52 / 92
イケメン屋?
しおりを挟む
突如として響き渡った若い女性の悲鳴。
シャーロット――ではない。彼女があんな可愛らしい悲鳴を上げるものか。
シャーロットと男子三人が店舗入り口に視線を向けると、そこにいたのは――腰でも抜かしたのか、地面にへたり込むシスター服の女性だった。
年齢はシャーロットと同じか、少し上くらいか。
「あの、どうしました?」
この店の主としてシャーロットが尋ねると、
「……て、」
「て?」
「天国はここにあり……神はここにおわしましたか……眩しい……まぶしい……」
ひえぇえぇ、とばかりに。這うようにして店を出て行ってしまうシスター服の女性だった。
クルードたちが唖然としていると、シャーロットが不満げな目を向けてくる。
「せっかくのお客さんが……。やはり、今、この店の顔面偏差値は高すぎるようですね」
「顔面へんさち?」
「お三方の顔が良すぎるのです。眩しすぎるのです。庶民には刺激が強すぎるのです。それはもう無垢な庶民が地べたを這って逃げ出してしまうほどに」
「う、うーむ……」
確かに。クルードたちはそれぞれが社交界を騒がせる顔の良さであるし、そんなイケメン三人が一緒にいては、庶民の女性は腰くらい抜かすかと納得するクルード。もちろん自分が『イケメン』であるということに一切の疑いは抱いていない。そういうところだぞ。
「そもそも見慣れている私ですら殿下たちが店に入ってきたときは眩しくて目が潰れそうだったのですし。初体験の人であれば尚更でしょう」
シャーロットのその発言を受け、
「……そ、そうか」
「眩しかったのか……」
嬉しそうに前髪を弄んだり襟を正したりするクルードとアルバート。そんな二人を見てカラックは『マジかこいつら……』という顔をする。どんな美女から言い寄られても平然としている二人が、たった一言『眩しい』と言われただけでこんな反応をするとは……。
そんな二人の様子に気づくことなくシャーロットが店の奥、作業場へと続くドアを腕で指し示した。
「さすがにお帰りくださいとまでは言えませんが、どうぞ裏のスペースへ。このままではお花屋さんではなくイケメン屋さんになってしまいます」
「イケメン屋……?」
シャーロットの言い方はアレだが、彼女の商売を邪魔するつもりはないクルードたちはシャーロットと共に大人しく店の奥、作業場に移動したのだった。
※第17回ファンタジー小説大賞応募中です! 投票していただけると嬉しいです!
ブックマーク、ご感想などお待ちしております
シャーロット――ではない。彼女があんな可愛らしい悲鳴を上げるものか。
シャーロットと男子三人が店舗入り口に視線を向けると、そこにいたのは――腰でも抜かしたのか、地面にへたり込むシスター服の女性だった。
年齢はシャーロットと同じか、少し上くらいか。
「あの、どうしました?」
この店の主としてシャーロットが尋ねると、
「……て、」
「て?」
「天国はここにあり……神はここにおわしましたか……眩しい……まぶしい……」
ひえぇえぇ、とばかりに。這うようにして店を出て行ってしまうシスター服の女性だった。
クルードたちが唖然としていると、シャーロットが不満げな目を向けてくる。
「せっかくのお客さんが……。やはり、今、この店の顔面偏差値は高すぎるようですね」
「顔面へんさち?」
「お三方の顔が良すぎるのです。眩しすぎるのです。庶民には刺激が強すぎるのです。それはもう無垢な庶民が地べたを這って逃げ出してしまうほどに」
「う、うーむ……」
確かに。クルードたちはそれぞれが社交界を騒がせる顔の良さであるし、そんなイケメン三人が一緒にいては、庶民の女性は腰くらい抜かすかと納得するクルード。もちろん自分が『イケメン』であるということに一切の疑いは抱いていない。そういうところだぞ。
「そもそも見慣れている私ですら殿下たちが店に入ってきたときは眩しくて目が潰れそうだったのですし。初体験の人であれば尚更でしょう」
シャーロットのその発言を受け、
「……そ、そうか」
「眩しかったのか……」
嬉しそうに前髪を弄んだり襟を正したりするクルードとアルバート。そんな二人を見てカラックは『マジかこいつら……』という顔をする。どんな美女から言い寄られても平然としている二人が、たった一言『眩しい』と言われただけでこんな反応をするとは……。
そんな二人の様子に気づくことなくシャーロットが店の奥、作業場へと続くドアを腕で指し示した。
「さすがにお帰りくださいとまでは言えませんが、どうぞ裏のスペースへ。このままではお花屋さんではなくイケメン屋さんになってしまいます」
「イケメン屋……?」
シャーロットの言い方はアレだが、彼女の商売を邪魔するつもりはないクルードたちはシャーロットと共に大人しく店の奥、作業場に移動したのだった。
※第17回ファンタジー小説大賞応募中です! 投票していただけると嬉しいです!
