59 / 92
貴族の娘
しおりを挟む
「うぅ……おにくおいしい。オークおいしい。オークのくせに……」
オーク (生前)の姿を思い浮かべないようにしながらステーキを食べる私であった。くっ、霜降り。めっちゃ霜降りだわ。おのれはA5ランクの牛肉か! ……どちらかというと豚肉か。顔つきからして。
「なにかあったの?」
と、向かいの席でお食事中のサラさんが問いかけてきた。ちなみに彼女が食べているのはやはり肉。ステーキという言葉では表現しきれない、お肉の塊であった。
あの厚さ、ちゃんと火が通っているのかしら……?
不安になる私だけど、断面を見るにちゃんと火が通っているみたいだ。私の拳くらいの分厚さなのに。店長さんはどんな調理法を使っているのやら。
おっと、今はサラさんからの質問に答えなきゃね。
「義妹がやってきまして。ちょっと喧嘩になっちゃたのですよ」
「あー、じゃあ花屋の前に止まっていた邪魔な馬車はシャーロットの実家のやつだったんだ?」
「……ん~、まぁ、そうなりますねー」
ここで肯定しちゃうと私が(元)貴族だとバレてしまうのだけど……まぁ、いきなりこんな大きな店を持てたり、商業ギルド長が注意を促したりした時点で今さらだから頷いてしまう。
ちなみにマリーや殿下たちが来たときは邪魔にならないようちゃんと近くの車止めに馬車を停めていてくれるらしい。乗り降りするときや荷物を下ろすときだけ店の前に停めているだけで。
ちゃんと殿下たちは周囲の迷惑にならないよう配慮してくださっているのに、なぜあの子は気づかないのかしらね? 自分中心というか、周りが見えてないというか、貴族としての基本がなっていないというか……。
「となると、やっぱりシャーロットはお貴族様なんだ? これからは『シャーロット様』ってお呼びしましょうか?」
悪戯っ子のような笑みを浮かべながら聞いてくるサラさんだった。
「止めてくださいよ。今さらじゃないですか」
「うん、それもそうよね」
「……いや、でもそういうプレイがお好みですか? なんとまぁ、人の趣味を否定する気はありませんが、出会ったばかりの人に『様付け主従百合』プレイをお望みとは……」
「……よく意味は分からないけど、これは否定しておかないとヤバいってのは分かるわね」
サラさんがガシッと私の肩を掴み、懇々と説明してきた。
「いい? こうして一緒に食事をしているのだから、私とシャーロットはもう友達よ」
「……ともだち? ……えへ、ともだち、ともだち……」
「友達の身分が貴族であろうとなかろうと、関係ない。いいわね?」
「ともだち……えぇ! そうですね! 関係ないですよね! 私どうせ伯爵家を追放されちゃったんですし!」
「うへ、伯爵令嬢だったんだ……雲の上……」
「ちょっと、自分から関係ないと言っておきながらドン引きするの止めてくださいよ」
「いやだって、伯爵令嬢って言ったら中級貴族じゃない。頑張れば王族とも結婚できるらしいじゃない。シャーロットの言動からして騎士爵の娘か男爵令嬢くらいだと思ってたのに……」
「なんか失礼なことを言われているような?」
「あ、じゃあ『友達』ならこっちも伝えておきましょうか」
「はい?」
「私も、なんか貴族の娘らしいわよ?」
※現在15位!
第17回ファンタジー小説大賞応募中です! 投票していただけると嬉しいです!
ブックマーク、ご感想などお待ちしております
オーク (生前)の姿を思い浮かべないようにしながらステーキを食べる私であった。くっ、霜降り。めっちゃ霜降りだわ。おのれはA5ランクの牛肉か! ……どちらかというと豚肉か。顔つきからして。
「なにかあったの?」
と、向かいの席でお食事中のサラさんが問いかけてきた。ちなみに彼女が食べているのはやはり肉。ステーキという言葉では表現しきれない、お肉の塊であった。
あの厚さ、ちゃんと火が通っているのかしら……?
不安になる私だけど、断面を見るにちゃんと火が通っているみたいだ。私の拳くらいの分厚さなのに。店長さんはどんな調理法を使っているのやら。
おっと、今はサラさんからの質問に答えなきゃね。
「義妹がやってきまして。ちょっと喧嘩になっちゃたのですよ」
「あー、じゃあ花屋の前に止まっていた邪魔な馬車はシャーロットの実家のやつだったんだ?」
「……ん~、まぁ、そうなりますねー」
ここで肯定しちゃうと私が(元)貴族だとバレてしまうのだけど……まぁ、いきなりこんな大きな店を持てたり、商業ギルド長が注意を促したりした時点で今さらだから頷いてしまう。
ちなみにマリーや殿下たちが来たときは邪魔にならないようちゃんと近くの車止めに馬車を停めていてくれるらしい。乗り降りするときや荷物を下ろすときだけ店の前に停めているだけで。
ちゃんと殿下たちは周囲の迷惑にならないよう配慮してくださっているのに、なぜあの子は気づかないのかしらね? 自分中心というか、周りが見えてないというか、貴族としての基本がなっていないというか……。
「となると、やっぱりシャーロットはお貴族様なんだ? これからは『シャーロット様』ってお呼びしましょうか?」
悪戯っ子のような笑みを浮かべながら聞いてくるサラさんだった。
「止めてくださいよ。今さらじゃないですか」
「うん、それもそうよね」
「……いや、でもそういうプレイがお好みですか? なんとまぁ、人の趣味を否定する気はありませんが、出会ったばかりの人に『様付け主従百合』プレイをお望みとは……」
「……よく意味は分からないけど、これは否定しておかないとヤバいってのは分かるわね」
サラさんがガシッと私の肩を掴み、懇々と説明してきた。
「いい? こうして一緒に食事をしているのだから、私とシャーロットはもう友達よ」
「……ともだち? ……えへ、ともだち、ともだち……」
「友達の身分が貴族であろうとなかろうと、関係ない。いいわね?」
「ともだち……えぇ! そうですね! 関係ないですよね! 私どうせ伯爵家を追放されちゃったんですし!」
「うへ、伯爵令嬢だったんだ……雲の上……」
「ちょっと、自分から関係ないと言っておきながらドン引きするの止めてくださいよ」
「いやだって、伯爵令嬢って言ったら中級貴族じゃない。頑張れば王族とも結婚できるらしいじゃない。シャーロットの言動からして騎士爵の娘か男爵令嬢くらいだと思ってたのに……」
「なんか失礼なことを言われているような?」
「あ、じゃあ『友達』ならこっちも伝えておきましょうか」
「はい?」
「私も、なんか貴族の娘らしいわよ?」
※現在15位!
第17回ファンタジー小説大賞応募中です! 投票していただけると嬉しいです!
ブックマーク、ご感想などお待ちしております
433
お気に入りに追加
1,919
あなたにおすすめの小説

