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学舎編
部屋に着物に
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股右衛門に担がれて移動しているナジュは、悪い意味で周囲の視線を集めていた。先を越されて睨む者や、迷惑そうに顔を顰める者、好色そうに見定めている者等、知らぬうちに顔が知れていく。股右衛門が飛び上がる度ナジュの着物がふわりと舞い上がり、その中の張りと弾力のある若い美しい肌がひらひらと見え隠れして、一部の者を釘付けにしていた。
「なあっ股右衛門!」
「何だ?しゃべると舌噛んじまうぞ!」
「気を付ける。それより、この立派な建物…お前見た事あるか?住んでた荒屋とも、天界に来てからの屋敷とも様相が大分違う……」
「て事は、俺らが生きた時代より後なんじゃねぇか?俺の頃は主様の屋敷に似た建物は沢山あったが、こんな内装は見た事ねぇ」
階段には手すりが付き、内側の柵のような木の棒が一階から上までずっと続いている。露階段の踊り場に面したガラス窓も二人にとって初めて見るものである。外から光を取り入れられる為、踊り場はとても明るい。窓枠の飾りも嗜好が凝らさせていて、ナジュは空いた時間に近くでじっくり見てみたいと思った。
「どのくらい経過したら、こんなに変わるんだろうな…。生活の変遷ってのを見られたら面白そうだ」
「ははっそんな事が出来るんだったら、俺ァ話に聞く伝説の美女美男にお目に掛かりてぇな!国を傾ける別嬪、誰も彼もを手のひらで転がす妖艶……たまんねえ!」
ナジュはまたいつものが始まったと呆れていた。
「さて!ここだな」
股右衛門はナジュを降ろして片手に荷物を抱える。東棟三階の一番奥の部屋の前に到着した。部屋の出入り口は引き戸でなく取手のついた扉で、それにもナジュ達は驚いた。二人は三つ隣の部屋に配置された神様候補が、取手を回して扉を開ける姿をチラと見て作法を学ぶ。
「二、三回戸を叩いてたな」
「中に誰かいねぇか確認してんだろ。厠と同じだ」
「汚い話を…」
ナジュは同様に三度扉を叩いて中からの返事を待つ。どうやら中には誰もいないようだ。ナジュは取手を捻って扉を開けた。
「おお…」
「俺もお邪魔するぜっ!んん!?畳がねぇっ」
部屋の床は木材が敷き詰められていた。ナジュの場合は屋敷に来てからだが、慣れ親しんだ畳でなく、生前住んでいた荒屋の床を新品で建て直したような印象を受けた。
「履き物は何処で脱ぐんだ?」
「おい、寝床が床に敷いてないぞ!この木の箱みたいなのに乗ってる」
「文机は……」
ナジュと股右衛門は荷物を床に置いて部屋の中を物色するのに夢中になる。特にナジュの目を惹いたのは、他の神様候補が纏っていた品だった。
「この布団の上に置いてあるの…俺の着物か?」
綺麗に畳まれた着物を手に取り広げてみる。ハッとするように鮮やかな緑色の羽織りに"ナジュ"という名前が胸に刻まれていた。ナジュが密かに感動している横で、股右衛門はまだ布団に残っている着物を見る。
「何だこれ?烏帽子にしちゃ短いし…袴に…白い不思議な着物だな…この長いのも……ナジュ、とりあえず着てみろよ」
「なあっ股右衛門!」
「何だ?しゃべると舌噛んじまうぞ!」
「気を付ける。それより、この立派な建物…お前見た事あるか?住んでた荒屋とも、天界に来てからの屋敷とも様相が大分違う……」
「て事は、俺らが生きた時代より後なんじゃねぇか?俺の頃は主様の屋敷に似た建物は沢山あったが、こんな内装は見た事ねぇ」
階段には手すりが付き、内側の柵のような木の棒が一階から上までずっと続いている。露階段の踊り場に面したガラス窓も二人にとって初めて見るものである。外から光を取り入れられる為、踊り場はとても明るい。窓枠の飾りも嗜好が凝らさせていて、ナジュは空いた時間に近くでじっくり見てみたいと思った。
「どのくらい経過したら、こんなに変わるんだろうな…。生活の変遷ってのを見られたら面白そうだ」
「ははっそんな事が出来るんだったら、俺ァ話に聞く伝説の美女美男にお目に掛かりてぇな!国を傾ける別嬪、誰も彼もを手のひらで転がす妖艶……たまんねえ!」
ナジュはまたいつものが始まったと呆れていた。
「さて!ここだな」
股右衛門はナジュを降ろして片手に荷物を抱える。東棟三階の一番奥の部屋の前に到着した。部屋の出入り口は引き戸でなく取手のついた扉で、それにもナジュ達は驚いた。二人は三つ隣の部屋に配置された神様候補が、取手を回して扉を開ける姿をチラと見て作法を学ぶ。
「二、三回戸を叩いてたな」
「中に誰かいねぇか確認してんだろ。厠と同じだ」
「汚い話を…」
ナジュは同様に三度扉を叩いて中からの返事を待つ。どうやら中には誰もいないようだ。ナジュは取手を捻って扉を開けた。
「おお…」
「俺もお邪魔するぜっ!んん!?畳がねぇっ」
部屋の床は木材が敷き詰められていた。ナジュの場合は屋敷に来てからだが、慣れ親しんだ畳でなく、生前住んでいた荒屋の床を新品で建て直したような印象を受けた。
「履き物は何処で脱ぐんだ?」
「おい、寝床が床に敷いてないぞ!この木の箱みたいなのに乗ってる」
「文机は……」
ナジュと股右衛門は荷物を床に置いて部屋の中を物色するのに夢中になる。特にナジュの目を惹いたのは、他の神様候補が纏っていた品だった。
「この布団の上に置いてあるの…俺の着物か?」
綺麗に畳まれた着物を手に取り広げてみる。ハッとするように鮮やかな緑色の羽織りに"ナジュ"という名前が胸に刻まれていた。ナジュが密かに感動している横で、股右衛門はまだ布団に残っている着物を見る。
「何だこれ?烏帽子にしちゃ短いし…袴に…白い不思議な着物だな…この長いのも……ナジュ、とりあえず着てみろよ」
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