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第2章
第32話 片付けられた部屋
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「レンちゃん。着地バッチリきまったね~」
「でしょう、自分でもいい感じだと思いましたよ」
「お帰り、レン。お前たちが上にいる間、セシルさんと話してたよ」
「父さん」
先ほどまで話していたセシルさん、そして父さんが降りてきた僕たちの方へと歩いてきた。
「お前は向こうでは勉強して、練習して……色々やってるんだってな」
「うん……まあね。魔術は学問だし、杖を振るってはい終わり、というわけじゃないからね。才能だけはもらったわけだけど、ちゃんとそういうことはやってるよ」
「へぇ偉いな……こっちにいた頃よりやってるんじゃないか?」
「そうかもね……凄く面白いよ」
どんな会話だったかは聞こえなかったが、セシルさんずいぶんと僕が頑張っているように話していたらしいな。
間違いではないし、こうして褒められるのは嬉しいんだけど……ちょっと恥ずかしいような。
「じゃ、じゃあ父さん。母さんと同じことやってみる?」
とりあえず話題を変えたくて、父さんにも魔術による空中歩行を誘ってみた。
だけど……僕はあることを忘れていた……
「いや、俺はやらないでおく。お前には悪いけど……すまん」
「え、何で? あっ……父さん高いとこダメなんだっけ……」
父さんは黙ったままで首を縦に振った。父さんは以前の僕より遙かに重度の高所恐怖症だったんだった……
結局父さんを連れてくのは断念し、僕たちは再び家に戻った。それにしても仕方ないとはいえ、父さんちょっと情けなくみえちゃったなあ……
「そういえば、レンも言ってましたが、セシルさんは凄い人なんだそうですね」
「そんな~でも確かに私たちはちょっと特別ですから。ねっ、レンちゃん」
「まあ、そうですね」
確かに僕たちの扱う、いや扱うことのできる魔術は向こうでの普通の人のそれとは全く違ったものだ。
もちろん違う世界にいけばその魔術体系は違うものになるので、学ぶこと、知ることは尽きないほどあり、事実セシルさんはそうやって研究を続けて、それを楽しんでいる。
実際に必要な資源とかの問題もあり実現できるかはおいといて、僕たちが有する技術は向こうの人から見ても魔法使いといってもいいほどだ。
だけどセシルさんがそれをおかしなことには使わないと僕は確信している。仮に世界を簡単に滅ぼすことも世界を変えることもできる技術を見つけたとしても、というかもう持っていたとしても、きっとその過程や導き出した理論を見てふむふむと満足するだけだ。
それを元に何かをしたり、広めたりもしない。せいぜい僕たちだけで遊べそうなもの、便利そうなものを作ったり、後は自分の身を守るために使うくらいだろう。
そしてそれすらも人生を楽しむ一つの要素に過ぎない。そういった人であり、僕は……そんなセシルさんに付いていくと決めていた。
「この話はいいんじゃないですか」
「それもそうか、何か私たちだけの話になりそうだしね。そういえば、昔のレンちゃんの話をもっと聞きたいですね~」
「いいですよ、レンは子供のころ、結構泣き虫なところがありましてね~子犬に追いかけられたりして……」
「ちょ、ちょっと母さん。そんな昔の話……」
「いいじゃない。聞いても教えてくれないじゃん」
「それはそうでしょ……」
そんな恥ずかしい過去を自分でしゃべるわけないじゃないか……そんなことは百も承知で言っているんだろうけど。まあセシルさんなら別にいいか。
でも昔の僕かあ……ん? な~んか忘れてるような……
後で聞こうと思ってたようなこと……昔の……あああっ────!
