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第2章
第54話 協力者へのサプライズ
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「準備万端! じゃ行こっか!」
「僕の方もオッケーです。忘れ物も大丈夫ですし、行きますか」
散歩から帰り、ホテルでの朝食を済ませた僕たちは改めて荷物の確認を行った。
三度確認したこともあり、完璧だ。
「ありがとうございました」
チェックアウトを済ませ、ホテルの外へと出る。既に日は高く昇り、人や車の通りも多い。
「それじゃあまずは……」
「アキラ君のとこだね」
「もう連絡はしてあるんですか?」
「バッチリ。家だとご両親がいるみたいだから、近くの公園に来てくれないかって」
「ここでいいんですか?」
「もらったメールの通りならね。でも……ちょっと早かったかな、もう来ると思うんだけど」
「ギリギリまで変身で遊んでるんじゃないんですかね」
「そうかもね~」
人のいない小さな公園のベンチに座り、彼を待つ僕たち。惜しくなるのはわかるけど……仮にあれだけこちらにあったとしても、もう内蔵してある魔力切れは近いはずだから意味ないんだよね。
ちょっとかわいそうではあるけど……また来ればいいんだし。
「あ、きたきた。お~いこっちこっち!」
「おはようございま~す」
「おはよ~」
そうこうしているうちにちゃんと彼はその手に小さな箱を持ち、時間通りにここに現れた。
「いっぱい楽しんだ? 僕たちも今日で最後だしね」
「はい、もうたっぷり! 昨日だって……ふふふっ。いろいろとありがとうございました!」
「そうみたいだね、顔を見れば何やってたかは大体わかるよ」
セシルさんはアキラ君から箱を受け取り、中身を開ける。空間を拡張されたその箱の中に入っていたのは薄い青色をした粘液のような、ゼリーのような、不思議な物体……変身スライムだ。
「よいしょっと」
「………?」
そうして、セシルさんはそのスライムの一部をちぎり、自ら持っていたファスナー付きのビニール袋の中へと入れた。
はて……確かに蓄積された情報を利用するには一部あれば事足りる。でもそのまま持ち帰ればいいのにどうしてこんなことしているのだろう?
「はい、じゃあこれ。アキラ君このままあげるよ」
「えっ……ええぇ!」
「はっ、あれれっ? セシルさん、どういうことですかそれ!?」
突如紡がれたセシルさんの言葉にアキラ君はもちろん、僕も驚きの声を上げる。
そういって箱のふたを閉めて、セシルさんはそのままアキラ君へとその箱を手渡した。いったいどういうことだ?
「あれ僕が見た感じでも、もう貯蔵してある分はほぼ尽きているみたいでしたけど……ただのおもちゃスライムと変わりませんよ」
「俺もそんなのもらっても困るんですけど……からかってるんじゃないんですよね?」
「ふふふ~レンちゃんでもそう思うのは無理ないよね」
不敵な笑みを浮かべる。ここまで言うのだから、ハッタリなどではないだろう。
しかし僕たちは今日でここからいなくなるわけだし、アキラ君だけじゃどうしようもないと思うけどな……
「じゃじゃ~ん! これもアキラ君にあげるよ」
「へっ!? これって……この箱となんか違うところあるんですか?」
セシルさんが自信満々にバッグから取り出したのは……スライムの入っている箱とほぼ同じ大きさの箱。
僕が横からのぞいた感じ、中は空間拡張が済ませてあり、元のスライムが入っていた箱とほぼ同じとしか見えない。向こうの世界から持ってきたのだろうか。
しかし箱が二つあっても使えないことには変わりないはずだが。
「ほらほら、ここんとこよく見てごらんよ」
「これは……コンセントですよね?」
「えっ……まさか!」
「レンちゃんはわかったみたいだね」
「いつのまにこんなものを……」
そうか……そういうことか……
僕たちは向こうの世界で家電を使うとき、魔力を電気エネルギーへと変換する術を持っている。
