127柱目の人柱

ど三一

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学舎編

飯処にて

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階段を下りて、その横の通路の奥に進むと、ガヤガヤとした声が聞こえてくる。飯処の入り口では神様候補達が列をなしており、鐘が鳴ってからそれ程間を置かずに部屋を出たが既にかなり集まっているようだ。ナジュも列の最後尾に並んで飯処の中を覗く。飯処に入ると直ぐに食事を乗せた盆を手渡され、空いた席に自由に座って食べている。中央の机には飲み物も用意され、神様候補が机の空いた部分に盆を置いて、湯呑に茶を注いでいる。

「ねえ!白湯がいい?それともあったかいお茶?」
「桃栗が居る」

改造された支給服を着て髪を後ろで一本に縛った桃栗が、背後に向かって叫んでいた。一体誰にとそれらしい者を探してみるが、元々目立つ桃栗が声を張り上げた事でさらに注目を浴びており、どの神様候補に話しているのかわからない。

「冷たいお茶?そんな顔色しておいて冷たいのはお腹冷えるって!あったかいのも持っていくからね!そっち飲んでから冷たいの飲みなよっ」
「結構世話焼きなんだな、あいつ……。昨日の皿洗いの時も、他の場所気にかけてたもんな…」

飯処の風景を観察していると、とうとう入り口に着いた。配膳係の者がお盆をナジュに手渡す。今日の朝餉は味噌汁に白飯、漬物、焼き魚、青菜の和物、根菜の煮物だった。食事は湯気を立てていて、ご飯も味噌汁もよそったばかりなのだろう。炊き立て特有の新鮮な甘い香りが食欲を掻き立てる。ナジュは係礼を言って去ろうと顔を上げると、そこに居たのは昨日ナジュに拳骨を喰らわせた先輩だった。

「ありがと………あ!!」
「どうも。それじゃ次の方~」

先輩は気のない返事を返すと、よそう係からご飯と味噌汁を受け取って盆に置く。ナジュの事など大勢の神様候補の一人としか認識していないようだ。

(こいつ…昨日あれだけコキ使っておいて……)

そこに留まっていては渋滞が発生してしまう為、中央で飲み物を取ってから空いた席を探した。別にどこだって良いのだが、一通り見た限り完全に空いた机は無い。目星を付けたのは三席。一つは桃栗の席で、既に見知らぬ神様候補が居て桃栗と何やら話している様子だ。二つ目は壁に向かって食事をする席。静かに食事をしたい時はいいだろう。三つ目は、空いているのかもわからない一人の神様候補が座っている席。皆同様の食事内容の筈が、その神様候補だけやけに豪華である。机に布を広げ、その上に専用の給仕が料理の盛り付けられた皿を置いている。周りの神様候補は羨ましそうに食事を盗み見たり、怪訝そうに様子を見ている。

(あの神様候補……腕組んで足組んでふんぞりかえってる。あれを自前で用意したのか?というか御付きとは門の所で別れるって聞いたが、連れ込んでもいいのか?)

ナジュは首を傾げながらその席の横を通り過ぎようとすると、神様候補と給仕の会話が聞こえて来た。

唐梳からすき様、今朝のお飲み物は如何いたしましょう」
「菊酒」
「かしこまりました」
(酒!?朝から…!)

給仕は盃を神様候補に差し出す。透明な酒の上に花弁を数枚落とすと、神様候補は一気に煽って深く息を吐いた。ナジュも周囲も驚きでその神様候補から目を離せない。視線を集めている事は承知で、神様候補は給仕にもう一杯を要求したのだった。
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