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7・……おれはいやだ/暦

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「……どうした。らしくねーな」

「……智田くんがバイバイとか言うからさあ」

「あんたが先におれがそう思うようなことしたからだろ」

「……バイバイするつもりなんかなかったし、……俺は」

身体も壱木のほうへ向けて抱き締めた。

おれの肩に額を擦らせる壱木の細い顎を持ち上げて口付ける。

嫌がる素振りもなく、壱木は自分から口を開けた。

舌を差し込んだらくぐもった声をもらして背中にまわった壱木の手がロンTの上からおれの肩甲骨を引っ掻く。

「……嫌がれよ、少しは」

「……別に、……嫌じゃねーし」

伏せられた長い睫を見つめた。

「嫌じゃなかったら何してもいいのか」

「……いいよ」

簡単にそんなことを言う壱木に思わず溜め息を吐く。

「……おれはいやだ」

「智田く、」

「曖昧にセックスさせてもらうくらいならオトモダチのほうがマシ」

伏せられたままの壱木の瞼にキスして、欲情を誤魔化そうとキツく抱き締めた。

「……じゃあ付き合ったうえでセックス無しなのはいいのか」と壱木が呟く。

壱木の逃げ道をなくそうと、考えてみた。

「いいよ」

「……智田くん好きな人にはセックスマシンじゃなかったっけ」

「付き合ってくれるくらいおれのこと好きなら多分許してくれるし」

「……なにを?」

「……」

「……」

「ね」

恐る恐るおれに目を合わせた壱木に同意を求めてみたがすぐにうつむいてしまった。

「……智田くん」

「ん」

「……もう眼鏡はずさなくていいよ」

「……なんで」



……かわされたらしい。



まあ、壱木と付き合えるなんて思ってはいないので別にオトモダチでかまわないのだが。

中野がおれを呼ぶ声がきこえて返事をしつつ壱木にタオルを渡す。

ついでに新品のパンツも。

「パンツ……」

「こないだうちにきたとき着替えなくて乾燥終わるまで待っただろ。今後似たようなことあったら困ると思って買っといた」

「……智田くんモテるっしょ」

「モテてもフラれんだよ」

「……モテることは否定しないのな」

「いいから風呂はいれ」

「はーい」と間抜けな声で返事をしながらパーカーを脱ぐ壱木から目をそらし、風呂場のドアを開けたら中野が鬼の形相で立っていた。

「……どした、中野。顔こえーよ」

「……遅い」

「あぁ、すぐ準備する」

「……っそうじゃなくて!」

掴みかかってくる中野を適当にかわしていたら浴室から暢気な壱木の声が背中にぶちあたる。

「智田くーん、やっぱ一緒にはいろーよ」

「……っはいるか!バーカ!」

そしてまた中野がおれの代わりにこたえた。


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