127柱目の人柱

ど三一

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学舎編

静寂の学舎

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わ「学舎開いてるかなぁ」
「さっき知らせ貼りに来た人がいるから、誰かしらいるんじゃないか?」
「開いていてもガンビサマが居ないと事情も聞けないな……というか話していいかわからない事を話してくれるのか?あの人」
「学舎の最高責任者は茂籠茶老様だが、神様だから他の師達より権限があってもおかしくはない。ある程度の裁量はありそうだが…」

三人が学舎の正面に辿り着くと、初日には解放されていた扉は、現在は閉められていた。辺りに神様候補や学舎の関係者の姿も無く、休講日は誰の出入りも無いのかもしれない、そう思ってあまり期待せずナジュは扉を押してみた。するとギイと重々しい音を立てて片方の扉が開いた。後ろを振り返り、二人に「開いてるみたいだ」と伝えると、人一人通行できる位に扉同士の隙間を確保し、三人縦に並んで中に入った。ほとんどの神様候補は宿舎に居る為、学舎の中は静寂に包まれ、木造特有の匂いが強く香る。

「しいんとしてるね。ちょっと喋っただけで響いてる感じ……荘厳」
「先程の知らせを貼りに来た者以外、誰も居ないのではないか?」

丹雀は周囲を警戒しながら静かに扉を閉めた。来同士が擦れあう音が静かに奥まで響き、呑み込まれるように消えた。ナジュは丹雀の言うとおり、人の気配がしない為不在なのかもしれないと思ったが、そこでふと疑問が浮かんだ。神様候補に学びを授ける為に召集された師達ならば…と考えて、あっと声を出した。

「どうしたのナジュくん、厠?」
「それは大丈夫だ。…そういえば、師達はどこに泊まってるんだ?俺達は宿舎が用意されているが、そこで師達と出くわさなかったよな」
「厨房担当や案内の者は居たが、師達を一度も見ていないな。休講日や講義が終わる夜になると学舎の外で宿泊しているのだろうか。隣の町に宿はあるが、長期間そこで世話になるとかなりの金子が掛かる…」
「なら宿舎で一緒に泊まればいいけれど、探検した限りでは余分な部屋無かったよね」
「じゃあ、師達の宿舎って…」
「あれ~?手下二人に、見知らぬ羽織お化けが一緒になってどうしたんだい?今日は講義ないよ、間抜けだねえ」

三人の目の前を、氷菓を食しながら通り過ぎようとする雁尾の姿があった。三人があっ!と声を揃えて驚いても、雁尾は気にせず廊下を右から左へ通り過ぎていく。

「お、御待ちを、雁尾様!昨夜の氷像、大変素晴らしく…」
「ガンビサマに聞きたい事があって来たんだよ俺達!」

丹雀が昨夜の催しの感動を伝えようとしたのに被せる形でナジュは雁尾を呼び止める。桃栗も雁尾に駆け寄って袖を引いた。

「ナジュくん、捕まえたよ!」
「なあ、ちょっとだけ時間くれよ!」
「なんだいなんだい。この美味しい氷菓はあげないよ」
「朝飯食ったばかりだから要らねえよ!」

二人は渋る雁尾の着物をしっかりと掴んで、ナジュの同室の行方を尋ねた。

「なあ、春原が雷座を辞退したっていう理由は何なんだ?そいつ俺の同室の奴で、昨日今日と帰ってなかったんだよ」

雁尾は一度宙を見て考えた後、痛ましいような苦しいような顔をして口を開いた。

「嫌われてるとかじゃ…なくて…?」
「一度も会った事ねえよ!」
「冗談だよ。今日は休講日なんだけど……まあいいや。座る椅子位御馳走するから着いておいで、手下と羽織。場所を移動しなきゃいけない程長い話じゃないけれど、労働力は欲しい所だしね」
「この人、また僕達に何かさせようとしてる…」

雁尾は三人を連れて学舎の奥へと進んでいく。静かな建物内は四人の話声で一気に騒がしくなり、学舎に残っていた者達は休講日にも関わらず響くその声を不思議がっていた。
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