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25話 ナポリタン
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夕食は俺の予想通りタマが最近、はまっているナポリタンだ。
先月、旨いって言う洋食屋にタマとランチに行った。その時、俺はナポリタンを注文、タマはハンバーグドリアと頼んだ。両方とも店の看板料理でお客さんのほとんどはどちらかを食べる人気メニューだ。二人で分け合って食べたんだがタマがナポリタンを気に入ったのかそれ以来、食卓出現回数は激増した。毎回その味はレベルアップしていってもうすでに店に出してもおかしくないレベルに達している。
タマのナポリタンは、俺や美羽の胃袋を満足させるボリューム。大きな皿に赤い艶やかなパスタが山を作りその上にはパルメザンチーズではなくピザに使われるチーズがたっぷりとふりかけられている。絶妙についたチーズの焦げが食感にアクセントと風味を加え、チーズの上には大きなウインナーが2本と目玉焼き。目玉焼きは半熟でパスタに絡めても美味い。
今日はナポリタンとアボガドと蒸し鶏のサラダ、ガーリックトースト、スープ。美羽の前には山盛りのご飯が追加で配置されている。
タマはエプロンを外しながらテーブルを見廻し微笑みながら『よしっ!』と呟いて席に着く。
「翔くん、美羽ちゃん、お腹減ったでしょ? 座って!」
「美味しそう!」
「おー、今日も美味そうだな!」
三人で『いただきます!』と唱和して食事を始める。
夕食のテーブルに着く美羽は俺の顔をみて、『なんか、すっきりした顔してムカつく!』と言って普段通りに夕食を食べ始めた。
「ん? タマ、それだけで足りるのか?」
にこにことフォークを口に運ぶタマの皿は俺達のパスタの量の半分くらい。それでもファミレスで出てくる位の量はあるが。だが、今までは俺や美羽と同じくらいの量を平気で食べていたのに……
「あ~、ちょっと今日は練習を頑張りすぎちゃって…… あんまり食べれそうにないんだ。だから、翔くん達は気にしないでいっぱい食べてね! おかわりは無いけど足りなければ何かすぐ作るから」
俺はタマの顔をじっと見る。顎のラインがだいぶすっきりした気がするが、体調は悪そうではない。
(タマ、また痩せてる?)
「飯が食えなくなる程の稽古? 明日の練習で身体が持たないぞ。しっかり喰わないと、いい練習なんて出来ないんだからな」
「うん。今日は咲耶ちゃんたちと稽古してたんだけど、咲耶ちゃん達と同じ練習するだけで精一杯だったの。それに、普通の女の子だったらこの量は多すぎるくらいだよ」
俺に目を合わせずパスタにチーズを絡めながら言う。
「だけど、普通の女子より何倍も動いているだろ?」
体重は摂取したカロリーの足し算と引き算がマイナスになれば痩せる。極端に食事の量を減らす無謀なダイエットをしてないっていうのなら何も言わない方がいい。
「もう、試合まで1週間だからキツイ練習は減らして疲労を抜いていけよ? 飯も少し無理してでも食べろよ」
「分かった。でも不安だから練習しすぎちゃうんだ」
「その気持ちは分かるんだけどな。明日と明後日の俺との稽古以降は組手も軽くにしとけよ? 怪我でもしたら今までの努力が無駄になるんだからな。美羽、お前もだ」
ハムスターみたいに頬を膨らませてもぐもぐと口を動かす美羽。俺と目が合うと、ぷいっとそっぽを向いてしまう。
その後は他愛のない話をしばらくしてタマを家に送る。
俺が送って行くって言うと、タマはいつも通りに、『ありがとう』って、うれしそうだ。
タマの家までの数分は、試合の事やその後の期末試験の話。
タマには凛と本当に付き合うことになったことを伝えることが出来なかった。
家に帰ると美羽がリビングでテレビをぼんやり見ている。多分、俺が帰ってくるのを待っていたんだろう。
「ただいま。美羽、バイト中に話してた事なんだけどな……」
凛とタマとの関係。俺の中での答えは出た。
「おにぃはサムライさんを選んだんやね。顔見たら分かるけん」
テレビではプロ野球の結果が流れている。美羽にとっては学校の授業以上に興味はないはずだが、テレビを眺めながら呟く。
「そうだな。今日、凛に伝えたよ」
「サムライさんも今度の試合出るんやろ? おにぃはタマねぇとサムライさんどっちを応援するつもりなん?」
「決まってるだろ? 凛もタマも全力で応援する」
「二人の対戦では?」
考えていない訳ではなかった。彼女である凛と何年も一緒に道場で稽古してきたタマ。
「美羽、まだ二人が対戦するって決まってる訳じゃないだろ?」
トーナメントの組み合わせは当日、出場者に知らされる。当然、第一試合で当る可能性も決勝で対戦する可能性もある。後者の場合だと、凛もタマも決勝までコマを進めなければならないが。
「サムライさんが負けんのやったら、タマねぇは絶対、負けん」
組手で対峙するときのような鋭い目で俺を見つめる。
「そうなればいいな。いい試合になると思う」
この言葉に嘘はない。両方の稽古に付き合ってきた俺には分かる。俺のベストバウトランキングに必ずランキングされるだろう。
「うちも、サムライさんと試合したいな」
視線をテレビのプロ野球の順位表に戻しながら呟く。俺に聞こえなくても構わないくらいのボリュームだ。
中1の美羽と高2の凛。5歳も年齢が離れていて一緒に出場できる大会はあるだろうか?
「そんな大会あるかな? 美羽が高校に入れば空手かキックボクシングで対戦できる試合があるかもな」
ソファーの上で体育座りをしている美羽。
「試合じゃないと、マジでうちの相手なんか、してくれんやろ?」
「だろうな。スパーリングとかライトの組手じゃダメなのか?」
凛も中学生相手では本気は出せないだろう。
「……おやすみ」
ソファーから美羽がぴょんと立ち上がって部屋へ行ってしまった。
試合をすれば美羽にも分かるだろうか? 分かりにくい凛の可愛い内面が。
* * * * * *
吉田球恵さんのステータス
身長 160㎝
体重 75キロ → 71キロ
BMI 27.7
先月、旨いって言う洋食屋にタマとランチに行った。その時、俺はナポリタンを注文、タマはハンバーグドリアと頼んだ。両方とも店の看板料理でお客さんのほとんどはどちらかを食べる人気メニューだ。二人で分け合って食べたんだがタマがナポリタンを気に入ったのかそれ以来、食卓出現回数は激増した。毎回その味はレベルアップしていってもうすでに店に出してもおかしくないレベルに達している。
タマのナポリタンは、俺や美羽の胃袋を満足させるボリューム。大きな皿に赤い艶やかなパスタが山を作りその上にはパルメザンチーズではなくピザに使われるチーズがたっぷりとふりかけられている。絶妙についたチーズの焦げが食感にアクセントと風味を加え、チーズの上には大きなウインナーが2本と目玉焼き。目玉焼きは半熟でパスタに絡めても美味い。
今日はナポリタンとアボガドと蒸し鶏のサラダ、ガーリックトースト、スープ。美羽の前には山盛りのご飯が追加で配置されている。
タマはエプロンを外しながらテーブルを見廻し微笑みながら『よしっ!』と呟いて席に着く。
「翔くん、美羽ちゃん、お腹減ったでしょ? 座って!」
「美味しそう!」
「おー、今日も美味そうだな!」
三人で『いただきます!』と唱和して食事を始める。
夕食のテーブルに着く美羽は俺の顔をみて、『なんか、すっきりした顔してムカつく!』と言って普段通りに夕食を食べ始めた。
「ん? タマ、それだけで足りるのか?」
にこにことフォークを口に運ぶタマの皿は俺達のパスタの量の半分くらい。それでもファミレスで出てくる位の量はあるが。だが、今までは俺や美羽と同じくらいの量を平気で食べていたのに……
「あ~、ちょっと今日は練習を頑張りすぎちゃって…… あんまり食べれそうにないんだ。だから、翔くん達は気にしないでいっぱい食べてね! おかわりは無いけど足りなければ何かすぐ作るから」
俺はタマの顔をじっと見る。顎のラインがだいぶすっきりした気がするが、体調は悪そうではない。
(タマ、また痩せてる?)