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。
新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、

【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。

前世では美人が原因で傾国の悪役令嬢と断罪された私、今世では喪女を目指します!
鳥柄ささみ
恋愛
美人になんて、生まれたくなかった……!
前世で絶世の美女として生まれ、その見た目で国王に好かれてしまったのが運の尽き。
正妃に嫌われ、私は国を傾けた悪女とレッテルを貼られて処刑されてしまった。
そして、気づけば違う世界に転生!
けれど、なんとこの世界でも私は絶世の美女として生まれてしまったのだ!
私は前世の経験を生かし、今世こそは目立たず、人目にもつかない喪女になろうと引きこもり生活をして平穏な人生を手に入れようと試みていたのだが、なぜか世界有数の魔法学校で陽キャがいっぱいいるはずのNMA(ノーマ)から招待状が来て……?
前世の教訓から喪女生活を目指していたはずの主人公クラリスが、トラウマを抱えながらも奮闘し、四苦八苦しながら魔法学園で成長する異世界恋愛ファンタジー!
※第15回恋愛大賞にエントリーしてます!
開催中はポチッと投票してもらえると嬉しいです!
よろしくお願いします!!
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

【連載版】ヒロインは元皇后様!?〜あら?生まれ変わりましたわ?〜
naturalsoft
恋愛
その日、国民から愛された皇后様が病気で60歳の年で亡くなった。すでに現役を若き皇王と皇后に譲りながらも、国内の貴族のバランスを取りながら暮らしていた皇后が亡くなった事で、王国は荒れると予想された。
しかし、誰も予想していなかった事があった。
「あら?わたくし生まれ変わりましたわ?」
すぐに辺境の男爵令嬢として生まれ変わっていました。
「まぁ、今世はのんびり過ごしましょうか〜」
──と、思っていた時期がありましたわ。
orz
これは何かとヤラカシて有名になっていく転生お皇后様のお話しです。
おばあちゃんの知恵袋で乗り切りますわ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる