36 / 252
御殿編
御蔭の提案
しおりを挟む
主様とナジュ、格は違うが共に「柱」と呼ばれる身の上。二柱の意思は真っ向から対立していた。ナジュを生かして側に置きたい主様と、望み叶わぬなら屍に戻りたいナジュ。幾らで説得しようとも、両者は己の望みの為意思を曲げるつもりは無い。
「……」
御蔭は、ナジュの望みをようく知っていた。恨み辛みは他人から忘れよと言われて忘られられる物ではなく、魂までも焦がして纏わりつく妄執。御蔭にも覚えがあった。ただ、ナジュのそれと御蔭のそれとは別。ナジュは鏡で甥子の姿を何度も見て、心に迷いが生じていた。復讐を止める理由が見つかろうとしていた。その迷いを御蔭は見抜き、ナジュが消える方向に転べば良いと思ったが、主様が嫌だと駄々を捏ねる。どちらも譲りそうは無い、ならば次の手を考えねばならない。御蔭は、主様の言葉を手で制して、ナジュに言った。
「…呪う方法は残されている。それも、己に反動なく、際限なく呪える方法が」
「…なんだと」
主様と向き合っていたナジュの顔が御蔭に向いた。
ー御蔭…!その方法は…
「このままでは平行線……主様の望みは私が存じ上げております。そしてこの者の望みも。同時に叶えるには、私のこれから話す内容が適当かと…」
主様が考え込む様子を見て、ナジュは御蔭に早く話してくれと詰め寄った。
「どうすればいい!?」
「…主様?宜しいでしょうか」
ー……話してやってくれ
御蔭は主様に礼をして、ナジュに向き直った。
「その方法とはな……お前自身が神の座に着くことだ」
「俺が…神…?」
「そうだ…神は現世にも数多いるが、この天界において、神と名乗れるのは127柱のみ。数とその役割が決まっているのだ。そして…現在、一つだけ不在の神がある。誰もその座を求めず、空座となっている」
ナジュの目は期待を表していた。
「その座に着けば…」
「簡単ではないがな…本来力なきものも、"座"に備わる力を得る事ができる。お前にも神通力が備わり、数十、数百を殺めた所で揺らぎない…この説明に相違ありますか、主様」
ー…ない
「無いと仰せだ」
御蔭はナジュをこの御殿から、主様の近くから遠ざけたかった。ナジュが自ら消えると望み、主様が了承するのが最良。代替計画として、この提案を用意していた。
「…今空いている神の座に着くには、どうすればいいんだ」
「役割により、求められる基準は違う。…今空いている座は…お前の身体一つで、達成可能だ」
「なら…やる…!」
「ッ!」ーナジュ!
御蔭は笑みを深めた。
「……!」ー今空いている座は…!
その座が長らく空いているのには、理由がある。誰も望まぬ座の理由。
「…それが、どんな座でも…?」
「ああ…構わない…!」
ナジュの心中は、既に恨みの矛先を定めている。後は投げ方と投げる力を得るだけだ。
御蔭は、座の正体を伏せて手続きを済ませて仕舞えたなら良いが、側には主様が居て、伏せたまま勝手に企みを進めたならば、主様の御蔭への信頼が途切れてしまう。御蔭は焦ったく思うが慎重に段階を踏む事にした。
「それが……淫祀だとしても?」
「いんし…?」
「……」
御蔭は、ナジュの望みをようく知っていた。恨み辛みは他人から忘れよと言われて忘られられる物ではなく、魂までも焦がして纏わりつく妄執。御蔭にも覚えがあった。ただ、ナジュのそれと御蔭のそれとは別。ナジュは鏡で甥子の姿を何度も見て、心に迷いが生じていた。復讐を止める理由が見つかろうとしていた。その迷いを御蔭は見抜き、ナジュが消える方向に転べば良いと思ったが、主様が嫌だと駄々を捏ねる。どちらも譲りそうは無い、ならば次の手を考えねばならない。御蔭は、主様の言葉を手で制して、ナジュに言った。
「…呪う方法は残されている。それも、己に反動なく、際限なく呪える方法が」
「…なんだと」
主様と向き合っていたナジュの顔が御蔭に向いた。
ー御蔭…!その方法は…
「このままでは平行線……主様の望みは私が存じ上げております。そしてこの者の望みも。同時に叶えるには、私のこれから話す内容が適当かと…」
主様が考え込む様子を見て、ナジュは御蔭に早く話してくれと詰め寄った。
「どうすればいい!?」
「…主様?宜しいでしょうか」
