127柱目の人柱

ど三一

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屋敷編

桜花の下集う

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宴会の準備に奔走する使用人達が、厨房で準備した料理を乗せた盆を持って、忙しく厨房と部屋を往復する。準備が出来た御膳から花見会場である庭に運ばれて二列に並べられる。宴が進めばしっちゃかめっちゃかになる御膳だが、今は綺麗に並び、その手前に瓜絵が座布団を置いている。

「ふう~…座布団係も腕にきますね」
「そりゃあね~。一気に何枚も持って運んで綺麗に揃えて置いてだから、腕もだけど腰が痛くなるんだ。だけどこの後の御馳走と酒を考えりゃ踏ん張れるってもんよ」
「楽しみですね。あっ!主様の座布団はどちらに…?」
「まだ御膳は用意されてないが、主様はこの列の先だ。こっから見て列の端右が御蔭様、反対が稲葉の席だ。主様の座布団は稲葉が持って来るから、こっちでは用意しなくていいんだ」
「あの、御手付き様は…?」
「今回御手付き様がいるの初めてだからな…側に居た方がよろしいのか、少し離した方がいいのか…」
「それならば稲葉の隣に座るのがよろしいかと!」

2人が振り向くと、稲葉がぴょこぴょこと跳ねながら宴会会場に入ってきた。手には主様用の装飾が施された、綿を取り換えたばかりで山なりになっている座布団を持っている。2人は慌てて御膳の前に立ち、転んでも御膳に倒れ込まないように前のめりになって稲葉を迎え撃つ体勢に入る。

「先輩、跳ねないでください…!」
「いいか、ゆっくり歩け?そして主様の席に座布団を置いたら…早々にこの場を立ち去るんだ」
「心配性にございますね~、稲葉は転げたりしませぬよ~!」

宴が楽しみで仕方ないのか、白い尻尾を上下に揺らして機嫌よく跳ねている。瓜絵と使用人は顔を青くして、稲葉が高く跳ねれば跳ねる程顔色が悪くなり、悲痛な悲鳴を上げる。その状況をどうにかしてくれたのは御蔭であった。

「稲葉、御膳にお前の毛が散る…!飛び跳ねるのはやめろ」
「あれま御蔭様!お早いお着きでございますね?」

丁度敷物を敷いた地面に着地しようという所で、御蔭が稲葉の脇に手を入れて捕まえた。そして、そのままの体勢で主様の座る席まで移動すると、「ここに置け」と稲葉に指示した。無事に主様の座布団は配置され、敷物の上に散った白毛は最小限で済み、御膳も座布団も無事だ。

「お前達、仕事の邪魔をして済まなかったな。悪いが、稲葉の毛を掃除しておいてくれ」
「はいっ」
「御蔭様、稲葉もお手伝いに…!」
「お前をここに1人で置いたら、十中八九つまみ食いをするだろう。御殿で大人しくしていろ」

稲葉は御蔭に抱えられて宴会会場から退場した。2人は胸を撫で下ろし、赤い敷物に散らばる白毛の掃除に取り掛かった。白毛の側には何枚かの花弁が散っている。稲葉が飛び跳ねた拍子に頭が花びらに当たって落ちてきたのだろう。瓜絵は一枚手に取って使用人に見せる。

「桜が散ってる…これも片づけた方がいいですかね…?」
「う~ん…それは……風流だからいいと思うぞ。現にちらほら散っているしな」
「おーい!こっちの襖開けてくれ!誰かが閉めちまったみてえだ!」
「あっはーい!」

全ての準備が終わると、主様も使用人達も衣替えをして、各々好きな着物に身を包む。宴開始15分前の合図の太鼓が打たれると、屋敷、御殿が騒がしくなり、宴を楽しみにする声が聞こえ、ナジュも期待を膨らませて部屋を出た。
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