女の子だって羽ばたけるのよ！

隠ぺいされた事件

とんでもないオマケが付いて、私たちの修学旅行は、終わった。
３年生は 一日お休みして、翌々日の朝。

おかしいんだ。
ほんと、おかしいんだ！

当然おこなわれるものと思っていた、学年集会が、なかったのよ。 
そのかわり、私たちのクラスだけ、謝罪会見が おこなわれたの。
それも、ウソだらけの会見がね！

朝の会で。
Ａスケ、Ｂスケ。あと、よそのクラスで共犯者のＣスケ、Ｄスケ、Ｅスケが、教室の前に並ばされた。
そして驚いたことに、菓世かぜくんと 百合子ゆりこ先生も、やつらの横に並んだの。

Ａスケたちは、ニヤニヤしながら
「時間を確認しなくて すいませんでした。女子の入浴時間とは 知らなかったです。
すいませんでした」

そんなのウソ！
あいつら。あの顔。
反省なんか してないよ！

で、続いて菓世くんが、
「オレは、女子の入浴時間だと わかっていました。
それでも、大浴場へ行きました。
そして、その場にいたＡスケくんたちに、殴りかかりました。
みなさん。本当に、ごめんなさいっ」
深々と、頭を下げたの。

続いて百合子先生が
「女子の入浴時間帯は、私の管理責任でした。
にもかかわらず、適切な指導が できませんでした。
騒ぎを大きくしてしまい、申し訳ありませんでした。
良い教師になるため、いっそう努力します。
みなさん本当にごめんなさい。 どうか許してください」
深々と、頭を下げた。

教室内が ざわざわ し始めたわ。
「なんかさ、おかしくね？」
「だよな。一体どうなってんの？」

ざわめきの中、怒りのオーラを まとった佐保里さほりが すっくと立ちあがり、
「ちょっと、いいですか。事実と かなり違いますので、私から 詳しい報告を━━」

すると、すかさず
「ダメだ、佐保里さん。何も言わず、黙っていてくれ！
みんなもだ。どうか、騒がずに いてほしい。
とにかく今は、この場で謝罪すべきはオレなんだ」
菓世くんが、みんなを、止めた……。

ニヤニヤ笑う悪の軍団が、とても不気味だったわ。

そして とどめは、担任鈴木(敬称略！)の、信じ難がたい締めくくり。
「えー。あー。おほん。うほん。
一部の生徒が、入浴時間を確認しなかったために、少々の混乱があった。
混乱を招いた金沢かなざわ先生と 道明寺どうみょうじは、こうして みんなに謝罪した。
だから、許してあげようじゃないか。
そして この件は、今後 蒸むし返さないことだ。
以上だ！」

なにそれ！？ ウソっぱちじゃん！
菓世くんも、百合子先生も、一体どうしちゃったのよ？

・・・

授業の休み時間に なるたび、私たちは集まって、朝の会見について不満を言い合った。
女子だけでなく、男子も怒っていた。
菓世くんに加勢しようとした男子。男の先生を呼びに行った男子たちよ。

そりゃ そうなるわ。
問題がすり替えられ、真の犯罪が、もみ消されたんだもの！

一日お休みだった昨日までに、女子は みんな、コトのてんまつを親に話していたのよ。

女の子たちの親はね、そりゃもう怒っていましたとも！
そして先生方が、必ず厳重に指導してくださると、信じていたのよ。

Ａスケたちの行為は、犯罪なの！
そして、１４歳に達した子どもの犯罪は、逮捕されるし、処罰されるし、"前科"がつくのよ！

お風呂の時間を確認しなかった。
こんな言い訳は、通らないんだよ。

なのに、なんだって、菓世くんと百合子先生は、自分たちが悪かったことに したんだろう？
とにかく、すべてが怪しかった。

けれど その日は、菓世くんも百合子先生も、この件については いっさい語らず。

……ただねえ。
男の先生を呼びに行った男子から、気になる情報を得たんだ。

「オレさあ、男の先生の部屋を、ノックせずに、いきなり開けたんだ。
だって、緊急事態だろ？        
そしたら、先生方はタバコを吸っていた。
でさ、『ノックしろ！』って怒りながら、あわてて何かを隠したんだ。
オレたちは、『大変です。急いで大浴場に来てください』って、
脳筋のうきん先生の手を引っ張った。
そしたら、脳筋の息が、ぷんぷん臭におったんだ。
あれは、酒の臭いだ。
酔っぱらった父ちゃんの息と、同じ臭いだったもんな」

うぬぬぬぬぬ。
だとしたら、そっちの隠ぺいが、男の先生方の目的か？
そんなの許せないよ！

怒り、マックス！！
……。