ブックマーク、ご感想などお待ちしております
494
お気に入りに追加
1,968
あなたにおすすめの小説
婚約破棄られ令嬢がカフェ経営を始めたらなぜか王宮から求婚状が届きました!?
江原里奈
恋愛
【婚約破棄? 慰謝料いただければ喜んで^^ 復縁についてはお断りでございます】
ベルクロン王国の田舎の伯爵令嬢カタリナは突然婚約者フィリップから手紙で婚約破棄されてしまう。ショックのあまり寝込んだのは母親だけで、カタリナはなぜか手紙を踏みつけながらもニヤニヤし始める。なぜなら、婚約破棄されたら相手から慰謝料が入る。それを元手に夢を実現させられるかもしれない……! 実はカタリナには前世の記憶がある。前世、彼女はカフェでバイトをしながら、夜間の製菓学校に通っている苦学生だった。夢のカフェ経営をこの世界で実現するために、カタリナの奮闘がいま始まる!
※カクヨム、ノベルバなど複数サイトに投稿中。
カクヨムコン9最終選考・第4回アイリス異世界ファンタジー大賞最終選考通過!
※ブクマしてくださるとモチベ上がります♪
※厳格なヒストリカルではなく、縦コミ漫画をイメージしたゆるふわ飯テロ系ロマンスファンタジー。作品内の事象・人間関係はすべてフィクション。法制度等々細かな部分を気にせず、寛大なお気持ちでお楽しみください<(_ _)>
ぽっちゃりな私は妹に婚約者を取られましたが、嫁ぎ先での溺愛がとまりません~冷酷な伯爵様とは誰のこと?~
柊木 ひなき
恋愛
「メリーナ、お前との婚約を破棄する!」夜会の最中に婚約者の第一王子から婚約破棄を告げられ、妹からは馬鹿にされ、貴族達の笑い者になった。
その時、思い出したのだ。(私の前世、美容部員だった!)この体型、ドレス、確かにやばい!
この世界の美の基準は、スリム体型が前提。まずはダイエットを……え、もう次の結婚? お相手は、超絶美形の伯爵様!? からの溺愛!? なんで!?
※シリアス展開もわりとあります。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
公爵閣下に嫁いだら、「お前を愛することはない。その代わり好きにしろ」と言われたので好き勝手にさせていただきます
柴野
恋愛
伯爵令嬢エメリィ・フォンストは、親に売られるようにして公爵閣下に嫁いだ。
社交界では悪女と名高かったものの、それは全て妹の仕業で実はいわゆるドアマットヒロインなエメリィ。これでようやく幸せになると思っていたのに、彼女は夫となる人に「お前を愛することはない。代わりに好きにしろ」と言われたので、言われた通り好き勝手にすることにした――。
※本編&後日談ともに完結済み。ハッピーエンドです。
※主人公がめちゃくちゃ腹黒になりますので要注意!
※小説家になろう、カクヨムにも重複投稿しています。
【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?
碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。
まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。
様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。
第二王子?いりませんわ。
第一王子?もっといりませんわ。
第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は?
彼女の存在意義とは?
別サイト様にも掲載しております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる