに買ってしまっただろう」
「あれはいいの!ずっと使える物だし、お土産用だし、ちゃあんと吟味して買ったから!」
「なあ、陽翳横丁で見たあの絢爛な建物何だったんだ?柵に男女がへばりついて必死に手を伸ばしたり声を掛けたりしていたが…」
「あれは妓楼!綺麗な女の人とか格好いい男の人がもてなしてくれる場所で、何回か通って金子を落とさないといけないの」
「金子を払ってもてなして貰うって…美味い飯が出るのか?」
「う~ん…ご飯は不味くはないと思うけれど、わいわい宴会をして…目当ての人の部屋に上がって気持ちのい…」

詳しく説明しようとした桃栗を咳払いで止め、代わりに丹雀が続きを話す。

「ゴホン!兎に角金子が無ければ話にならない、という場所だ。妓楼に嵌まって身を滅ぼす者は決して珍しくない。入れ揚げ過ぎて無一文になった者、借金を抱えて落ちぶれた者……己の国を潰した御大尽もいる。だから遊ぶ時は他人の金子で遊べ!」
「た、他人の金子で…!?」
「うわあ~丹雀くん悪どいねえ~」

桃栗が大袈裟に袖で口元を覆い、ナジュの方に身体を寄せるが、丹雀は特に気にした風でなくその金言を話した理由について話す。

「主様が常日頃、皆に何度も言い聞かせた事だ。始めから他人の金子以外では遊びに行かん!と決めていれば誘われたとしても断れる上、もし連れて行かれるとなったら奢りである事を念押しする!……というのが、主様が妓楼で楽しむ時の手らしい。言っておくが、私の考えではないからな」
「丹雀くんの主様って誰に集ってるの?神様ってそもそも一番上だから集る相手はそう居ないんじゃ」
「主様の屋敷の、比較的近くにいらっしゃる知り合いの神様だ。妓楼に入り浸り、中々屋敷にも帰ってこないらしい。偶に大宴会を開きたいという時、我が主様にお声が掛かる。金子はその神様が支払って下さるので、これ見よがしに配下達を連れて…」
「いくらかかるんだよ……」
「ざっと屋敷が建つくらいだ。勿論庶民の屋敷ではない、神様の屋敷だ」

ナジュには想像もつかなかった。主様から貰っていた金子の価値も知らずに屋敷から出て、道中に物の値段、相場をなんとなく知ったばかりだ。妓楼で一晩遊ぶ為に必要な金子を聞き、自分がとびきり高い心付けを貰っていたとだけ理解した。宿舎に持参した金子入れは呪いが掛けられており、ナジュ以外が開ける事は出来ず、ナジュが置いた場所から誰も移動出来ないようになっている。あの中に入っている金子で屋敷が建つのだろうか?と考えていると、遠くから宿舎の鐘の音が聞こえた。町内を見廻っている内、もう昼時になっていた。

「昼餉はどうしようか」
「持ち合わせがないと言っていたから、宿舎まで戻ってもいいぞ」
「町で食うなら俺の事は気にするな。宿舎の昼餉に知らない料理が出るから気になってたんだ。まだ町を見るんだろ?」

ナジュの申し出に少し迷う様子を見せた二人だったが、折角なので町の飯屋で食べる事にした。桃栗と丹雀と別れたナジュは、飯の時間に間に合うように駆け足で宿舎の方に向かった。
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