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正義の味方、悪モノと戦う
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私たちは湯船を出られない。
だから その後のことは、
湯船から見えたことと、聞こえてきたことの話になる。
「おいっ! 君たち恥を知れ!
ただちに ここから 立ち去れ !」
おおお。菓世くんが来てくれた!
「そんなんじゃ 甘すぎるよっ!
害虫どもは この世から去れ! 消え失せろ!」
湯船に つかりながら、佐保里が叫んで加勢した。
「女のくせに、うるせえや。
なあ、菓世よ。ホントはオマエも見に来たんだろう」
バカAスケ!
「どうした?」
「何だ? ケンカか?」
「うわああ。
風呂場が大変なことに なってるぞう」
ワイワイ、ガヤガヤ……。
野次馬が、どんどん増えてくよ。
「ここから出て行って!
私の大切な子どもたちを傷つけないで!」
あああ。
華奢な百合子先生が、図体のデカいAスケに 突撃なさった。
「ごめん。みんな ごめんっ! 扉を閉めるよ」
菓世くんが、お風呂場の扉を閉めてくれた。
扉の向こうでは、すごい騒ぎ。
ドタン バタン。ワイワイ ガヤガヤ。
「菓世っ、オレらも加勢するぜ!」
何人かが同時に叫んだ。
「ダメだ。君たちは絶対に手を出すな!
みんなは すぐに、男の先生を呼んできてくれ!」
菓世くんが叫んだ。
「わかった! すぐに連れて来るからな!」
ワイワイ ガヤガヤ。
ドタン バタン。
ドタン バタン。ガターン!
派手な音がして、急に静かになった。
━━と、思ったら
「へへっ。やったぜい。菓世を倒したぜい。
あははは。あはははは。あははははははは」
ABC(以下略)の 高笑い。
うそ! やだ! 菓世くん……?
「オマエら、何してる! 今すぐ広間に集まれ!」
助かった。ようやく男の先生方が来た。
…………。
………………。
「みんな ごめんね。驚いたよね。怖かったね。
もう大丈夫だから、出てらっしゃい」
百合子先生に呼ばれ、ようやく私たちは 湯船を出た。
茹でダコになり、どろどろに疲れ、眠くてたまらないのに。
私たちは、恐怖と怒りで興奮していた。
・・・
扉の向こうでは、殴りあいが起きていたの。
百合子先生が、おひとりでは対応できなかった事態に、
真っ先に駆けつけたのは、男の先生方ではなく、菓世くんだった。
菓世くんはね、クラスの男子全員が 部屋に いるべき時間帯に、AスケBスケが いないことに、すぐ気づいたの。
そして、旅行の初日に、やつらが いつもより 良い子だったことを 思い出し、
何か たくらんでいるのかと、怪しんだ。
それで、CDEスケたちは どうしているかと さがしてみるも、やつらの姿も見えない。
折しも、時間帯は女子の入浴時間。
イヤな予感がして、大浴場へ駆けつけてみたら、ビンゴ!
菓世くんは、ひとりで戦ったのよ。
「男の先生を呼んで来てくれ!」
菓世くんの呼びかけに、野次馬たちが ぞろぞろと 男の先生を呼びに行っている間。
部屋で のんびりと、タバコを吸ってた男の先生方が 駆けつけるまでの間。
百合子先生を かばいながら、私たちを守るために。
菓世くんは、たった ひとりで戦ったの。
そして倒されて、顔にアザが できてしまった。
私ね、菓世くんは、男の先生方より立派だと思ったわ。
彼こそが、正義の味方よ!
・・・
そんなわけで。
一生に一度しか経験できない、中学の修学旅行。
私たちクラスの女子は、乙女心に大きな傷を残すものになってしまった。
そんなわけで、旅行の最終日。
みんなが お土産を選んで買い物するだけの日ね。
Aスケたちは、学年主任の 脳筋先生の 監視下にいて、クラスの みんなとは別行動だったの。
でもね。
謎なんだよね。
ていうか、何か、怪しかった。
クラスと別行動だったから、遠目に見ただけ なんだけど。
Aスケたち、反省した様子が無いんだよ。
脳筋先生と、談笑していたんだよ。
おまけに、お土産を たくさん買い込んだらしく、荷物が かなり増えていたんだよ。
どういうことだろ?
やっぱり、怪しいよね。
だいたいね!
私たち女子の怒りは おさまらないよ!
あのさ。
スカートめくりとか。
お風呂場の覗きとか。
子どもの悪戯で すまされて いいのか?
