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屋敷編
宴は踊る
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主様とナジュが穏やかな交流をしている反対側、股右衛門を筆頭とした酒乱が集まった場所では、遂に1人が着物を脱ぎだすと、連鎖するように次々と肌蹴ていく。股右衛門は好き者であるが、この酒乱達は好みではないのか、脱いでも特に助平心に引っ掛かりは無いようである。
「ふぃ~…あっちい…!」
股右衛門は着ていた法被を脱いで、サラシと股引き姿になった。酒で熱くなった身体がじっとりと汗を滲ませている。その汗臭そうな光景に、少し離れて座っている他の使用人達は、いよいよ始まるぞと其方の動向を窺っている。酒乱達が脱ぎだしてからが、宴の最高潮の盛り上がりに向けての始まりである。重鎮にもかかわらず、酒乱席にいる一人の配下がいきなり立ち上がった。そして帯を解き、着物と共に桜木の根元に投げ捨て、褌姿で仁王立ちする。
「無礼講の舞ィ~~!」
「始まった、始まった!」
「ふふ、明日御蔭様に苦言を呈されるに違いないわっ」
「他の奴らも立ち上がったぞ…!」
顔を赤くした重鎮が、美麗な舞踏とはかけ離れた、摩訶不思議なとんちき踊りを始める。素人目に見てもただ己の好きなように手足を動かし飛び跳ねているとわかる、醜態と呼ぶにふさわしい踊りであった。それを見て高らかに笑い声を上げる使用人達。普段であれば礼を尽くさなければならない相手であり、使用人とは地位がかけ離れている。しかし、この重鎮は酒が許容量を超えると急に踊りだし、またその時の記憶を無くす為、まさか自分が醜態を晒して宴の盛り上がりに貢献しているとは露ほども思わないのである。
「あっはっは!何だありゃ!ま、真顔でよくも、あんなっ…恥ずかしい…踊りを、くくっ」
「クスクス…恥さらしもいいとこね。ああはなりたくないものだわ」
「踊れ踊れ~!」
周りが囃し立てる中、重鎮はそれが聞こえているかいないのか、「無礼講の舞ィ~~!」と叫び、振付は違うが同じく下手糞ではある摩訶不思議な踊りを披露する。この重鎮が酒乱の席に追いやられているのは、以前主様の前で無礼講の舞を踊ろうとして、御蔭を筆頭とした重鎮達に取り押さえられるという事件を起こしたからである。当の主様は声を出してはいけないという決まりを守らねばならず、口を手で覆ってなんとか笑いを堪えていた。
(わ、笑っては駄目だ…!声がッ……何だあの踊りはっ、ぶ、無礼講の舞…?ぶ、無礼ッ…!)
カタカタと細かに震えて笑い声を封じる主様の隣で、重鎮を指差しながら腹を抱えて笑う稲葉を重鎮たちは忌々しく睨んでいた。現在御蔭に絡んでいた稲葉は、酒乱重鎮の声が聞こえるとそちらを見やり、「楽しそうな催しをしておりますねえ~!あちらに物見に行って来まする!」と言い、御蔭の腕を放して飛び跳ねていった。
「俺達も踊るぞ!」
「損損音頭~!」
「踊らにゃ損ッ!損ッ!踊らにゃ損ッ!損ッ!ドジョウすっくいに腹踊り~」
「盆に正月花見に月見~ッ花より団子に、酒酔い踊り~」
「タコはタコでも茹でダコ踊り~」
「踊らにゃ損ッ!損ッ!踊らにゃ損ッ!損ッ!」
自然と手拍子が生まれ、周りも一緒になって歌う。時間の経過と共に日が傾き始め、空が橙に染められている。宴会はさらなる盛り上がりに突入していく。
「ふぃ~…あっちい…!」
股右衛門は着ていた法被を脱いで、サラシと股引き姿になった。酒で熱くなった身体がじっとりと汗を滲ませている。その汗臭そうな光景に、少し離れて座っている他の使用人達は、いよいよ始まるぞと其方の動向を窺っている。酒乱達が脱ぎだしてからが、宴の最高潮の盛り上がりに向けての始まりである。重鎮にもかかわらず、酒乱席にいる一人の配下がいきなり立ち上がった。そして帯を解き、着物と共に桜木の根元に投げ捨て、褌姿で仁王立ちする。
「無礼講の舞ィ~~!」
「始まった、始まった!」
「ふふ、明日御蔭様に苦言を呈されるに違いないわっ」
「他の奴らも立ち上がったぞ…!」
顔を赤くした重鎮が、美麗な舞踏とはかけ離れた、摩訶不思議なとんちき踊りを始める。素人目に見てもただ己の好きなように手足を動かし飛び跳ねているとわかる、醜態と呼ぶにふさわしい踊りであった。それを見て高らかに笑い声を上げる使用人達。普段であれば礼を尽くさなければならない相手であり、使用人とは地位がかけ離れている。しかし、この重鎮は酒が許容量を超えると急に踊りだし、またその時の記憶を無くす為、まさか自分が醜態を晒して宴の盛り上がりに貢献しているとは露ほども思わないのである。
「あっはっは!何だありゃ!ま、真顔でよくも、あんなっ…恥ずかしい…踊りを、くくっ」
「クスクス…恥さらしもいいとこね。ああはなりたくないものだわ」
「踊れ踊れ~!」
周りが囃し立てる中、重鎮はそれが聞こえているかいないのか、「無礼講の舞ィ~~!」と叫び、振付は違うが同じく下手糞ではある摩訶不思議な踊りを披露する。この重鎮が酒乱の席に追いやられているのは、以前主様の前で無礼講の舞を踊ろうとして、御蔭を筆頭とした重鎮達に取り押さえられるという事件を起こしたからである。当の主様は声を出してはいけないという決まりを守らねばならず、口を手で覆ってなんとか笑いを堪えていた。
(わ、笑っては駄目だ…!声がッ……何だあの踊りはっ、ぶ、無礼講の舞…?ぶ、無礼ッ…!)
カタカタと細かに震えて笑い声を封じる主様の隣で、重鎮を指差しながら腹を抱えて笑う稲葉を重鎮たちは忌々しく睨んでいた。現在御蔭に絡んでいた稲葉は、酒乱重鎮の声が聞こえるとそちらを見やり、「楽しそうな催しをしておりますねえ~!あちらに物見に行って来まする!」と言い、御蔭の腕を放して飛び跳ねていった。
「俺達も踊るぞ!」
「損損音頭~!」
「踊らにゃ損ッ!損ッ!踊らにゃ損ッ!損ッ!ドジョウすっくいに腹踊り~」
「盆に正月花見に月見~ッ花より団子に、酒酔い踊り~」
「タコはタコでも茹でダコ踊り~」
「踊らにゃ損ッ!損ッ!踊らにゃ損ッ!損ッ!」
自然と手拍子が生まれ、周りも一緒になって歌う。時間の経過と共に日が傾き始め、空が橙に染められている。宴会はさらなる盛り上がりに突入していく。
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