そして効率こそ大きく劣るもののその逆……つまり電気を魔力へと変換することも、また可能であるのだ。
つまりセシルさんはこの箱をこちらで改造しその機能を加えることで、魔力を扱えないこちらの人間であるアキラ君でも、スライムへの魔力の供給を可能としたということか……
「使い方は簡単、この中にそれを入れてから、家のコンセントに刺すだけ」
「本当に……本当に使えるんですか?」
「バッチリだよ。私もそれとは違う道具で試したから大丈夫! ただ……」
「ただ?」
「ちょっと充電に時間かかる上、そんなに貯められないんだよね。短い期間だったからそれが限界で……ごめんね」
うん……それはしょうがないな。
「それでも全然構わないですよ! でも……具体的にはどれくらいなんですか?」
「私の計算だと、三日充電して満タンになり、それで使えるのは一晩くらい。ちょっと短いよねえ……」
「三日……それで思ったより短いですね。大丈夫、アキラ君?」
「確かに短いけど……それでも俺はこれで終わりだと本気で思ってたんで、感謝してもしきれません!」
想像以上に長い充電時間であったが、当の本人はそれでも構わないといった感じだ。
僕自身もそんなものを作っていたなんて知らなかったし、そんな制限付きとはいえ、この期間だけでちゃんとしたものを仕上げたのも驚きだ。
「よかった~気に入ってもらえて。安全面は問題ないし、電気代もそんなにかからないからそういう心配はいらないよ。今度来るときまでにはもっと性能のいいやつ作ってくるから」
「もちろん、それはそれで楽しみにしてますね」
「次……いつくらいになりますかね。最近魔力を使う機会多かったんで、向こうにもストックはあんまりないんじゃないですか?」
「そうだよね。でも私もここ気に入ったからまた来たいし……どうにかやりくりして、次の年明けの前くらい?」
「ああ、それくらいなら丁度いいんじゃないですか?」
大体半年くらいのインターバルか。そのくらい開けば普段の研究などに使う分を考慮しても世界を移動するだけの魔力を確保できるだろうし、生活の中で時間を作ることもそう難しくない。
特に急ぐこともないわけだし、帰省と考えればそんなものだろう。
それに変身スライムとその付属品のバージョンアップをするのにも十分だ。次来る時にはより精巧な変身をアキラ君に楽しんでもらえるに違いない。
「あとこれ、モニターをやってくれたお礼ね」
「ええっ!? だいぶ結構入ってるみたいですけど……こんなにくれるんですか? そもそも俺はただ楽しんでただけで、何もしてないも同然なのに……」
「私は依頼して、君はそれをこなしてくれたんだから報酬を支払うのは当然でしょ。こういうのはちゃんとしないとね」
「……ありがとうございます。じゃあ遠慮なくもらっておきます」
「大事に使って……といいたいところだけど、それは自由にってことで。ご両親には内緒でね」
セシルさんは立てた人差し指を口元に当てる内緒の意向を示すサインをしながら、お金の入った封筒をアキラ君に渡した。
確かにこういうのは大事だよね。彼は僕たちができなかったことをやってくれたんだから。
だけど気持ちはわかるよ。あんな体験ができて、楽しい以外の感想なんて持たないだろう。
「ああ、忘れてた。レンちゃんあれも」
「はいはい。このフィギュアも一緒に報酬ってことで。好きなやつとかある?」
「うああぁぁ!? これ、全部ですか? どうしたんですか?」
「ん~おととい二人でゲームセンターに行ったら、いっぱい取れちゃって」
「それじゃお世話になりました~」
「その箱大事に使ってね。私たちも今度来るときまでに色々作っとくから」
「期待してますね~」
別れの挨拶を済ませ、アキラ君はセシルさんからもらった箱、そして数々のフィギュアを受け取って自らの家へと帰っていった。その心の高鳴りは、もう足取りを見ただけでわかる。
今度僕たちがこの世界を訪れるまでの間、彼はあれをたっぷりと楽しむのだろうなあ……僕が同じ立場でも間違いなくそうするし。