だから その後のことは、
湯船から見えたことと、聞こえてきたことの話になる。
「おいっ! 君たち恥を知れ!
ただちに ここから 立ち去れ !」
おおお。菓世くんが来てくれた!
「そんなんじゃ 甘すぎるよっ!
害虫どもは この世から去れ! 消え失せろ!」
湯船に つかりながら、佐保里が叫んで加勢した。
「女のくせに、うるせえや。
なあ、菓世よ。ホントはオマエも見に来たんだろう」
バカAスケ!
「どうした?」
「何だ? ケンカか?」
「うわああ。
風呂場が大変なことに なってるぞう」
ワイワイ、ガヤガヤ……。
野次馬が、どんどん増えてくよ。
「ここから出て行って!
私の大切な子どもたちを傷つけないで!」
あああ。
華奢な百合子先生が、図体のデカいAスケに 突撃なさった。
「ごめん。みんな ごめんっ! 扉を閉めるよ」
菓世くんが、お風呂場の扉を閉めてくれた。
扉の向こうでは、すごい騒ぎ。
ドタン バタン。ワイワイ ガヤガヤ。
「菓世っ、オレらも加勢するぜ!」
何人かが同時に叫んだ。
「ダメだ。君たちは絶対に手を出すな!
みんなは すぐに、男の先生を呼んできてくれ!」
菓世くんが叫んだ。
「わかった! すぐに連れて来るからな!」
ワイワイ ガヤガヤ。
ドタン バタン。
ドタン バタン。ガターン!
派手な音がして、急に静かになった。
━━と、思ったら
「へへっ。やったぜい。菓世を倒したぜい。
あははは。あはははは。あははははははは」
ABC(以下略)の 高笑い。
うそ! やだ! 菓世くん……?
「オマエら、何してる! 今すぐ広間に集まれ!」
助かった。ようやく男の先生方が来た。
…………。
………………。
「みんな ごめんね。驚いたよね。怖かったね。
もう大丈夫だから、出てらっしゃい」
百合子先生に呼ばれ、ようやく私たちは 湯船を出た。
茹でダコになり、どろどろに疲れ、眠くてたまらないのに。
私たちは、恐怖と怒りで興奮していた。
・・・
扉の向こうでは、殴りあいが起きていたの。
百合子先生が、おひとりでは対応できなかった事態に、
真っ先に駆けつけたのは、男の先生方ではなく、菓世くんだった。
菓世くんはね、クラスの男子全員が 部屋に いるべき時間帯に、AスケBスケが いないことに、すぐ気づいたの。
そして、旅行の初日に、やつらが いつもより 良い子だったことを 思い出し、
何か たくらんでいるのかと、怪しんだ。
それで、CDEスケたちは どうしているかと さがしてみるも、やつらの姿も見えない。
折しも、時間帯は女子の入浴時間。
イヤな予感がして、大浴場へ駆けつけてみたら、ビンゴ!
菓世くんは、ひとりで戦ったのよ。
「男の先生を呼んで来てくれ!」
菓世くんの呼びかけに、野次馬たちが ぞろぞろと 男の先生を呼びに行っている間。
部屋で のんびりと、タバコを吸ってた男の先生方が 駆けつけるまでの間。
百合子先生を かばいながら、私たちを守るために。
菓世くんは、たった ひとりで戦ったの。
そして倒されて、顔にアザが できてしまった。
私ね、菓世くんは、男の先生方より立派だと思ったわ。
彼こそが、正義の味方よ!
・・・
そんなわけで。
一生に一度しか経験できない、中学の修学旅行。
私たちクラスの女子は、乙女心に大きな傷を残すものになってしまった。
そんなわけで、旅行の最終日。
みんなが お土産を選んで買い物するだけの日ね。
Aスケたちは、学年主任の 脳筋先生の 監視下にいて、クラスの みんなとは別行動だったの。
でもね。
謎なんだよね。
ていうか、何か、怪しかった。
クラスと別行動だったから、遠目に見ただけ なんだけど。
Aスケたち、反省した様子が無いんだよ。
脳筋先生と、談笑していたんだよ。
おまけに、お土産を たくさん買い込んだらしく、荷物が かなり増えていたんだよ。
どういうことだろ?
やっぱり、怪しいよね。
だいたいね!
私たち女子の怒りは おさまらないよ!
あのさ。
スカートめくりとか。
お風呂場の覗きとか。
子どもの悪戯で すまされて いいのか?
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