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修学旅行、2時間遅れて出発です

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修学旅行。出発は2時間近くも遅れた。

Aスケたちだけでなく、よそのクラスにも、Aスケに言わせれば『カッコいい』身なりの子が いたからよ。
名前は……聞かなくても わかるわ。ショッカー軍団、いまだ健在なり。
バカよね、まったく。

こんな状況では、先生の指示通り、まじめに旅行の手引きを見てる子なんか、ほとんどいない。
席を離れて仲良しどうし、 ムダ話を していたところ……。

ババババ バン!  ズズーン!
けたたましい車のエンジン音。
やつらの親が到着したのよ。

来客用の駐車場は、教室の ほぼ真下。様子が まる見えなの。
車は2台。ショッカーの親たちは、ぎゅうぎゅう詰めになり、乗り合わせて来た。
自家用車を持つ家庭は、まだ少なかったからね。
ちなみに わが家も、自家用車は無い。

窓に へばり付きながら、誰かが叫んだ。
「おお。AスケとBスケの親父だぜ。
すげえなあ。カッコいいなあ!    
車もカッコいいじゃねえか!」

なるほどねぇ。
それぞれの車の、運転席から降りたのが、Aスケの父さんと、Bスケの父さんかあ。なるほどねえ。
さすが、ショッカー首領の親だわ……。
みごとなリーゼント頭で、テレビタレントが着るような、黒の革ジャン姿だった。

なんと言ってよいやら。
Aスケたちの家は、ムダに裕福みたい……。

ショッカーの親子たちは、一体、どのような指導が なされたのか?
その後、私たちは だいぶ待たされた。

・・・

Aスケたちが、普通のアタマ、普通の学生服姿になり、教室に戻った時は、出発予定時刻を大幅に過ぎていた。

みんなに迷惑かけたのに、Aスケは、ぶすーっと不満顔。
だから私、おもいっきり にらみつけてやったの。
そしたら、
「へへっ。悪いわりい 悪いわりい。待たせちまったなあ。
寂しかったろ、つぐみよう」
にやりと笑って、見返された。

ぞわーっ! 気色悪いっ! 

とにかく、とんでもない厄介事は、こうして落着したのです。
ようやく、昭和時代の、ド田舎の中学生の、修学旅行は出発です!
ようやく、未知なる世界へ、大冒険の始まりです!

引率の先生8名、生徒総勢200名。
並んで ぞろぞろ歩くだけの、ちっとも楽しくない行程だけどね。
東大寺とか、清水寺とか、金閣寺とか。
社会科のテキストでしか、見たことなかったホンモノを、一目でも、自分の目で、私は見ておきたかったのよ!

それと もうひとつ。
クラスの女子みんなと、夜のトランプ遊びは、一番の楽しみだったわ。

なんだけど……。
2日目の夜に、もっと、もっと、とんでもない事件が 起きるの。

あーっ。腹が立つ!
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