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学舎編
学舎の師達
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焦げた神様候補が運び出されて少しした後、凛とした風情のすっきりした顔立ちの男が大広間に入ってきた。その男は神様候補達を見渡して、あらかた揃っていると確認し声を張り上げる。
「これより、この学舎にて諸君らに学びを授ける師達がいらっしゃる!皆、身嗜みを整えて迎えるように!」
「いよいよだねナジュくん!ああ~どんな師達なんだろう……美男だといいなあ……神様候補同士で恋愛もいいけど、よく考えたら師もありだよねっ」
「それより……身嗜みって…これで大丈夫か…?」
「うん!自信持って、格好いいよ!」
師達の入室を知らせる銅鑼が鳴り、学舎の最高権力者を先頭に続々とその姿を見せる。それぞれが異なる着物を身に纏い、中には奇抜な装いをした師達もいて、神様候補達は興味深そうに一人ひとりを見定めている。ナジュは”師”というものを最近教えて貰った為、まだよく理解していないが、取り敢えず物知りで偉い人と覚えておけばいいと股右衛門に言われている。
「あんな変な格好してても、集落の古老みたいな知恵者って事か……俺は誰に教えを乞うんだろう…」
「あっナジュくん、あの方は知ってるよ!先頭の方!渋いおじちゃん!」
「誰なんだ?」
「あの方は”読座”の神様で、茂籠茶老様っ!うちの主様と仲良しで、神様候補の選考が無い期間はよく碁を打ちに御殿に来るんだ!落ち着いた素敵なおじちゃんだよ!」
「神様…結構普通なんだな」
ナジュは双面忌福の君、主様を思い浮かべた。普段から白布で顔を隠し、声を発さず、異形の瞳を爛々と輝かせていたその姿は、一目で人と異なる存在だとわかる。しかし先頭を歩く茂籠茶老は一見して得意な面は見られない。
「ナジュくんのとこの主様はどなた?」
「えっと…双面忌福の君……って呼ばれてる」
「双面……えっ…じゃあナジュくんって……」
桃栗が何か言おうとした時、突如大広間がざわついた。何事かと神様候補達の視線の先を見ると、そこに居たのは世にも稀な伝説上の生物が居た。
「き、麒麟だ!」
「噂には聞いていたが、まさか目にすることが出来るとは…ありがたや」
「あれも師なのか…?」
神様候補の選定では恒例となりつつある、初回挨拶の場でのざわめきに、麒麟の姿をした師はふぅと溜め息を吐いた。すると後ろを歩いていた他の師が、その心中を慮って声をかける。
「此度もかように注目されて…大変にございますね麒麟殿」
「茂籠茶老様の方針であるからな…致し方なし」
「何故人型に変化した姿での挨拶としないのでしょうかね?」
「……これより過酷な競合に身を置くことになる候補者達に、吉兆の証であるこの麒麟の姿で現れる事で最後まで望みを捨てずに座を目指して欲しい、と仰られていた」
「おや、左様でしたか。私はてっきり茂籠茶老様が格好つける為かと思っていました。後ろに伝説の麒麟を従えて登場…!というのは、いつの時代の為政者も求めるものです」
「まさか、茂籠茶老様に限ってそのような事は…」
麒麟はその可能性を考えて思い悩んでしまった。後ろの者はその様子を見てクスクスと笑い、いつ冗談だと打ち明けようか考えていた。
「これより、この学舎にて諸君らに学びを授ける師達がいらっしゃる!皆、身嗜みを整えて迎えるように!」
「いよいよだねナジュくん!ああ~どんな師達なんだろう……美男だといいなあ……神様候補同士で恋愛もいいけど、よく考えたら師もありだよねっ」
「それより……身嗜みって…これで大丈夫か…?」
「うん!自信持って、格好いいよ!」
師達の入室を知らせる銅鑼が鳴り、学舎の最高権力者を先頭に続々とその姿を見せる。それぞれが異なる着物を身に纏い、中には奇抜な装いをした師達もいて、神様候補達は興味深そうに一人ひとりを見定めている。ナジュは”師”というものを最近教えて貰った為、まだよく理解していないが、取り敢えず物知りで偉い人と覚えておけばいいと股右衛門に言われている。
「あんな変な格好してても、集落の古老みたいな知恵者って事か……俺は誰に教えを乞うんだろう…」
「あっナジュくん、あの方は知ってるよ!先頭の方!渋いおじちゃん!」
「誰なんだ?」
「あの方は”読座”の神様で、茂籠茶老様っ!うちの主様と仲良しで、神様候補の選考が無い期間はよく碁を打ちに御殿に来るんだ!落ち着いた素敵なおじちゃんだよ!」
「神様…結構普通なんだな」
ナジュは双面忌福の君、主様を思い浮かべた。普段から白布で顔を隠し、声を発さず、異形の瞳を爛々と輝かせていたその姿は、一目で人と異なる存在だとわかる。しかし先頭を歩く茂籠茶老は一見して得意な面は見られない。
「ナジュくんのとこの主様はどなた?」
「えっと…双面忌福の君……って呼ばれてる」
「双面……えっ…じゃあナジュくんって……」
桃栗が何か言おうとした時、突如大広間がざわついた。何事かと神様候補達の視線の先を見ると、そこに居たのは世にも稀な伝説上の生物が居た。
「き、麒麟だ!」
「噂には聞いていたが、まさか目にすることが出来るとは…ありがたや」
「あれも師なのか…?」
神様候補の選定では恒例となりつつある、初回挨拶の場でのざわめきに、麒麟の姿をした師はふぅと溜め息を吐いた。すると後ろを歩いていた他の師が、その心中を慮って声をかける。
「此度もかように注目されて…大変にございますね麒麟殿」
「茂籠茶老様の方針であるからな…致し方なし」
「何故人型に変化した姿での挨拶としないのでしょうかね?」
「……これより過酷な競合に身を置くことになる候補者達に、吉兆の証であるこの麒麟の姿で現れる事で最後まで望みを捨てずに座を目指して欲しい、と仰られていた」
「おや、左様でしたか。私はてっきり茂籠茶老様が格好つける為かと思っていました。後ろに伝説の麒麟を従えて登場…!というのは、いつの時代の為政者も求めるものです」
「まさか、茂籠茶老様に限ってそのような事は…」
麒麟はその可能性を考えて思い悩んでしまった。後ろの者はその様子を見てクスクスと笑い、いつ冗談だと打ち明けようか考えていた。
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