127柱目の人柱

ど三一

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学舎編

学舎の外へ

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久しぶりに綺麗になった寝床で朝寝をするから帰れと雁尾に言われた三人は、服に染みついた臭いを互いに確認しながら学舎の外へ出た。少し前は静かであった学舎の敷地は、朝餉の時間が終わり、他の神様候補達もナジュ達と同じ目的なのか、敷地を散策する者や、敷地の外へ続く門を出入りしているのが見える。昨日初めて学舎に足を踏み入れた時のように、通行に関しての可否を判断する門番の姿はない。学舎に入って来る者の中には、支給された服とは違う装いの者が居て、ナジュは首を傾げた。

「学舎の外の奴も自由に出入りできるのか?中を見学しに来ている…?」
「いや、あれは学舎の関係者だ。案内の中に、師や神様候補、学舎で働く人々しか通さない呪いが、あの門には掛けられているらしい。敷地に無関係者が入ろうとすれば、途端に門が閉まり、呪いを掛けた師が発動を察知するみたいだ」
「じゃあ宿舎の中に恋人を連れ込むことは出来ないと…覚えておこう」

神妙に頷く桃栗に、丹雀が呆れた声色で咎める。

「お前…先程勉学に励むと誓い合ったばかりだろう……」
「勉強が疎かにならない位に楽しめればいいの!それより僕達も町に行ってみようよ!」

ナジュ達は町へと続く門をくぐり、店が軒を連ねる周りの景色を見ながら神様候補達で賑わう方へ歩いて行く。

「わあ、結構お店とか沢山あるんだねえ!土産物に食事処に呉服屋!あっ!あそこから白い煙が出てる!湯屋もあるんだ」
「宿屋も点在しているな…学舎が開かれる時期はそれほど長くない筈だが、これほど賑わっているとは」
「屋敷からの道中でも発展していて驚いたが…ここはさらに人も見世も多いな」

物珍しさに忙しく左右を見渡しているナジュは、ふと目についた見世の看板を読んだ。

「出合茶屋…?稲葉の言ってた甘味処って奴か」
「あれ?ナジュくん知らない?連れ込み宿だよ」
「連れ込み宿?」

丹雀は本当の知らないのかという目でナジュを見るが、本人はしらばっくれている様子はなく、単純に疑問を持っている顔である。

「連れ込み宿とか出合茶屋ってなんだ?聞いた事ないぞ」
「子ども以外で知らない人も珍しいね。これらはね、逢瀬の為の宿だよ。ほら、入り口が二カ所に分かれているでしょ?あっちが男、こっちが女の出入り口で、店の主人以外には相手を知られず中で待ち合わせできるんだ。同性でも時間差で入ればいいし、浮気にはもってこいだね!」
「……逢瀬っていえば、そういう事だよな。そんな場所があるのか」
「あるある!ふふ…あの中では今頃組んず解れつ、肉と肉の衝突が…」
「桃栗!朝から生々しい事を往来で話すな!」

丹雀に叱られた桃栗は悪びれた様子無く、軽く笑って流した。ナジュは己が生きていた時代の後に、随分新たな物が生まれたようだと腕を組んで感心していた。

「俺の頃は、家か納屋か外かしかなかったからな……こんな町中に情交の為の場所がなぁ……これほど栄えた場所だから、必要だったんだろう…成程な…」
「ち、ちょっと待て、外!?」
「ナジュくんは野性的な時代に生きてたんだね!」
「ああ。昔な?山菜を採りに森へ行くと、近くの林から複数の獣みたいな声が聞こえたもんで、仲間を呼んで獣狩りをしに行ったら…」

ナジュが話す逢瀬事情を嬉々として聞いている桃栗。二人の仲間だと思われないように距離を置く丹雀であった。
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