65 / 92
フキンで――(審議)
しおりを挟む
猫が喋った。
クロちゃんが喋った。
しかし、普通の猫が喋るはずがない。
クロちゃんが特別な猫という可能性も十分にあるけど……。いや、違う。そうじゃない。私に天啓が舞い降りた!
「ふっ、分かったわ。かんっぜんに理解したわ! ――私の猫愛がついに人と猫の境目を突破! とうとうお猫様との意思疎通すら可能になったのね!」
『んなわけあるか』
「なるほど、そう簡単に肯定するわけにはいかないと? 中々秘匿性が高い出来事みたいね?」
『こいつ無敵か?』
「猫を想う私の心があれば、どんな困難も突破できるからね。その意味では無敵と言えるでしょう」
『こいつ無敵かぁ……』
私の無敵さに恐れおののいたのか頭を垂れるクロちゃんだった。
「あなたの声って他の人にも聞こえるの?」
『他の連中には『にゃー』とでも聞こえるんじゃないか?』
「ふ、やはり前世から積み重ねた私の猫徳によって新たなる力に目覚めたようね……お猫様を称えよ、さすれば力が授けられん……」
『あー、もうそれでいいや』
私の猫愛に驚いたのか感嘆のため息をつくクロちゃんだった。
『とにかく、あまり『力』を使いすぎるな。見ているこっちがヒヤヒヤしちまうぜ』
「はぁい」
よく分からないけど、クロちゃんが使うなと言うなら使わないでおきましょう。今日も店長さんの鋼の腕から救い出してくれたことだし。
しかし、なんか口が悪いわねクロちゃん? これは私の性格の悪さがクロちゃんの言葉を悪変換してしまっている感じ?
『元々だ、元々。ったく、お前のその自虐はどうにかならないのか?』
自虐って。私がいつ自虐したというのだろう? 私ほど自信に溢れる人間はそうはいないと思うのだけど。
『はいはい』
ひょい、と身軽な動きでクロちゃんが作業台に上る。
『まぁいい。シャーロット・ライナ。お前には『力』がある――』
「あ、ダメよ。作業台は土足禁止」
ひょい、とクロちゃんを抱えて床に降ろす私。すかさず作業台をお掃除だ。作業台は常に綺麗にしておけと師匠に注意されたし。フキンで拭き拭き拭きーんっと。
「あれ? そういえば何か言いかけた?」
『……もーいいや。お前はテキトーに生きていれば。そうすりゃテキトーに物事も進むだろ』
なぜか呆れられてしまう私だった。
※現在12位!
第17回ファンタジー小説大賞応募中です! 投票していただけると嬉しいです!
ブックマーク、ご感想などお待ちしております
クロちゃんが喋った。
しかし、普通の猫が喋るはずがない。
クロちゃんが特別な猫という可能性も十分にあるけど……。いや、違う。そうじゃない。私に天啓が舞い降りた!
「ふっ、分かったわ。かんっぜんに理解したわ! ――私の猫愛がついに人と猫の境目を突破! とうとうお猫様との意思疎通すら可能になったのね!」
『んなわけあるか』
「なるほど、そう簡単に肯定するわけにはいかないと? 中々秘匿性が高い出来事みたいね?」
『こいつ無敵か?』
「猫を想う私の心があれば、どんな困難も突破できるからね。その意味では無敵と言えるでしょう」
『こいつ無敵かぁ……』
私の無敵さに恐れおののいたのか頭を垂れるクロちゃんだった。
「あなたの声って他の人にも聞こえるの?」
『他の連中には『にゃー』とでも聞こえるんじゃないか?』
「ふ、やはり前世から積み重ねた私の猫徳によって新たなる力に目覚めたようね……お猫様を称えよ、さすれば力が授けられん……」
『あー、もうそれでいいや』
私の猫愛に驚いたのか感嘆のため息をつくクロちゃんだった。
『とにかく、あまり『力』を使いすぎるな。見ているこっちがヒヤヒヤしちまうぜ』
「はぁい」
よく分からないけど、クロちゃんが使うなと言うなら使わないでおきましょう。今日も店長さんの鋼の腕から救い出してくれたことだし。
しかし、なんか口が悪いわねクロちゃん? これは私の性格の悪さがクロちゃんの言葉を悪変換してしまっている感じ?
『元々だ、元々。ったく、お前のその自虐はどうにかならないのか?』
自虐って。私がいつ自虐したというのだろう? 私ほど自信に溢れる人間はそうはいないと思うのだけど。
『はいはい』
ひょい、と身軽な動きでクロちゃんが作業台に上る。
『まぁいい。シャーロット・ライナ。お前には『力』がある――』
「あ、ダメよ。作業台は土足禁止」
ひょい、とクロちゃんを抱えて床に降ろす私。すかさず作業台をお掃除だ。作業台は常に綺麗にしておけと師匠に注意されたし。フキンで拭き拭き拭きーんっと。
「あれ? そういえば何か言いかけた?」
『……もーいいや。お前はテキトーに生きていれば。そうすりゃテキトーに物事も進むだろ』
なぜか呆れられてしまう私だった。
※現在12位!