「ねっ、ねえ! 母さん!」
「そんなに大きい声出して……どうしたの?」
「えっと……僕の部屋ってさっき見たら、きれいに片付けられてたみたいなんだけど……本とかパソコンとか、どうしたの?」
「ああ、それは……私はよく知らないから」
「ええっ! どういうこと?」
いや、それは本気で困る。とっておいてあるなんてことは無さそうだったが……
「だって、その辺の整理、片づけはお父さんがほとんどやったから。私が手伝おうとするといいって」
「と、父さんっ!」
「……!」
父さんは口にわずかな笑みを浮かべながら、無言でのサムズアップをした。これは……ちゃんと処分してくれたってことだろう。
複雑な気分だが……母さんに手を出されるよりは良かったか……
「くくっ……くくくっ……」
「何笑ってんですか、セシルさん」
「いや、だって……」
「もう……」
一連の会話で何のことかを察したセシルさんは手で口元を隠し、プルプルと震えながら笑っていた。母さんは何のことやらわかっていないようだが、このままでいい。というかわかっちゃダメだ。
それにセシルさん、そんなに笑わなくてもいいじゃん……
「でしょう、自分でもいい感じだと思いましたよ」
「お帰り、レン。お前たちが上にいる間、セシルさんと話してたよ」
「父さん」
先ほどまで話していたセシルさん、そして父さんが降りてきた僕たちの方へと歩いてきた。
「お前は向こうでは勉強して、練習して……色々やってるんだってな」
「うん……まあね。魔術は学問だし、杖を振るってはい終わり、というわけじゃないからね。才能だけはもらったわけだけど、ちゃんとそういうことはやってるよ」
「へぇ偉いな……こっちにいた頃よりやってるんじゃないか?」
「そうかもね……凄く面白いよ」
どんな会話だったかは聞こえなかったが、セシルさんずいぶんと僕が頑張っているように話していたらしいな。
間違いではないし、こうして褒められるのは嬉しいんだけど……ちょっと恥ずかしいような。
「じゃ、じゃあ父さん。母さんと同じことやってみる?」
とりあえず話題を変えたくて、父さんにも魔術による空中歩行を誘ってみた。
だけど……僕はあることを忘れていた……
「いや、俺はやらないでおく。お前には悪いけど……すまん」
「え、何で? あっ……父さん高いとこダメなんだっけ……」
父さんは黙ったままで首を縦に振った。父さんは以前の僕より遙かに重度の高所恐怖症だったんだった……
結局父さんを連れてくのは断念し、僕たちは再び家に戻った。それにしても仕方ないとはいえ、父さんちょっと情けなくみえちゃったなあ……
「そういえば、レンも言ってましたが、セシルさんは凄い人なんだそうですね」
「そんな~でも確かに私たちはちょっと特別ですから。ねっ、レンちゃん」
「まあ、そうですね」
確かに僕たちの扱う、いや扱うことのできる魔術は向こうでの普通の人のそれとは全く違ったものだ。
もちろん違う世界にいけばその魔術体系は違うものになるので、学ぶこと、知ることは尽きないほどあり、事実セシルさんはそうやって研究を続けて、それを楽しんでいる。
実際に必要な資源とかの問題もあり実現できるかはおいといて、僕たちが有する技術は向こうの人から見ても魔法使いといってもいいほどだ。
だけどセシルさんがそれをおかしなことには使わないと僕は確信している。仮に世界を簡単に滅ぼすことも世界を変えることもできる技術を見つけたとしても、というかもう持っていたとしても、きっとその過程や導き出した理論を見てふむふむと満足するだけだ。
それを元に何かをしたり、広めたりもしない。せいぜい僕たちだけで遊べそうなもの、便利そうなものを作ったり、後は自分の身を守るために使うくらいだろう。
そしてそれすらも人生を楽しむ一つの要素に過ぎない。そういった人であり、僕は……そんなセシルさんに付いていくと決めていた。
「この話はいいんじゃないですか」
「それもそうか、何か私たちだけの話になりそうだしね。そういえば、昔のレンちゃんの話をもっと聞きたいですね~」
「いいですよ、レンは子供のころ、結構泣き虫なところがありましてね~子犬に追いかけられたりして……」
「ちょ、ちょっと母さん。そんな昔の話……」
「いいじゃない。聞いても教えてくれないじゃん」
「それはそうでしょ……」
そんな恥ずかしい過去を自分でしゃべるわけないじゃないか……そんなことは百も承知で言っているんだろうけど。まあセシルさんなら別にいいか。
でも昔の僕かあ……ん? な~んか忘れてるような……
後で聞こうと思ってたようなこと……昔の……あああっ────!
「ねっ、ねえ! 母さん!」
「そんなに大きい声出して……どうしたの?」
「えっと……僕の部屋ってさっき見たら、きれいに片付けられてたみたいなんだけど……本とかパソコンとか、どうしたの?」
「ああ、それは……私はよく知らないから」
「ええっ! どういうこと?」
いや、それは本気で困る。とっておいてあるなんてことは無さそうだったが……
「だって、その辺の整理、片づけはお父さんがほとんどやったから。私が手伝おうとするといいって」
「と、父さんっ!」
「……!」
父さんは口にわずかな笑みを浮かべながら、無言でのサムズアップをした。これは……ちゃんと処分してくれたってことだろう。
複雑な気分だが……母さんに手を出されるよりは良かったか……
「くくっ……くくくっ……」
「何笑ってんですか、セシルさん」
「いや、だって……」
「もう……」
一連の会話で何のことかを察したセシルさんは手で口元を隠し、プルプルと震えながら笑っていた。母さんは何のことやらわかっていないようだが、このままでいい。というかわかっちゃダメだ。
それにセシルさん、そんなに笑わなくてもいいじゃん……
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