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鍛冶屋へ
しおりを挟む鍛冶屋さんにはサラさんも付いてきてくれた。正直店長さんと二人きりになっても会話に困ってしまうのでとても助かる。
あとはクロちゃんもご一緒なのだけど……クロちゃんは歩くことを早々に諦め、私の肩の上で『だらーん』と干物のように垂れていた。野生感皆無である。
クロちゃんは成猫なのでかなり重たい……けれど、私の猫愛はこの程度で負けはしないのだ!
『にゃー』
愛で重さが変わるわけないだろ、みたいな鳴き声を上げるクロちゃんだった。ツッコミ役として優秀かもしれない。
サラさんから道中のおすすめの店などを紹介されながら歩いていると、
「おう、ここだ」
店長さんが立ち止まったのは古ぼけた石造りの建物の前だった。王都の建造物は大体レンガ造りなので、大きめの石を積んだ石積みの店舗は珍しく感じられる。
店内はいかにもって感じの武器屋さんだった。いや盾や鎧も売っているから装備屋さんと言った方が正確かな?
壁には剣から槍に至るまで大小様々な武器や防具が飾られている。私にはさほど興味はないけれど、男子中学生とか連れてきたら喜びそうだ。
「おー!」
サラさんが目をキラキラと輝かせていた。まさかこんなところに男子中学生の魂を持った美人さんがいるとは……。
この反応、サラさんも中に入るのは初めてとか? いやまぁ普通の女性は装備屋さんになんて用事はないのだろうけど。
「おい、オヤジー。いるかー?」
「……何じゃ朝っぱらから」
面倒くさそうにのっそのっそと出てきたのは――ドワーフ。いかにもドワーフっぽい姿をしたドワーフだった。
肩口までしかない服からは巌のような筋肉が露出し。大きな鼻はかぎ爪のように折れ曲がっている。そしてやはり目を引くのは顔の下半分を覆い隠すほどに豊富な髭だ。めっちゃフワフワ。人目と常識が許すならモフモフしたいわ……。
『にゃー……』
まるで『許すわけがないだろうこのポンコツ女』とばかりに鳴くクロちゃんだった。ふふふ、なるほど? この俺様のモフモフ感の方が優れているだろう、ドワーフなんかより俺様をモフれ、と言いたいのね! 嫉妬しているのね!?
『にゃー――にゃあ!?』
そんなわけあるか、とばかりに鳴いたクロちゃんを抱き抱え、モフモフ&吸い吸いする。むふぁー! もっふもふー! お日様の香りー!
『ふしゃー!』
左右の猫パンチを私の顔に食らわせてから逃げ出すクロちゃんだった。ふふふ、最初抱きしめたときには容赦なく爪を立てられたので……つまりはデレ! デレ期が来たようね!
『にゃー……』
なんだこのボケ女は……とばかりに鳴くクロちゃんだった。
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