「飯が食えなくなる程の稽古? 明日の練習で身体が持たないぞ。しっかり喰わないと、いい練習なんて出来ないんだからな」
「うん。今日は咲耶ちゃんたちと稽古してたんだけど、咲耶ちゃん達と同じ練習するだけで精一杯だったの。それに、普通の女の子だったらこの量は多すぎるくらいだよ」
俺に目を合わせずパスタにチーズを絡めながら言う。
「だけど、普通の女子より何倍も動いているだろ?」
体重は摂取したカロリーの足し算と引き算がマイナスになれば痩せる。極端に食事の量を減らす無謀なダイエットをしてないっていうのなら何も言わない方がいい。
「もう、試合まで1週間だからキツイ練習は減らして疲労を抜いていけよ? 飯も少し無理してでも食べろよ」
「分かった。でも不安だから練習しすぎちゃうんだ」
「その気持ちは分かるんだけどな。明日と明後日の俺との稽古以降は組手も軽くにしとけよ? 怪我でもしたら今までの努力が無駄になるんだからな。美羽、お前もだ」
ハムスターみたいに頬を膨らませてもぐもぐと口を動かす美羽。俺と目が合うと、ぷいっとそっぽを向いてしまう。
その後は他愛のない話をしばらくしてタマを家に送る。
俺が送って行くって言うと、タマはいつも通りに、『ありがとう』って、うれしそうだ。
タマの家までの数分は、試合の事やその後の期末試験の話。
タマには凛と本当に付き合うことになったことを伝えることが出来なかった。
家に帰ると美羽がリビングでテレビをぼんやり見ている。多分、俺が帰ってくるのを待っていたんだろう。
「ただいま。美羽、バイト中に話してた事なんだけどな……」
凛とタマとの関係。俺の中での答えは出た。
「おにぃはサムライさんを選んだんやね。顔見たら分かるけん」
テレビではプロ野球の結果が流れている。美羽にとっては学校の授業以上に興味はないはずだが、テレビを眺めながら呟く。
「そうだな。今日、凛に伝えたよ」
「サムライさんも今度の試合出るんやろ? おにぃはタマねぇとサムライさんどっちを応援するつもりなん?」
「決まってるだろ? 凛もタマも全力で応援する」
「二人の対戦では?」
考えていない訳ではなかった。彼女である凛と何年も一緒に道場で稽古してきたタマ。
「美羽、まだ二人が対戦するって決まってる訳じゃないだろ?」
トーナメントの組み合わせは当日、出場者に知らされる。当然、第一試合で当る可能性も決勝で対戦する可能性もある。後者の場合だと、凛もタマも決勝までコマを進めなければならないが。
「サムライさんが負けんのやったら、タマねぇは絶対、負けん」
組手で対峙するときのような鋭い目で俺を見つめる。
「そうなればいいな。いい試合になると思う」
この言葉に嘘はない。両方の稽古に付き合ってきた俺には分かる。俺のベストバウトランキングに必ずランキングされるだろう。
「うちも、サムライさんと試合したいな」
視線をテレビのプロ野球の順位表に戻しながら呟く。俺に聞こえなくても構わないくらいのボリュームだ。
中1の美羽と高2の凛。5歳も年齢が離れていて一緒に出場できる大会はあるだろうか?
「そんな大会あるかな? 美羽が高校に入れば空手かキックボクシングで対戦できる試合があるかもな」
ソファーの上で体育座りをしている美羽。
「試合じゃないと、マジでうちの相手なんか、してくれんやろ?」
「だろうな。スパーリングとかライトの組手じゃダメなのか?」
凛も中学生相手では本気は出せないだろう。
「……おやすみ」
ソファーから美羽がぴょんと立ち上がって部屋へ行ってしまった。
試合をすれば美羽にも分かるだろうか? 分かりにくい凛の可愛い内面が。
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