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修学旅行、最初の厄介事
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とうとう修学旅行の日が来た。
クラスの副委員長で、班長だった私……。
「楽しみだねえ」と はしゃぐクラスの中で、課せられた お役目の重さゆえ、私は気が重くて仕方なかった。
「行ってきまあす」
「楽しんでおいで。気をつけてね」
「お姉ちゃん、お土産よろしくねっ」
ニコニコ顔の両親と弟たちに見送られ、家を出たのは、朝の5時半。
夏に向かう地上は夜明け。
全国的に、良い天気に なりそうだった。
なのに、不安ばかりが 先に立ち、足どりは重かった。
荷物も、重かった。
「つぐみ、おっはよ~。
トランプ持ってきたよ。夜は、みんなで遊ぼうねえ」
途中から、気持ちルンルンの時任佐保里と合流した。
「ああ佐保里、おはよ」
普通に返事した つもりだったけど、佐保里は察しがよい。
「つぐみ、元気ないぞ。ひょっとして、昨夜は眠れなかった?」
はあ。それも あるけどさあ……。
すると、口に出す前に、やはり察しの良い佐保里は ニコニコしながら、
「先に心配するだけムダムダ。
楽しもう!
アタシが付いてるからさ!」
そだね。うん。佐保里、ありがとう。
「おはよ~」
「おはよ~」
「おっはよー」
学校が近くなるにつれ、人が増えてきた。
グラウンドに、クラスの数だけバスが待機してるのが 見えてきた。
昇降口で靴を履き替え、教室に入る……。
そこで私は、盛大に ため息をついた。
あああ。本日最初の厄介事だあ。
Aスケたちめ。やってくれたよ……。
・・・
「いぇ~い」
「ひょうひょう」
やつらは奇声を発しながら、椅子の上で踊っていたのだ。
わざわざ髪を黄色くして、べたべたするような 何かをつけて。
リーゼントっていうの?
前髪を かためて、三角にしていた。
少年マンガに出てくる。
お不良な人々が そんな髪型をしている。
そして、お不良さんの学ラン。
このド田舎の、どこで買ったんだ?
ていうか、こんな目立ちかたをして、恥ずかしくないのか?
小学校時代に、女子のスカートめくりをした罪で、学年集会を2回やった男たち。
主犯のAスケと、いまだに金魚のふんをしているBスケは、そろって同じクラスだった。
そして、Aスケが私の班で、Bスケが菓世くんの班だった。
この班編成は、担任の鈴木先生に頼みこまれて、しぶしぶ承知したんだよ。
服装で先生の注意を受ける子は、ほかにも いないわけじゃなかった。
それでもねえ……。
男子は、シャツのすそを ズボンから出していたり、学生服のボタンを はずしていたり。
女子は、色つきのリップを つけていたり、足首まである長いスカートを はいていたり。
男女ともに、上履きの かかとを踏んづけていたり。
そのくらいかな。
私たちの学年は、すでに卒業した先輩たちや、下の学年に比べて、『良い学年』だと言われていたの。
学年で一番のワルが、『Aスケ程度』だったから。らしいんだな。
ひどい暴力沙汰が なかったし、校内の壁とかを壊す生徒も いなかったから。
けどさあ、Aスケたちはスケベだったわ。
Aスケたちは、同じクラスで 同じ班、というだけでも気が滅入るのに。
これでは……無事に出発できるかさえ、あやしくなってきたよ。
とほほ……。
クラスの副委員長で、班長だった私……。
「楽しみだねえ」と はしゃぐクラスの中で、課せられた お役目の重さゆえ、私は気が重くて仕方なかった。
「行ってきまあす」
「楽しんでおいで。気をつけてね」
「お姉ちゃん、お土産よろしくねっ」
ニコニコ顔の両親と弟たちに見送られ、家を出たのは、朝の5時半。
夏に向かう地上は夜明け。
全国的に、良い天気に なりそうだった。
なのに、不安ばかりが 先に立ち、足どりは重かった。
荷物も、重かった。
「つぐみ、おっはよ~。
トランプ持ってきたよ。夜は、みんなで遊ぼうねえ」
途中から、気持ちルンルンの時任佐保里と合流した。
「ああ佐保里、おはよ」
普通に返事した つもりだったけど、佐保里は察しがよい。
「つぐみ、元気ないぞ。ひょっとして、昨夜は眠れなかった?」
はあ。それも あるけどさあ……。
すると、口に出す前に、やはり察しの良い佐保里は ニコニコしながら、
「先に心配するだけムダムダ。
楽しもう!
アタシが付いてるからさ!」
そだね。うん。佐保里、ありがとう。
「おはよ~」
「おはよ~」
「おっはよー」
学校が近くなるにつれ、人が増えてきた。
グラウンドに、クラスの数だけバスが待機してるのが 見えてきた。
昇降口で靴を履き替え、教室に入る……。
そこで私は、盛大に ため息をついた。
あああ。本日最初の厄介事だあ。
Aスケたちめ。やってくれたよ……。
・・・
「いぇ~い」
「ひょうひょう」
やつらは奇声を発しながら、椅子の上で踊っていたのだ。
わざわざ髪を黄色くして、べたべたするような 何かをつけて。
リーゼントっていうの?
前髪を かためて、三角にしていた。
少年マンガに出てくる。
お不良な人々が そんな髪型をしている。
そして、お不良さんの学ラン。
このド田舎の、どこで買ったんだ?
ていうか、こんな目立ちかたをして、恥ずかしくないのか?
小学校時代に、女子のスカートめくりをした罪で、学年集会を2回やった男たち。
主犯のAスケと、いまだに金魚のふんをしているBスケは、そろって同じクラスだった。
そして、Aスケが私の班で、Bスケが菓世くんの班だった。
この班編成は、担任の鈴木先生に頼みこまれて、しぶしぶ承知したんだよ。
服装で先生の注意を受ける子は、ほかにも いないわけじゃなかった。
それでもねえ……。
男子は、シャツのすそを ズボンから出していたり、学生服のボタンを はずしていたり。
女子は、色つきのリップを つけていたり、足首まである長いスカートを はいていたり。
男女ともに、上履きの かかとを踏んづけていたり。
そのくらいかな。
私たちの学年は、すでに卒業した先輩たちや、下の学年に比べて、『良い学年』だと言われていたの。
学年で一番のワルが、『Aスケ程度』だったから。らしいんだな。
ひどい暴力沙汰が なかったし、校内の壁とかを壊す生徒も いなかったから。
けどさあ、Aスケたちはスケベだったわ。
Aスケたちは、同じクラスで 同じ班、というだけでも気が滅入るのに。
これでは……無事に出発できるかさえ、あやしくなってきたよ。
とほほ……。
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