127柱目の人柱

ど三一

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学舎編

学ぶべき事

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それから雁尾は掃除の対価にもう少しだけ、と言ってこれまであった座を巡る争いについて話す。

「そもそもね。座に就きたいのなら今すぐ座している神の居所を突き止めて、倒してしまえばいい話なんだよ本当は。神様候補なんて面倒な手順を踏まずに、殺して奪える物なんだわ。なら何故この学舎が、神様候補という制度があるのかっていう事なんだけれど」

立ち上がった雁尾が書斎に向かうと、ナジュ達の掃除によって床に散乱していた書物が本来の場所に綺麗に並んでいる。その整頓された本棚の中から一冊の書物を抜き取り、その表紙を三人に見せた。

「対呪法要…つな……?何だこれ」
対呪法要綱たいじゅほうようこうだ。呪いに掛けられた時の解呪の方法が記載されている。あくまで一般的な解呪本より少し種類が多いくらいだが」
「よく知っているね、羽織君。誰かに呪いを掛けられた時の対処、それと事前に呪いから身を守る方法なんかも載っているよ。掛ける方はこっち」

対呪法要綱の後ろからもう一冊本を出し、呪法大全と記された表紙を見せた。

「ええ…学舎で呪いを学ぶの?」
「まあ…必要だと思うよ。約一年神様やってる身としては」
「見せてくれ」

ナジュは雁尾から呪法大全を受け取り、表紙を捲って目次を読んだ。相手にどのような効果を齎したいか、呪いの種類によって大まかに分けられており、ナジュには読めない字もあるが、書物の後方には”死”の文字がありそれは読めた。試に”死”の呪いについての記載がある場所を開いてさらっと読んでいると、呪物を使用した呪法が記載されており、その例には人型や生物の身体の一部、ナジュが実際に使用した鏡も含まれていた。

(ナジュくん…やけに熱心に死の呪法の所読んでる。あんまり怖そうな感じじゃないのに……意外……目の前の雁尾この人に散々こき使われたから、腹いせに呪い殺そうって思ってるのかな……頑張れ……いざという時は僕も手を貸すよ……)
(神様である雁尾様が必要と仰られる理由……はて……)
(この手下一、ほんの少~し嫌な気配がするんだよね。本人の人格的にはちょっと馬鹿なだけで悪人ではなさそうだけれど。手下二も呪いの気配がするな……でもその場所に何の呪いを……?根絶の呪い…?……羽織君はまっさらだ)
「なあ」

書物を読んでいたナジュが言葉を発すると、それぞれ違う考え事をしていた三人が顔を上げる。

「俺、普通の人間なんだが、呪物を使う以外で呪いって掛けられるモンなのか?」
「掛ける方に代償がある呪法は、何の力が無くても掛けられる可能性が高いね。まあ、掛けた相手によっちゃあ直ぐに解呪されるか呪いを返されるだろう。なに、君呪いを掛けたいほど恨んでる相手が居るの?」
「……居る」
(絶対雁尾この人じゃん!!)
(雁尾様だろうな…しかし殺害したい程とは……もしや以前からの知り合いで、余程恨み辛みが積もっているのか…)
(もしかしてこの三人……一緒に居るけれど実は互いに嫌い合っている?やだなあ…手下がギスギスしてるの)

四人はそれぞれナジュが呪いを掛けようと考えている相手を予想し沈黙する。桃栗、雁尾、丹雀が互いの動向を窺う中、重々しい空気に耐えかねたのは丹雀だった。ナジュから呪法大全を取り上げて自分の膝に置くと、雁尾に学舎と神様候補の意味を説明して欲しいと頼んだ。
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