第17回ファンタジー小説大賞応募中です! 投票していただけると嬉しいです!
ブックマーク、ご感想などお待ちしております
385
お気に入りに追加
1,968
あなたにおすすめの小説
婚約破棄られ令嬢がカフェ経営を始めたらなぜか王宮から求婚状が届きました!?
江原里奈
恋愛
【婚約破棄? 慰謝料いただければ喜んで^^ 復縁についてはお断りでございます】
ベルクロン王国の田舎の伯爵令嬢カタリナは突然婚約者フィリップから手紙で婚約破棄されてしまう。ショックのあまり寝込んだのは母親だけで、カタリナはなぜか手紙を踏みつけながらもニヤニヤし始める。なぜなら、婚約破棄されたら相手から慰謝料が入る。それを元手に夢を実現させられるかもしれない……! 実はカタリナには前世の記憶がある。前世、彼女はカフェでバイトをしながら、夜間の製菓学校に通っている苦学生だった。夢のカフェ経営をこの世界で実現するために、カタリナの奮闘がいま始まる!
※カクヨム、ノベルバなど複数サイトに投稿中。
カクヨムコン9最終選考・第4回アイリス異世界ファンタジー大賞最終選考通過!
※ブクマしてくださるとモチベ上がります♪
※厳格なヒストリカルではなく、縦コミ漫画をイメージしたゆるふわ飯テロ系ロマンスファンタジー。作品内の事象・人間関係はすべてフィクション。法制度等々細かな部分を気にせず、寛大なお気持ちでお楽しみください<(_ _)>
【完】前世で種を疑われて処刑されたので、今世では全力で回避します。
112
恋愛
エリザベスは皇太子殿下の子を身籠った。産まれてくる我が子を待ち望んだ。だがある時、殿下に他の男と密通したと疑われ、弁解も虚しく即日処刑された。二十歳の春の事だった。
目覚めると、時を遡っていた。時を遡った以上、自分はやり直しの機会を与えられたのだと思った。皇太子殿下の妃に選ばれ、結ばれ、子を宿したのが運の尽きだった。
死にたくない。あんな最期になりたくない。
そんな未来に決してならないように、生きようと心に決めた。
無理やり『陰険侯爵』に嫁がされた私は、侯爵家で幸せな日々を送っています
朝露ココア
恋愛
「私は妹の幸福を願っているの。あなたには侯爵夫人になって幸せに生きてほしい。侯爵様の婚姻相手には、すごくお似合いだと思うわ」
わがままな姉のドリカに命じられ、侯爵家に嫁がされることになったディアナ。
派手で綺麗な姉とは異なり、ディアナは園芸と読書が趣味の陰気な子爵令嬢。
そんな彼女は傲慢な母と姉に逆らえず言いなりになっていた。
縁談の相手は『陰険侯爵』とも言われる悪評高い侯爵。
ディアナの意思はまったく尊重されずに嫁がされた侯爵家。
最初は挙動不審で自信のない『陰険侯爵』も、ディアナと接するうちに変化が現れて……次第に成長していく。
「ディアナ。君は俺が守る」
内気な夫婦が支え合い、そして心を育む物語。
ぽっちゃりな私は妹に婚約者を取られましたが、嫁ぎ先での溺愛がとまりません~冷酷な伯爵様とは誰のこと?~
柊木 ひなき
恋愛
「メリーナ、お前との婚約を破棄する!」夜会の最中に婚約者の第一王子から婚約破棄を告げられ、妹からは馬鹿にされ、貴族達の笑い者になった。
その時、思い出したのだ。(私の前世、美容部員だった!)この体型、ドレス、確かにやばい!
この世界の美の基準は、スリム体型が前提。まずはダイエットを……え、もう次の結婚? お相手は、超絶美形の伯爵様!? からの溺愛!? なんで!?
※シリアス展開もわりとあります。
【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。
曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」
「分かったわ」
「えっ……」
男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。
毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。
裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。
何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……?
★小説家になろう様で先行更新中
「婚約を破棄したい」と私に何度も言うのなら、皆にも知ってもらいましょう
天宮有
恋愛
「お前との婚約を破棄したい」それが伯爵令嬢ルナの婚約者モグルド王子の口癖だ。
侯爵令嬢ヒリスが好きなモグルドは、ルナを蔑み暴言を吐いていた。
その暴言によって、モグルドはルナとの婚約を破棄することとなる。
ヒリスを新しい婚約者にした後にモグルドはルナの力を知るも、全てが遅かった。
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
【完結】婚姻無効になったので新しい人生始めます~前世の記憶を思い出して家を出たら、愛も仕事も手に入れて幸せになりました~
Na20
恋愛
セレーナは嫁いで三年が経ってもいまだに旦那様と使用人達に受け入れられないでいた。
そんな時頭をぶつけたことで前世の記憶を思い出し、家を出ていくことを決意する。
「…そうだ、この結婚はなかったことにしよう」
※ご都合主義、ふんわり設定です
※小説家になろう様にも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる