50 / 92
カラック
しおりを挟む「では、わたくしのお手伝いは週末からということで」
現実の前に夢が押しつぶされそうな私は放置してマリーは帰っていった。いやまぁマリーのお手伝いをすれば普通に生活はできるので心配する必要はないんだけど……ちょっとこうさぁ、友達としてさぁ、心配するそぶりくらいしてもいいじゃない……?
さて。面倒くさい女ムーブはここまでにしてと。
とにかく、お花を買ってもらう習慣を作らないとどうしようもないわよね。……ここはいっそのこと無料でお花を配っちゃう? 元手はタダなんだから予算の心配はしなくてもいいし。
ただし、あまりやり過ぎると『お花は貰えるもの。金を払うなんて損した気分ー』という意識を植え付けてしまうので注意が必要だ。その辺はバランスを考えてやらないとね。
さーて具体的な内容を考えましょうかと私が気合いを入れていると――ドアベルが鳴った。
入り口を見ると、そこには……ぎゃあ! 眩しい!? 目も眩むようなイケメンが三人も!
一人はこの店最初のお客様となったクルード王太子殿下。
もう一人はおなじみアルバート様。
そして最後の一人は……誰だろう? 殿下やアルバート様に比べればキラキラしい感じはしないけど、その分『くりくりきゅるーん』って感じがする小動物系イケメンだ。
柔らかそうな金髪は風もないのに揺れ動いている感じすらして。穏やかに垂れ下がった目元は性格の良さを現しているかのよう。
青い瞳は心の清らかさを示すように輝いていて。身長は低く、線も細いけどそれがまた魅力になっている気がする。
俗な言い方をすれば、ショタ系。
殿下と一緒に来たってことは高位貴族で、側近でもあるのだろうけど……。私は目にしたことがないので学園卒業後に側近として取り立てられたのかしらね?
あとは貴族らしく夜会に参加していたかもしれないけれど……家族との折り合いが悪かった私は夜会に参加したことなどほとんどない。結論としてはたぶん初対面であるはずだ。
貴族としてなら上位の者からのお声がけを待つべきなのだけど……まぁ私はもう平民みたいなものだし、ここは王城じゃなくてお店なのだから気にせずいきましょう。
「いらっしゃいませ。お久しぶりです殿下。アルバート様。……失礼ですがそちらの方は?」
「はじめまして。カラック・ラスター侯爵令息です。魔導師団長の息子と名乗った方が通りがいいでしょうか?」
「はぁ、魔導師団長の……?」
まさか、殿下は私の『魔導師団に頼んで爆発四散☆謝罪』アイディアをお気に召して連れてきたのかしら? なんという仕事の速さ。普段はサボっているけどこういうときの動きは速いのよね。何という嗜虐趣味。なんというサディストなのでしょう。これからは鬼畜ドS王太子殿下とお呼びして――
「このカラックがシャーロットに興味を抱いたそうでね。連れてきたんだよ」
私の思考をぶった切るかのようなタイミングで殿下がそんな説明をしてくれた。私に興味? 魔導師団長の息子が? 私が『銀髪持ち』であることは知らないはずだし……。
「……あ、まさか、ちょうどいい実験動物をお求めで?」
「へ?」
「なるほど確かにマウスなんかを使うよりは人間の方が都合が良さそうですものね。しかも私は平民になりますから証拠隠滅もしやすいですし。魔力がない他の庶民を捕まえてくるよりは実験素材として適しているでしょう」
「……で、殿下? この子は何を言っているんです?」
「慣れろ」
「シャーロット嬢はこういう子だ」
「……え、えぇ……?」
なぜか涙目になるカラック様だった。
「なるほど。これから実験動物になる私を思って涙してくれるとは……なんとお優しい方なのでしょう」
「……なにこの子強い。逆方向に強い……」
頭痛でもするのかその場でしゃがみ込み頭を抱えるカラック様だった。ちょうどテーブルセットがありますから少し休みます?
468
お気に入りに追加
1,956
あなたにおすすめの小説
婚約破棄られ令嬢がカフェ経営を始めたらなぜか王宮から求婚状が届きました!?
江原里奈
恋愛
【婚約破棄? 慰謝料いただければ喜んで^^ 復縁についてはお断りでございます】
ベルクロン王国の田舎の伯爵令嬢カタリナは突然婚約者フィリップから手紙で婚約破棄されてしまう。ショックのあまり寝込んだのは母親だけで、カタリナはなぜか手紙を踏みつけながらもニヤニヤし始める。なぜなら、婚約破棄されたら相手から慰謝料が入る。それを元手に夢を実現させられるかもしれない……! 実はカタリナには前世の記憶がある。前世、彼女はカフェでバイトをしながら、夜間の製菓学校に通っている苦学生だった。夢のカフェ経営をこの世界で実現するために、カタリナの奮闘がいま始まる!
※カクヨム、ノベルバなど複数サイトに投稿中。
カクヨムコン9最終選考・第4回アイリス異世界ファンタジー大賞最終選考通過!
※ブクマしてくださるとモチベ上がります♪
※厳格なヒストリカルではなく、縦コミ漫画をイメージしたゆるふわ飯テロ系ロマンスファンタジー。作品内の事象・人間関係はすべてフィクション。法制度等々細かな部分を気にせず、寛大なお気持ちでお楽しみください<(_ _)>
【完結】伝説の悪役令嬢らしいので本編には出ないことにしました~執着も溺愛も婚約破棄も全部お断りします!~
イトカワジンカイ
恋愛
「目には目をおおおお!歯には歯をおおおお!」
どごおおおぉっ!!
5歳の時、イリア・トリステンは虐められていた少年をかばい、いじめっ子をぶっ飛ばした結果、少年からとある書物を渡され(以下、悪役令嬢テンプレなので略)
ということで、自分は伝説の悪役令嬢であり、攻略対象の王太子と婚約すると断罪→死刑となることを知ったイリアは、「なら本編にでなやきゃいいじゃん!」的思考で、王家と関わらないことを決意する。
…だが何故か突然王家から婚約の決定通知がきてしまい、イリアは侯爵家からとんずらして辺境の魔術師ディボに押しかけて弟子になることにした。
それから12年…チートの魔力を持つイリアはその魔法と、トリステン家に伝わる気功を駆使して診療所を開き、平穏に暮らしていた。そこに王家からの使いが来て「不治の病に倒れた王太子の病気を治せ」との命令が下る。
泣く泣く王都へ戻ることになったイリアと旅に出たのは、幼馴染で兄弟子のカインと、王の使いで来たアイザック、女騎士のミレーヌ、そして以前イリアを助けてくれた騎士のリオ…
旅の途中では色々なトラブルに見舞われるがイリアはそれを拳で解決していく。一方で何故かリオから熱烈な求愛を受けて困惑するイリアだったが、果たしてリオの思惑とは?
更には何故か第一王子から執着され、なぜか溺愛され、さらには婚約破棄まで!?
ジェットコースター人生のイリアは持ち前のチート魔力と前世での知識を用いてこの苦境から立ち直り、自分を断罪した人間に逆襲できるのか?
困難を力でねじ伏せるパワフル悪役令嬢の物語!
※地学の知識を織り交ぜますが若干正確ではなかったりもしますが多めに見てください…
※ゆるゆる設定ですがファンタジーということでご了承ください…
※小説家になろう様でも掲載しております
※イラストは湶リク様に描いていただきました
ぽっちゃりな私は妹に婚約者を取られましたが、嫁ぎ先での溺愛がとまりません~冷酷な伯爵様とは誰のこと?~
柊木 ひなき
恋愛
【書籍発売後はレンタルに移行します。詳しくは近況ボードにて】
「メリーナ、お前との婚約を破棄する!」夜会の最中に婚約者の第一王子から婚約破棄を告げられ、妹からは馬鹿にされ、貴族達の笑い者になった。
その時、思い出したのだ。(私の前世、美容部員だった!)この体型、ドレス、確かにやばい!
この世界の美の基準は、スリム体型が前提。まずはダイエットを……え、もう次の結婚? お相手は、超絶美形の伯爵様!? からの溺愛!? なんで!?
※シリアス展開もわりとあります。
転生嫌われ令嬢の幸せカロリー飯
赤羽夕夜
恋愛
15の時に生前OLだった記憶がよみがえった嫌われ令嬢ミリアーナは、OLだったときの食生活、趣味嗜好が影響され、日々の人間関係のストレスを食や趣味で発散するようになる。
濃い味付けやこってりとしたものが好きなミリアーナは、令嬢にあるまじきこと、いけないことだと認識しながらも、人が寝静まる深夜に人目を盗むようになにかと夜食を作り始める。
そんななかミリアーナの父ヴェスター、父の専属執事であり幼い頃自分の世話役だったジョンに夜食を作っているところを見られてしまうことが始まりで、ミリアーナの変わった趣味、食生活が世間に露見して――?
※恋愛要素は中盤以降になります。
至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます
下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。
【完結】さようなら、婚約者様。私を騙していたあなたの顔など二度と見たくありません
ゆうき@初書籍化作品発売中
恋愛
婚約者とその家族に虐げられる日々を送っていたアイリーンは、赤ん坊の頃に森に捨てられていたところを、貧乏なのに拾って育ててくれた家族のために、つらい毎日を耐える日々を送っていた。
そんなアイリーンには、密かな夢があった。それは、世界的に有名な魔法学園に入学して勉強をし、宮廷魔術師になり、両親を楽させてあげたいというものだった。
婚約を結ぶ際に、両親を支援する約束をしていたアイリーンだったが、夢自体は諦めきれずに過ごしていたある日、別の女性と恋に落ちていた婚約者は、アイリーンなど体のいい使用人程度にしか思っておらず、支援も行っていないことを知る。
どういうことか問い詰めると、お前とは婚約破棄をすると言われてしまったアイリーンは、ついに我慢の限界に達し、婚約者に別れを告げてから婚約者の家を飛び出した。
実家に帰ってきたアイリーンは、唯一の知人で特別な男性であるエルヴィンから、とあることを提案される。
それは、特待生として魔法学園の編入試験を受けてみないかというものだった。
これは一人の少女が、夢を掴むために奮闘し、時には婚約者達の妨害に立ち向かいながら、幸せを手に入れる物語。
☆すでに最終話まで執筆、予約投稿済みの作品となっております☆
婚約破棄されたショックですっ転び記憶喪失になったので、第二の人生を歩みたいと思います
ととせ
恋愛
「本日この時をもってアリシア・レンホルムとの婚約を解消する」
公爵令嬢アリシアは反論する気力もなくその場を立ち去ろうとするが…見事にすっ転び、記憶喪失になってしまう。
本当に思い出せないのよね。貴方たち、誰ですか? 元婚約者の王子? 私、婚約してたんですか?
義理の妹に取られた? 別にいいです。知ったこっちゃないので。
不遇な立場も過去も忘れてしまったので、心機一転新しい人生を歩みます!
この作品は小説家になろうでも掲載しています
転生先がヒロインに恋する悪役令息のモブ婚約者だったので、推しの為に身を引こうと思います
結城芙由奈
恋愛
【だって、私はただのモブですから】
10歳になったある日のこと。「婚約者」として現れた少年を見て思い出した。彼はヒロインに恋するも報われない悪役令息で、私の推しだった。そして私は名も無いモブ婚約者。ゲームのストーリー通りに進めば、彼と共に私も破滅まっしぐら。それを防ぐにはヒロインと彼が結ばれるしか無い。そこで私はゲームの知識を利用して、彼とヒロインとの仲を取り持つことにした――
※他サイトでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる