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猫(ツンデレ)
しおりを挟む猫っぽい鳴き声。
視線を向けると、外からガラス越しに店内を覗き込む黒猫が。いやガラスに反射する自分の姿を見ているだけかもしれないけど……そんなことはどうでもいい。
猫!
黒猫!
お猫様だ!
「――にゃーん!」
私は身体強化の魔法を使って店を飛び出し、黒猫の目の前に躍り出た!
『にゃあ!?』
突然現れた私に驚きの声を上げる黒猫! 大丈夫よ怖くない! 私は味方だから!
そう! 何を隠そう私は前世でも猫を飼っていた女! 犬より猫派! すべての猫を見守る存在!
『ふしゃー!』
毛を逆立てて威嚇してくる黒猫だけど、そんなもので私はひるみはしない。この世界の実家に猫はいなかったし、学園でも見かけなかったので猫分が不足しているのだ! モフモフさせろ! そして吸わせろ!
強化された肉体を使い、猫の背後へと回り込む私。
突如としてかき消えた私の姿を探して周囲を警戒する黒猫を思いっきり抱きしめる。
『みゃああ!?』
「ふぁあ! 猫だ! お猫様だ! 柔らかーい! 癖になる香りー!」
『みゃああぁあああぁあああ!?』
私の顔を思いっきり引っ掻いてから逃げ出す黒猫だった。ふっ、これがツンデレか……。
「……シャーロットのその積極性は、なぜ人間に対して発揮されないのかな?」
呆れ声を上げたのはクルード殿下。あれ? 帰ったんじゃないですっけ? なに? 私の店って一度戻ってまたやって来なきゃいけない決まりでもあるの? マリーもそうだったけど……。
「いや、せっかく尋ねたのに何も買っていなかったことを思い出してね。『ケチくさい王子様だな』と思われても困るからね」
「あらそうなんですか? わざわざすみません。あと別にケチくさいだなんて思ってはいませんよ?」
王子様なのだからお店の花全部買ってくれてもいいのにとは思いましたけど。お買い上げいただかなくてもそれはそれで。クルード殿下もアルバート様のことで頭がいっぱいでしたでしょうし。
「あと、誤解を解いておきたくてね。私はアルバートのことを友人だと思っているが、恋愛感情は抱いていない」
「はぁ」
じゃあ何でわざわざ私を訪ねてきたんだろう? あれか? 「契約結婚であることは知っているが、それはそれとして公爵であるアルバートの名に傷を付けたからな。無礼討ちしてやるぜ!」って展開ですか?
「キミのその自虐は何とかならないのかい?」
「自虐?」
一体どこに自虐が含まれていたのだろう? そもそも私ほど自信に溢れる人間はそうはいないと思うのだけど。
「いや、たしかに変なところで神経図太いところはあるけどね……。私に対する辛辣な評価とか……」
辛辣な評価?
見たまま、聞いたまま、経験したままの評価をしているだけなのだけど。やはり王宮で大切に育てられた王子様ではちょっとの注意が批難に聞こえてしまうのだろうか?
「そういうところだよ」
なんだかよく分からないけど、こういうところらしい。
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