127柱目の人柱

ど三一

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学舎編

ふにゅ

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色っぽく微笑む桃栗が欲望がチラつきだしたナジュの手を取って、そっと己の下腹部に誘う。

「……」

ふにゅ。文字にすればそんな感触の、ナジュもよく知る存在がそこにあった。チラチラと燻っていた欲望の火種は、水を掛けられたかのようにしょんぼりと萎んでいく。桃栗は無表情になったナジュに悪戯っぽく笑って見せて、掌を男の部分にしっかりと押し付けて己の性別を教えてやる。

「ナジュくん今、になっちゃう所だったでしょ?ふふっ!こんな可愛らしい僕も脱いだら男だから、もし僕とそういう事になった時の為に、余計な期待を持たないようにちゃあんと認識してもらわないとね!」
「ああ……十分わかったよ……」
「本当~?なんなら見てみる?それとも直接触る?」

学舎では神様に成る為の勉強が最優先、色恋にかまけている暇はない。ここでは最後まで気を抜いてはいけないという水上の言葉も胸に残っている。しかし、愛らしい桃栗の誘惑にほんの少し期待し、それが一気に男という現実に引き戻されてしまい、欲望に傾いた情けなさでナジュは萎びた表情になり肩を落とした。からかっているような桃栗の提案に力なく首を振り、男の部分から手を離した。

「そうそう、ナジュくん。もうすぐ挨拶が始まりそうな雰囲気なんだけど、この席僕らしか集まってないよ?あと三人分席が用意されてるみたいなんだけど…」
「…そういえばそうだな。あと三人…一人は俺の隣の他夏って奴で、あと二人は…」
「僕の隣は柳元りゅうげんって書いてあるよ。もう一人が…ちょっと待ってて、見てくる」

桃栗は立ち上がってもう一つの席の前にある名札を見に行った。

「こっちはね……ん?」
「どうした?」
「えっと、名前書いてなくてね、特別席って書いてあるよー!」
「特別…候補以外の奴でも来るのか?」
「うーん、よくわからないけど…少なくとも僕達みたいな立場じゃなさそうだね。ちょっと楽しみ」

桃栗が元の席に戻った時、大広間の扉が閉められた。ナジュ達は来ない神様候補達を気にしながら他の席の様子を伺う。

「僕達の席くらいだね、こんなに人居ないの」
「変に目立ってる気がするな…」

ナジュと桃栗二人だけの席を気にしている神様候補はちらほらといる。自身の目指す座の競合相手を確かめておくという意味もあるが、単に物珍しさや好奇心で視線を送る者もいた。ナジュは何処か肩身狭そうに、視線が視界に入らないよう桃栗の方に身体を向けた。反対に桃栗は目が合った神様候補に愛想よく手を振っている。

「ジロジロ見られて嫌じゃないのか?」
「僕目立つの好きだよ!注目されるの嬉しい!良い意味でも悪い意味でも、他人の注目を集める人が神様って感じがするしね!僕的には、みんなに慕われる可愛い神様に成りたいなぁって!ナジュくんは?」
「……俺が神様に成るのは手段みたいなものだから、どんなって聞かれると困るな」
「ナジュくん訳あり?」

桃栗がその可愛らしい瞳を開閉させて疑問を表す。彼は詳しい事情を聞いてもよいのか考えていると、突如二人以外の声がした。

「俺も目立ちたがり屋だな」
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