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なんか直った
しおりを挟む作業台(左下)と作業台(右上)の前で呆然としてしまう私である。
「うわぁ、どうしよう?」
このままじゃお客さんが来ても花束や作業台が作れないわ!
『そもそも客が来ないじゃないか』
「あっはっはっ、三味線にするわよ?」
『しゃみせん?』
「いや、落ち着きなさい私。作業は奥の作業場でもできる。問題は……アルバート様にバレるとヤバいのよ!」
結婚契約の報酬として貰ったばかりの店を! さっそく破壊したとあっては! アルバート様に呆れられてしまうわ! それどころか「物を大切にできない貴様なんぞに店は任せられん! 没収だ! げーはっはっはっ!」ってなっちゃうかも!
『いやあの眼鏡男はそんな性格だったか……?』
「え~っと、どうしよう? ドワルさんに頼んでみる? いやでも本業は鍛冶師だしなぁ。直せるならお店の看板も自力で取り付けられるはずだし……」
看板を取り付けに来てくれる大工さんに頼む?
それでもいいけど、その前に殿下が遊びに来る可能性が。殿下が知ったら面白おかしくアルバート様に話すだろうし。
というか。
マリーは毎日お茶をしに来るのだから、マリーからアルバート様に話が伝わっちゃうじゃん! 兄妹なんだから!
「くっ! どうすれば……これはもう切腹してお詫びするしか……!? ドワルさんに切腹用の刀を打ってもらわないと!」
『……まぁ、ちょっと落ち着け』
距離を取っていたクロちゃんが近づいてきて、切断された作業台(右上)に前足で触れた。肉球ぷにぷに――じゃなくて、何をしているのかしら?
私が首をかしげていると、突如として作業台(右上)が浮かび上がり、切断面と切断面が合わさって――くっついた。わずかに光ったと思ったら、次の瞬間にはもう何事もなかったかのように接合されている。
「え、えぇ……?」
作業台を撫で繰り回す。切断跡の目視はもちろんできないし、触った感じでも最初からくっついていたようにしか見えない。
つまり、クロちゃんが作業台を直してくれたわけであり――
「――凄いわクロちゃん! 天才ね!」
感極まった私は肉体強化をしてからクロちゃんに抱きついた! 間髪入れずに撫で回す! よーしよーしよしよーし!
『ふにゃあぁああああぁああ!?』
突然抱きしめたせいでビックリしたのか、私の頬を思いっきり引っ掻いてから逃げ出すクロちゃんだった。ふふふ、ツンデレ。ツンデレめ……。
素直じゃないクロちゃんは可愛いなぁと微笑ましくなっていると、
「――シャーロットは相変わらずですのね」
とても、とても懐かしい声が背後から掛けられた。
・抱きしめる(魔法で強化された肉体による体当たり)
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