ー……話してやってくれ
御蔭は主様に礼をして、ナジュに向き直った。
「その方法とはな……お前自身が神の座に着くことだ」
「俺が…神…?」
「そうだ…神は現世にも数多いるが、この天界において、神と名乗れるのは127柱のみ。数とその役割が決まっているのだ。そして…現在、一つだけ不在の神がある。誰もその座を求めず、空座となっている」
ナジュの目は期待を表していた。
「その座に着けば…」
「簡単ではないがな…本来力なきものも、"座"に備わる力を得る事ができる。お前にも神通力が備わり、数十、数百を殺めた所で揺らぎない…この説明に相違ありますか、主様」
ー…ない
「無いと仰せだ」
御蔭はナジュをこの御殿から、主様の近くから遠ざけたかった。ナジュが自ら消えると望み、主様が了承するのが最良。代替計画として、この提案を用意していた。
「…今空いている神の座に着くには、どうすればいいんだ」
「役割により、求められる基準は違う。…今空いている座は…お前の身体一つで、達成可能だ」
「なら…やる…!」
「ッ!」ーナジュ!
御蔭は笑みを深めた。
「……!」ー今空いている座は…!
その座が長らく空いているのには、理由がある。誰も望まぬ座の理由。
「…それが、どんな座でも…?」
「ああ…構わない…!」
ナジュの心中は、既に恨みの矛先を定めている。後は投げ方と投げる力を得るだけだ。
御蔭は、座の正体を伏せて手続きを済ませて仕舞えたなら良いが、側には主様が居て、伏せたまま勝手に企みを進めたならば、主様の御蔭への信頼が途切れてしまう。御蔭は焦ったく思うが慎重に段階を踏む事にした。
「それが……淫祀だとしても?」
「いんし…?」
10
お気に入りに追加
31
あなたにおすすめの小説
変態村♂〜俺、やられます!〜
ゆきみまんじゅう
BL
地図から消えた村。
そこに肝試しに行った翔馬たち男3人。
暗闇から聞こえる不気味な足音、遠くから聞こえる笑い声。
必死に逃げる翔馬たちを救った村人に案内され、ある村へたどり着く。
その村は男しかおらず、翔馬たちが異変に気づく頃には、すでに囚われの身になってしまう。
果たして翔馬たちは、抱かれてしまう前に、村から脱出できるのだろうか?
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
アダルトショップでオナホになった俺
ミヒロ
BL
初めて同士の長年の交際をしていた彼氏と喧嘩別れした弘樹。
覚えてしまった快楽に負け、彼女へのプレゼントというていで、と自分を慰める為にアダルトショップに行ったものの。
バイブやローションの品定めしていた弘樹自身が客や後には店員にオナホになる話し。
※表紙イラスト as-AIart- 様(素敵なイラストありがとうございます!)
少年ペット契約
眠りん
BL
※少年売買契約のスピンオフ作品です。
↑上記作品を知らなくても読めます。
小山内文和は貧乏な家庭に育ち、教育上よろしくない環境にいながらも、幸せな生活を送っていた。
趣味は布団でゴロゴロする事。
ある日学校から帰ってくると、部屋はもぬけの殻、両親はいなくなっており、借金取りにやってきたヤクザの組員に人身売買で売られる事になってしまった。
文和を購入したのは堂島雪夜。四十二歳の優しい雰囲気のおじさんだ。
文和は雪夜の養子となり、学校に通ったり、本当の子供のように愛された。
文和同様人身売買で買われて、堂島の元で育ったアラサー家政婦の金井栞も、サバサバした性格だが、文和に親切だ。
三年程を堂島の家で、呑気に雪夜や栞とゴロゴロした生活を送っていたのだが、ある日雪夜が人身売買の罪で逮捕されてしまった。
文和はゴロゴロ生活を守る為、雪夜が出所するまでの間、ペットにしてくれる人を探す事にした。
※前作と違い、エロは最初の頃少しだけで、あとはほぼないです。
※前作がシリアスで暗かったので、今回は明るめでやってます。
ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。
【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる