四角い青。

HACCA

文字の大きさ
上 下
23 / 60
10.今さらそんなに簡単に/彰久

2

しおりを挟む


「何がダメなんだ」

「お前のそれはただの独占欲だ、俺のこと好きなわけじゃねえ、」

「んなことねぇ、ずっと好きだった、アキ」

「…っ、智田に言われたからだろうが!」

キスしようとするムツの唇を手のひらで塞いで睨んだ。

瞬間。

何故か喫煙所のドアをノックする音が響いて俺もムツも動きを止めた。

「あのやろう…」、と呟いてドアに向かうムツの背中を呆然と眺める。

「…何の用だよ」

「ワリィ、壱木が家に忘れてったやつ。捨てるのもアレだし渡しといて」

狭くドアを開けて不機嫌そうに喋るムツの向こうから響く落ち着いた低い声に思わずムツの背を押してドアを開けた。

「っちょ、出てくんな!アキ」

「…智田くん…!」

抱きついて胸に額を擦らせたら暢気に「おう、久し振り」、とか言って俺の髪を撫でる。

久々に嗅ぐセブンスターの匂い。

「…智田くんなんで来ねーんだよ、俺またなんかした?こないだの仕返し?」

「あー、…」

「アキ、おい」

「…ムツがなんか言った?」

智田は俺の身体を自分から引き離しながら、「いや、邪魔したくねーだけだよ」、と曖昧に笑って、俺の身体をムツのほうに押しやった。

「…悪いな、智田」

「…しっかりしろよ」

「智田く、」

背を向けた智田のジャケットの裾を咄嗟に掴んだ。

ムツの手がその俺の指を解く。

「バイバイ、壱木」



智田は、振り返らなかった。



状況を飲み込もうと頭をフルで使う。

俺を抱き寄せるムツの腕が今は煩わしい。

首筋を吸われてムツの身体を突き放した。

「…智田に何を言った」

「アキ、もういいだろ」

「言わなきゃもうムツとつるむのはやめる」

「アキ、」

「…俺は怒ってんだよ、ムツ」

長い沈黙のあと、ムツが溜め息のように言葉を吐いた。

「…もう、ここにも来るなっつった。そんだけだ」

「…なんで」

「俺はアイツにアキを譲る気なんかねえし。女はいい。けど男は俺以外許す気はねぇ」

「…ムツ、落ち着け」

「落ち着いてる」

「自分が何言ってるかわかってんのかよ。お前おかしいって、」

「お前が…!」

突然声を荒げたムツに驚いて身体が跳ねる。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

とろとろ【R18短編集】

ちまこ。
BL
ねっとり、じっくりと。 とろとろにされてます。 喘ぎ声は可愛いめ。 乳首責め多めの作品集です。

首輪 〜性奴隷 律の調教〜

M
BL
※エロ、グロ、スカトロ、ショタ、モロ語、暴力的なセックス、たまに嘔吐など、かなりフェティッシュな内容です。 R18です。 ほとんどの話に男性同士の過激な性表現・暴力表現が含まれますのでご注意下さい。 孤児だった律は飯塚という資産家に拾われた。 幼い子供にしか興味を示さない飯塚は、律が美しい青年に成長するにつれて愛情を失い、性奴隷として調教し客に奉仕させて金儲けの道具として使い続ける。 それでも飯塚への一途な想いを捨てられずにいた律だったが、とうとう新しい飼い主に売り渡す日を告げられてしまう。 新しい飼い主として律の前に現れたのは、桐山という男だった。

食事届いたけど配達員のほうを食べました

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか? そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

部室強制監獄

裕光
BL
 夜8時に毎日更新します!  高校2年生サッカー部所属の祐介。  先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。  ある日の夜。  剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう  気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた  現れたのは蓮ともう1人。  1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。  そして大野は裕介に向かって言った。  大野「お前も肉便器に改造してやる」  大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…  

少年野球で知り合ってやけに懐いてきた後輩のあえぎ声が頭から離れない

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
少年野球で知り合い、やたら懐いてきた後輩がいた。 ある日、彼にちょっとしたイタズラをした。何気なく出したちょっかいだった。 だがそのときに発せられたあえぎ声が頭から離れなくなり、俺の行為はどんどんエスカレートしていく。

男色官能小説短編集

明治通りの民
BL
男色官能小説の短編集です。

エレベーターで一緒になった男の子がやけにモジモジしているので

こじらせた処女
BL
 大学生になり、一人暮らしを始めた荒井は、今日も今日とて買い物を済ませて、下宿先のエレベーターを待っていた。そこに偶然居合わせた中学生になりたての男の子。やけにソワソワしていて、我慢しているというのは明白だった。  とてつもなく短いエレベーターの移動時間に繰り広げられる、激しいおしっこダンス。果たして彼は間に合うのだろうか…

処理中です...