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カラック

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「では、わたくしのお手伝いは週末からということで」

 現実の前に夢が押しつぶされそうな私は放置してマリーは帰っていった。いやまぁマリーのお手伝いをすれば普通に生活はできるので心配する必要はないんだけど……ちょっとこうさぁ、友達としてさぁ、心配するそぶりくらいしてもいいじゃない……?

 さて。面倒くさい女ムーブはここまでにしてと。

 とにかく、お花を買ってもらう習慣を作らないとどうしようもないわよね。……ここはいっそのこと無料でお花を配っちゃう? 元手はタダなんだから予算の心配はしなくてもいいし。

 ただし、あまりやり過ぎると『お花は貰えるもの。金を払うなんて損した気分ー』という意識を植え付けてしまうので注意が必要だ。その辺はバランスを考えてやらないとね。

 さーて具体的な内容を考えましょうかと私が気合いを入れていると――ドアベルが鳴った。

 入り口を見ると、そこには……ぎゃあ! 眩しい!? 目も眩むようなイケメンが三人も!

 一人はこの店最初のお客様となったクルード王太子殿下。

 もう一人はおなじみアルバート様。

 そして最後の一人は……誰だろう? 殿下やアルバート様に比べればキラキラしい感じはしないけど、その分『くりくりきゅるーん』って感じがする小動物系イケメンだ。

 柔らかそうな金髪は風もないのに揺れ動いている感じすらして。穏やかに垂れ下がった目元は性格の良さを現しているかのよう。
 青い瞳は心の清らかさを示すように輝いていて。身長は低く、線も細いけどそれがまた魅力になっている気がする。

 俗な言い方をすれば、ショタ系。

 殿下と一緒に来たってことは高位貴族で、側近でもあるのだろうけど……。私は目にしたことがないので学園卒業後に側近として取り立てられたのかしらね?

 あとは貴族らしく夜会に参加していたかもしれないけれど……家族との折り合いが悪かった私は夜会に参加したことなどほとんどない。結論としてはたぶん初対面であるはずだ。

 貴族としてなら上位の者からのお声がけを待つべきなのだけど……まぁ私はもう平民みたいなものだし、ここは王城じゃなくてお店なのだから気にせずいきましょう。

「いらっしゃいませ。お久しぶりです殿下。アルバート様。……失礼ですがそちらの方は?」

「はじめまして。カラック・ラスター侯爵令息です。魔導師団長の息子と名乗った方が通りがいいでしょうか?」

「はぁ、魔導師団長の……?」

 まさか、殿下は私の『魔導師団に頼んで爆発四散☆謝罪』アイディアをお気に召して連れてきたのかしら? なんという仕事の速さ。普段はサボっているけどこういうときの動きは速いのよね。何という嗜虐趣味。なんというサディストなのでしょう。これからは鬼畜ドS王太子殿下とお呼びして――

「このカラックがシャーロットに興味を抱いたそうでね。連れてきたんだよ」

 私の思考をぶった切るかのようなタイミングで殿下がそんな説明をしてくれた。私に興味? 魔導師団長の息子が? 私が『銀髪持ち』であることは知らないはずだし……。

「……あ、まさか、ちょうどいい実験動物をお求めで?」

「へ?」

「なるほど確かにマウスなんかを使うよりは人間の方が都合が良さそうですものね。しかも私は平民になりますから証拠隠滅もしやすいですし。魔力がない他の庶民を捕まえてくるよりは実験素材として適しているでしょう」

「……で、殿下? この子は何を言っているんです?」

「慣れろ」

「シャーロット嬢はこういう子だ」

「……え、えぇ……?」

 なぜか涙目になるカラック様だった。

「なるほど。これから実験動物になる私を思って涙してくれるとは……なんとお優しい方なのでしょう」

「……なにこの子強い。逆方向に強い……」

 頭痛でもするのかその場でしゃがみ込み頭を抱えるカラック様だった。ちょうどテーブルセットがありますから少し休みます?

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