127柱目の人柱

ど三一

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屋敷編

由来

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ナジュは股右衛門に漢字を習っていた。普段口にしている言葉にこれという漢字が当てられ、読み書きは出来ずとも話していたと思うと、何故だか不思議な気分であった。

「一、二、三、四、五、……十、百、千、…数字って何処まで続いているんだ?限りがないぞ」
「さあ…何処までなんだろうなぁ?兎に角数え切れねえ程いっぱいだから、八百万って纏めたのかねぇ」

紙に書いた数字をなぞって何度も練習する。生前学びは口伝で教えられ、他の行動を真似て見て得ていた。それらも生きて行くのに必要な学びで、文字を操るのと優劣が付けられるものではないが、知らない事を知る、出来なかった事が出来るようになるのは、素直に嬉しく楽しかった。

(股右衛門は筆でさらさらと書いていたな。俺にも書けるようになるかな)
「次に…そうだな、暦を教えるか。えーと、年、月、日…睦月、弥生、如月、………皐月……あれ、四月は何て言うんだっけな…」
「卯月ですよ」
「そうだったっけ?」

ナジュ付きの使用人が、紙に一月から十二月迄の暦を書いていく。ナジュは感心したような表情で使用人を見る。

「凄いな…こんなにすらすら書けるのか」
「ふふふん……御手付き様も、直ぐに覚えて書けるようになりますよ」
「ケッ…何だ何だ暦を把握してるってだけで」

股右衛門は口を尖らせて外方を向いた。使用人はにやっと笑って、紙の端に自分の名を入れた。これ見よがしに自分の成果であると主張している。ナジュはその漢字で書かれた名前を見て、とある事が気になった。

「なあ、俺の名前はどうやって書くんだ?」
「御手付き様で御座いますか?」
「ナジュって名前だ」
「ナジュ……うーん、どの様な意味が込められているか知りませぬと、これとは断言できませんね」
「意味……お前達の名前は?」
「私は鳥羽と申します。鳥の羽でとばで御座います」

鳥羽は、紙に書いた自分の名前を示して、此方が鳥、此方が羽と読むとナジュに説明する。

「鳥の羽か…お前、股右衛門はどう書くんだ?」
「俺はこうだ」

股右衛門は、半紙に筆を使って大きく股右衛門と書いた。

「すると…文字の数からして…股の部分が【ま】で、右の部分が【た】で、衛の部分が【え】で……あれ、余るな。どれかが読みが2文字なのか」
「ここの字、またって読むんだ。右衛門は…衛門の字だけでも【えもん】と読むが、右も付けてる。いつしか股右衛門と呼ばれてたから、何で右が付くのかは知らねえな」
「またって…ここの股の事か?何でそんな名前に?」
「まあ、股五郎や犬股だとかの名前はありますがね。由来は何なのです?」

ナジュと鳥羽がそう股右衛門に聞くと、拗ねていた顔は段々といやらしい顔に変わり、ニマニマとして問いに答えた。

「最初は見事な白い毛皮の猿って事で、白猿公なんて格好つけた名前で呼ばれてたが、まあ…散々下半身こっちの勇名が轟いちまって、猿とか五郎とか右衛門なんて呼ばれ出してな…へへ」
「……」
「……」

ナジュと鳥羽は冷ややかな目で股右衛門を見るのだった。



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