「次はレンちゃんのおうちだね。ご挨拶と預けてあるやつを取りに行かないと」
「そうですね……」
「どうかした?」
「ちょっとだけ……イタズラしてみません?」
「僕の方もオッケーです。忘れ物も大丈夫ですし、行きますか」
散歩から帰り、ホテルでの朝食を済ませた僕たちは改めて荷物の確認を行った。
三度確認したこともあり、完璧だ。
「ありがとうございました」
チェックアウトを済ませ、ホテルの外へと出る。既に日は高く昇り、人や車の通りも多い。
「それじゃあまずは……」
「アキラ君のとこだね」
「もう連絡はしてあるんですか?」
「バッチリ。家だとご両親がいるみたいだから、近くの公園に来てくれないかって」
「ここでいいんですか?」
「もらったメールの通りならね。でも……ちょっと早かったかな、もう来ると思うんだけど」
「ギリギリまで変身で遊んでるんじゃないんですかね」
「そうかもね~」
人のいない小さな公園のベンチに座り、彼を待つ僕たち。惜しくなるのはわかるけど……仮にあれだけこちらにあったとしても、もう内蔵してある魔力切れは近いはずだから意味ないんだよね。
ちょっとかわいそうではあるけど……また来ればいいんだし。
「あ、きたきた。お~いこっちこっち!」
「おはようございま~す」
「おはよ~」
そうこうしているうちにちゃんと彼はその手に小さな箱を持ち、時間通りにここに現れた。
「いっぱい楽しんだ? 僕たちも今日で最後だしね」
「はい、もうたっぷり! 昨日だって……ふふふっ。いろいろとありがとうございました!」
「そうみたいだね、顔を見れば何やってたかは大体わかるよ」
セシルさんはアキラ君から箱を受け取り、中身を開ける。空間を拡張されたその箱の中に入っていたのは薄い青色をした粘液のような、ゼリーのような、不思議な物体……変身スライムだ。
「よいしょっと」
「………?」
そうして、セシルさんはそのスライムの一部をちぎり、自ら持っていたファスナー付きのビニール袋の中へと入れた。
はて……確かに蓄積された情報を利用するには一部あれば事足りる。でもそのまま持ち帰ればいいのにどうしてこんなことしているのだろう?
「はい、じゃあこれ。アキラ君このままあげるよ」
「えっ……ええぇ!」
「はっ、あれれっ? セシルさん、どういうことですかそれ!?」
突如紡がれたセシルさんの言葉にアキラ君はもちろん、僕も驚きの声を上げる。
そういって箱のふたを閉めて、セシルさんはそのままアキラ君へとその箱を手渡した。いったいどういうことだ?
「あれ僕が見た感じでも、もう貯蔵してある分はほぼ尽きているみたいでしたけど……ただのおもちゃスライムと変わりませんよ」
「俺もそんなのもらっても困るんですけど……からかってるんじゃないんですよね?」
「ふふふ~レンちゃんでもそう思うのは無理ないよね」
不敵な笑みを浮かべる。ここまで言うのだから、ハッタリなどではないだろう。
しかし僕たちは今日でここからいなくなるわけだし、アキラ君だけじゃどうしようもないと思うけどな……
「じゃじゃ~ん! これもアキラ君にあげるよ」
「へっ!? これって……この箱となんか違うところあるんですか?」
セシルさんが自信満々にバッグから取り出したのは……スライムの入っている箱とほぼ同じ大きさの箱。
僕が横からのぞいた感じ、中は空間拡張が済ませてあり、元のスライムが入っていた箱とほぼ同じとしか見えない。向こうの世界から持ってきたのだろうか。
しかし箱が二つあっても使えないことには変わりないはずだが。
「ほらほら、ここんとこよく見てごらんよ」
「これは……コンセントですよね?」
「えっ……まさか!」
「レンちゃんはわかったみたいだね」
「いつのまにこんなものを……」
そうか……そういうことか……
僕たちは向こうの世界で家電を使うとき、魔力を電気エネルギーへと変換する術を持っている。
そして効率こそ大きく劣るもののその逆……つまり電気を魔力へと変換することも、また可能であるのだ。
つまりセシルさんはこの箱をこちらで改造しその機能を加えることで、魔力を扱えないこちらの人間であるアキラ君でも、スライムへの魔力の供給を可能としたということか……
「使い方は簡単、この中にそれを入れてから、家のコンセントに刺すだけ」
「本当に……本当に使えるんですか?」
「バッチリだよ。私もそれとは違う道具で試したから大丈夫! ただ……」
「ただ?」
「ちょっと充電に時間かかる上、そんなに貯められないんだよね。短い期間だったからそれが限界で……ごめんね」
うん……それはしょうがないな。
「それでも全然構わないですよ! でも……具体的にはどれくらいなんですか?」
「私の計算だと、三日充電して満タンになり、それで使えるのは一晩くらい。ちょっと短いよねえ……」
「三日……それで思ったより短いですね。大丈夫、アキラ君?」
「確かに短いけど……それでも俺はこれで終わりだと本気で思ってたんで、感謝してもしきれません!」
想像以上に長い充電時間であったが、当の本人はそれでも構わないといった感じだ。
僕自身もそんなものを作っていたなんて知らなかったし、そんな制限付きとはいえ、この期間だけでちゃんとしたものを仕上げたのも驚きだ。
「よかった~気に入ってもらえて。安全面は問題ないし、電気代もそんなにかからないからそういう心配はいらないよ。今度来るときまでにはもっと性能のいいやつ作ってくるから」
「もちろん、それはそれで楽しみにしてますね」
「次……いつくらいになりますかね。最近魔力を使う機会多かったんで、向こうにもストックはあんまりないんじゃないですか?」
「そうだよね。でも私もここ気に入ったからまた来たいし……どうにかやりくりして、次の年明けの前くらい?」
「ああ、それくらいなら丁度いいんじゃないですか?」
大体半年くらいのインターバルか。そのくらい開けば普段の研究などに使う分を考慮しても世界を移動するだけの魔力を確保できるだろうし、生活の中で時間を作ることもそう難しくない。
特に急ぐこともないわけだし、帰省と考えればそんなものだろう。
それに変身スライムとその付属品のバージョンアップをするのにも十分だ。次来る時にはより精巧な変身をアキラ君に楽しんでもらえるに違いない。
「あとこれ、モニターをやってくれたお礼ね」
「ええっ!? だいぶ結構入ってるみたいですけど……こんなにくれるんですか? そもそも俺はただ楽しんでただけで、何もしてないも同然なのに……」
「私は依頼して、君はそれをこなしてくれたんだから報酬を支払うのは当然でしょ。こういうのはちゃんとしないとね」
「……ありがとうございます。じゃあ遠慮なくもらっておきます」
「大事に使って……といいたいところだけど、それは自由にってことで。ご両親には内緒でね」
セシルさんは立てた人差し指を口元に当てる内緒の意向を示すサインをしながら、お金の入った封筒をアキラ君に渡した。
確かにこういうのは大事だよね。彼は僕たちができなかったことをやってくれたんだから。
だけど気持ちはわかるよ。あんな体験ができて、楽しい以外の感想なんて持たないだろう。
「ああ、忘れてた。レンちゃんあれも」
「はいはい。このフィギュアも一緒に報酬ってことで。好きなやつとかある?」
「うああぁぁ!? これ、全部ですか? どうしたんですか?」
「ん~おととい二人でゲームセンターに行ったら、いっぱい取れちゃって」
「それじゃお世話になりました~」
「その箱大事に使ってね。私たちも今度来るときまでに色々作っとくから」
「期待してますね~」
別れの挨拶を済ませ、アキラ君はセシルさんからもらった箱、そして数々のフィギュアを受け取って自らの家へと帰っていった。その心の高鳴りは、もう足取りを見ただけでわかる。
今度僕たちがこの世界を訪れるまでの間、彼はあれをたっぷりと楽しむのだろうなあ……僕が同じ立場でも間違いなくそうするし。
「次はレンちゃんのおうちだね。ご挨拶と預けてあるやつを取りに行かないと」
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