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伯爵家でどんな生活を?

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「つまりカラック様は殿下やアルバート様と共謀して、私を誘拐しに来たのですね! そして私を実験動物にしようと!」

「「待て待て待て待て」」

 思わずシャーロットとカラックの間に割り込むアルバートとクルードだった。何が悲しくて好きな女性から誘拐犯扱いされなければならないのか。

 アルバートとしては結婚契約終了後もシャーロットが元気そうで安心したし、この勘違いには懐かしさすら感じられる。……だが、それと『人を誘拐して実験動物として売り渡すような男』と勘違いされるのは話が別だった。

 懇々と。懇切丁寧に誤解を解いていくアルバートとクルード。さすがのシャーロットもダブルで説明&訂正を繰り返されるとボケる暇がないのか、比較的素直に『カラックがシャーロットに興味を抱いた』と理解させることができた。

「しゃ、シャーロット嬢は状態保存の魔法を掛けることができるのかな?」

 警戒しながら。言葉を選びながら尋ねるカラックだった。下手な発言をすればあんな大惨事となるのだから当然の反応か。

「そうですね」

「どこで誰から習ったのか聞いてしまっても……?」

「う~ん……。自然と覚えていました?」

「自然って。いくら本来の状態保存がほとんど価値のない魔術だからといって、そんな自然に覚えられるとは……」

「とは言いましても……。別邸に残されていた魔導書を読んで、使えそうだから覚えただけですし」

「使えそう、とは。貴族令嬢が一体どんな場面で活用できると?」

「ぼうけんしゃ――街で確保できた食糧を保存するとか、使用人さんが持ってきてくれたごちそう・・・・を少しずつ食べるためとか」

「…………」

 貴族令嬢が『食料を街で確保』とは、どういう状況なのだろう? 『冒険者』と口にしかけていたから、冒険者の協力者から食料を得ていたとでも?

 興味本位で庶民の食事を欲しがる貴族はいないでもないし、貴族相手なら儲かるので冒険者も付き合ってくれるだろう。好奇心旺盛なご令嬢のお遊び。そう考えるのが自然だ。

 しかし、使用人が持ってきてくれたごちそうを少しずつ食べるという言い方には違和感がある。貴族の食事なんて基本的にはすべてごちそうであり、一食ずつ新たに準備されるもので、『少しずつ食べる』ものではない。

「…………」

 もしかしたら。伯爵家では満足な食事すら出ていなかったのではないか? 食料を街から得なければならなかったのではないか? 見かねた使用人たちが『本邸』で出た食事の余り物を『別邸』のシャーロットにこっそりと持ってきていたのではないか?

 伯爵家内におけるシャーロットの地位。親との不和の噂。それらをほぼ同時に思い出したアルバートたちがシャーロットを問い詰めようとすると――

「――ひぃ!?」

 若い女性の悲鳴が店内に響き渡った。


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