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菓世くんの恋人

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9月。
2学期を迎え、部活や生徒会は全て2年生が引き継いだ。
3年生は、いよいよ受験に向かって がんばる時よ。

なんだけど……。
2学期が始まったとたん、菓世かぜくんが、すごいモテ期になっていた。

「好きです! 付き合ってください」
女の子たちが 次々と告白しては……
……玉砕していた。

そういえば この時期からだったわね。
去年も一昨年も、3年生どうしのカップルが
誕生していたわ。
ここは古い町だから、カップルになるってことは、お互いに結婚の意思ありってことを暗に意味していた。
だよね。世の中は自由恋愛の時代。
そりゃ中学3年生では 早すぎるかもしれないけどさ。
いずれ親の言いなりに結婚するなんて、古いわよ。

でもって、菓世くんならカタイよ。
性格は まじめだし。
大学で勉強した後は、必ず帰郷して老舗を継ぐ身だし。
女子高に進学して、いい嫁さんになる人が お好きなようだしね。

なんだけど……菓世くんは恐縮しながらも、片っ端から断っていた。
いわく、
「ごめん。誰とも付き合えない。
オレには好きな子がいて、その子と結婚すると 決めているから」

そしたら玉砕した女の子たちが
「誰なの? その人 」
「名前を教えて!」
ちょっとした騒ぎになっていた。

菓世くんの好きな人って誰かな?
他人ごととはいえ、私も気になったわ。

・・・

そんな ある日のこと。

「つぐみは どう思う? 菓世くんのこと」
次の授業は理科で、理科室へ移動中。突然 佐保里さほりが聞いてきた。

へええ。佐保里も好きなのかな? 菓世くんのこと。
私は佐保里の親友よ。ピンときたわ。
もちろん、応援しますとも!

「いいと思うよ。
見目みめよし。アタマよし。スポーツ万能。家が裕福。老舗の跡取り。正義の男。みんなのリーダー。
ただし菓世くんは、奥さんには家に居てほしい人だからね。
佐保里は外交官じゃなくて、お母さんみたいな翻訳家になればいいと思うわ」

そしたら、佐保里は へんな顔になり
「ばーか。にぶちん。あんたの気持ちを聞きたいんだよ」
「え? 私の?    
私は、菓世くんは圏外けんがいだよ」
即答したら、佐保里は ますます へんな顔になり
「そりゃまた、どうして?」
 
だから言ったわ、正直に。
「菓世くんは、ハンサムすぎるし、アタマもいい。
そんな人と付き合ったりしたら、私は いっつも引き立て役じゃん。
そんなの絶対イヤ。だから永久に圏外!
それに菓世くんは、女子高に進んで いい お嫁さんになる人が好きなんだよ。 
私はK高に行くし、大学に行くし、東京で働くし、この町には帰って来ない。
問題外でしょ」

すると 佐保里は、
「うへえ。そりゃ困ったな。そりゃ難しい問題だなぁ。
よし わかった。アタシが 一肌脱ぐとしよう!」

何が わかったのか、なんで一肌脱ぐのか知らないけど、
その翌日、菓世くんのモテ期 は、ようやく 収束した。

なんと! 佐保里と菓世くんが、交際宣言を したのでありまする。
「オレたち交際します!」
「アタシたち付き合うから。
みんな 、アタシの彼氏を取らないでよ!」

すごいことになったわ!
無敵のカップル誕生よ!
佐保里の彼氏に近づくなんて、誰にもできっこないよ。

でも佐保里、外交官の夢は? 
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