虚口の犬。alternative

26・もはや何もかもが遅い

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強烈なオメガのフェロモンに目眩がする。

「は、…っ、理央、ワンタイムは、」

「…やまと、もういっかい、」

「駄目です、身体に負担が、」

「して、…っして、」

「…っ」



逆らえない。



甘い、脳の奥から理性を焼くオメガの匂い。

理央の指先が俺の首筋を撫でる。

それだけで興奮させられる。

「…っあ、」

繋がったまま、再度奥を突いた。

泡立つ粘膜に指を這わせたら、理央が仰け反る。

「…っ理央、」

「やまと、っあ、」

視界に入った赤く膨れた乳首に噛み付いた。

「は、…っ、ヤバい、」

壊してしまいそうだ。



どこもかしこも食べてくれと言うように赤く熟れて濡れている。



「っあ、アァ、…っん、う、」

声すら耳の裏側に甘く張り付いてくるようだった。

絡みついてくる粘膜の感触が酷く生々しい。

「っは、」

「…やまと、」

「何ですか」

窺うように見上げてくる赤く潤んだ目の縁には涙が溜まっている。

理央は目を逸らし、震える手でシーツを握りしめながら躊躇いがちに言った。

「…気持ち、いいか、…俺のからだ、」



（――嗚呼、）



シーツを握る理央の手に指を絡めた。

「気持ちいいです、俺のために誂えたように」

「…、…ならいい、」

繋いだ俺の手に口付け、安堵するように息を吐く理央に堪らなくなる。

「これを知ってしまったら、もうあなたしか抱けなくなる、」

素直な気持ちを告げたが、理央は安堵と自嘲を含んだ笑みを浮かべた。

「…っ、俺は他のオメガみてーにメスに見えねーだろ。いつも俺だけ興奮してたから、…お前が途中で萎える覚悟してたし、…よかった、」

「っそれは、――」



（遮断剤を使用していたからで――）



「いい、…お前が女しか駄目なのは知ってる」

細い腕に抱き寄せられて唇を噛む。

「――っ」

何一つ、伝わっていない。

「お前がいいなら、全部、…中にくれ。薬は飲んだから心配要らねーし…今日だけ、…番にしてくれ、」



番に。



遠慮がちに俺の首に腕をまわし、俺の髪を撫でながら、理央はそう囁いた。

「…理央」

「すきだ、やまと、」



忘れるとわかっているから、あなたは俺にこんなことを望んで。

忘れるとわかっていて、あなたは俺に好きだと言う。



いや、そうではなく。



思考を奪う甘い匂いが今は鬱陶しい。



「嫌です、理央」

「…、今だけだ、本当の番じゃない、」

「違う、…俺はあなたの番になれるなら明日死んでもいい」

理央の生殖器の入口を抉って突いた。

「ッア、っ、…っあ、やまと、」