上 下
22 / 92

お? なんだこの展開?

しおりを挟む

「え~っと、とりあえず殿下とアルバート様はただの友人であるということにしておきまして」

「いや『ということにして』じゃないんだよ。事実ただの友人なのだから」

 ははーん、なるほど。最初はただの友人だと思っていたのにパターンですか――痛っ、また空手チョップされてしまった。女の子に手を上げるのはいけないと思いまーす。

 いや殿下をパワハラとかDVで告発したところで消されるのはこっちなのだけどね。そうここは身分制度の世界……。

 あまり失言はしないようにしましょう、ということで殿下の用事を済ませてしまうことにする。

「何かご購入いただけるんでしたっけ?」

「うん。何にするかはシャーロットに任せよう」

「なるほど、では男らしく『この店の花をすべていただこう。現金払いで』ということで――」

「女性向けの花束をいただこうかな」

 華麗なる前言撤回であった。何とも男らしくなく、王子様らしくないことだ。

「花束ですか」

 まだ保水のための資材は準備できていないから……切り口に状態保存の魔術を掛ければいいか。さすがにお客さん一人一人の花束にかけ続けるのは大変だけど、殿下なのだからサービスということで。

「状態保存……?」

「では花束ですが、予算はどれくらいにしましょうか?」

「予算、というと?」

「値段によって使う花の数が変わってくるんです。銅貨一枚なら花は五本くらいでしょうか。銅貨五枚出していただければ腕で軽く抱えるくらいの大きさの花束になります」

「そうか、大きさが変わるのか……。あの人・・・は花が好きか分からないから、今日のところは銅貨一枚にしておこうかな。お好きなようなら今度からは大きな花束を頼むとしよう」

「……ほぅほぅ」

 あの人、か。相手を尊重したような呼び方、もしや殿下の恋人さんなのでは? ははーん、殿下はまだ婚約者を作らないと話題になっていたけど、すでに意中の女性がいるからってことだったのかー。

「……いや、まぁ、意中の女性がいることは否定しないが」

 おっと言質取りましたよ? はぁはぁなんとあの女たらしで女好きで女を侍らせまくっていた殿下に意中の人が! これは祝杯をあげるべきでは!? 同じ生徒会だったよしみで!

「私はそろそろ泣いてもいいと思うんだ……」

 なるほど好きな人がいるのにまだ告白できておらず泣きたい系のパターンと。なんということでしょう。殿下は女好きだけど顔はいいし、女好きだけど頭もいいし、女好きだけど将来は国王になるか大公になる御方。そんな彼から好意を向けられて答えないとは、その女性はどんなつもりなのかしらね?

「ただ単に鈍いだけだと思うな」

 鈍いから花束を持ってストレートに告白をすると。わぁ、いいなぁ、青春だなぁ。私もそんな恋がしてみたーい。

「……ならば、してみるかい?」


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄られ令嬢がカフェ経営を始めたらなぜか王宮から求婚状が届きました!?

江原里奈
恋愛
【婚約破棄? 慰謝料いただければ喜んで^^ 復縁についてはお断りでございます】 ベルクロン王国の田舎の伯爵令嬢カタリナは突然婚約者フィリップから手紙で婚約破棄されてしまう。ショックのあまり寝込んだのは母親だけで、カタリナはなぜか手紙を踏みつけながらもニヤニヤし始める。なぜなら、婚約破棄されたら相手から慰謝料が入る。それを元手に夢を実現させられるかもしれない……! 実はカタリナには前世の記憶がある。前世、彼女はカフェでバイトをしながら、夜間の製菓学校に通っている苦学生だった。夢のカフェ経営をこの世界で実現するために、カタリナの奮闘がいま始まる! ※カクヨム、ノベルバなど複数サイトに投稿中。  カクヨムコン9最終選考・第4回アイリス異世界ファンタジー大賞最終選考通過! ※ブクマしてくださるとモチベ上がります♪ ※厳格なヒストリカルではなく、縦コミ漫画をイメージしたゆるふわ飯テロ系ロマンスファンタジー。作品内の事象・人間関係はすべてフィクション。法制度等々細かな部分を気にせず、寛大なお気持ちでお楽しみください<(_ _)>

ぽっちゃりな私は妹に婚約者を取られましたが、嫁ぎ先での溺愛がとまりません~冷酷な伯爵様とは誰のこと?~

柊木 ひなき
恋愛
「メリーナ、お前との婚約を破棄する!」夜会の最中に婚約者の第一王子から婚約破棄を告げられ、妹からは馬鹿にされ、貴族達の笑い者になった。 その時、思い出したのだ。(私の前世、美容部員だった!)この体型、ドレス、確かにやばい!  この世界の美の基準は、スリム体型が前提。まずはダイエットを……え、もう次の結婚? お相手は、超絶美形の伯爵様!? からの溺愛!? なんで!? ※シリアス展開もわりとあります。

婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです

青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。 しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。 婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。 さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。 失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。 目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。 二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。 一方、義妹は仕事でミスばかり。 闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。 挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。 ※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます! ※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?

碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。 まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。 様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。 第二王子?いりませんわ。 第一王子?もっといりませんわ。 第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は? 彼女の存在意義とは? 別サイト様にも掲載しております

【完】前世で種を疑われて処刑されたので、今世では全力で回避します。

112
恋愛
エリザベスは皇太子殿下の子を身籠った。産まれてくる我が子を待ち望んだ。だがある時、殿下に他の男と密通したと疑われ、弁解も虚しく即日処刑された。二十歳の春の事だった。 目覚めると、時を遡っていた。時を遡った以上、自分はやり直しの機会を与えられたのだと思った。皇太子殿下の妃に選ばれ、結ばれ、子を宿したのが運の尽きだった。  死にたくない。あんな最期になりたくない。  そんな未来に決してならないように、生きようと心に決めた。

婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが

マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって? まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ? ※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。 ※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈 
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

処理中です...