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「一緒に寝起きをともにしろってどういうことだよ?」
 というのはオレ。
 かわいい女の子と一緒に生活ができるのはうれしいけれど、そんなことが起こっていいのか、オレは困惑していた。
「この家に何もいないかを確認するまでの期間、サトウさんにはちょっと協力をしてほしいんです、一か月に金貨三枚というのは、この家の広さではちょっと格安すぎますから」
 この家、いわくつきの家である。
 幽霊が出るといわれているこの家でオレはやっていけるのであろうか。
 無理だ。
 どんなにかわいい女の子がいても、普通の家で暮らしたい。
 宿屋があるのだ。
 宿屋で暮らしたい。
 宿屋も格安だが、何かあった宿屋というわけではあるまいな。
 今更になってそんなことを考え、そんな噂話はなかった、ということを今更になって考える。
 大丈夫。
 宿屋のほうはそんな話は聞いてはいない。
「とりあえず、サトウさんはこちらのベッドを使ってもらっても大丈夫ですか? 私たちはこちらのベッドを使いますので」
 この部屋にあるベッドは二つ。
 このうちの一つのベッドを使って果たしていいのだろうか。
 ダメだろう。
 とはいえ、幽霊が出るという噂の家を、こうやってでも借りるというのには何か事情があるのだろうか。
「私たち、モンスター討伐にあこがれているんです」
「へ?」
「だからこうやって、変な家があったら、自らその危険に飛び込み、そしてその危険をクリアしようとそう考えているんです」
 というミリア。
「それはずいぶんと変わり者の考えだな」
 普通はそんな危険は避けたいと思うはずだが。
「だからサトウさん、一緒にやりましょう。このクエストはサトウさんとなら一緒にクリアできるはずです」
「女の子と一緒に寝泊まりをするのは気に食わないけれど、でもクエストの内容は悪くはないわね」
 というのはマリア。
 マリアまで一緒にこの家に来ていたようである。
 マリアはというと、なぜかオレが使うようのベッドに横になると、目を閉じて、彼女は言った。
「なら私は今日の準備を整えるために、まずは休もうかしら。本当にこの家に幽霊が出るのだとしたら、それは大変なことだしね。モンスターが出現するのかしらね」
「幽霊という話ですが……討伐できるかはわかりません。なんせ、幽霊ですので」
「困ったわね。でも大丈夫じゃないかしら。サトウは光魔法の使い手でもあるのだから」
「サトウさんって、光魔法を使うことができるんですか? すごいです。それなら、サトウさんの力で幽霊を除霊することができるかもしれないですね」
 というのはユリア。
 待ってくれ。
 オレは幽霊を徐冷する気も、幽霊討伐する気もないのだが。
 だが一か月金貨三枚で住めるのは悪くないだろう。
 女の子三人と一緒にこの家に住むのであれば、金貨一枚もあれば、この家を一か月の間、借りることができるのだから。
 問題は幽霊が出る家ということくらいである。
 幽霊が出るのであれば、まずはそいつの駆除をしなくてはならないからな。
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